
近年、建設コストの上昇が問題となっています。
主に、建築資材価格の高騰と、建築技術者の人件費の上昇のためです。
建設コストの上昇は、戸建住宅、集合住宅、オフィスビル、
公共インフラなど、あらゆる種類の建物・施設について、
新築だけでなく、修繕工事、リフォーム工事、解体工事においても影響を与えます。
そのため、不動産投資を計画する上で、
今後、建設コストがどの程度上昇するかを想定しておく必要があります。
今回は建設コストの上昇についてとりあげます。
建設価格高騰の要因
建設資材価格が高騰している理由は、世界的な原材料不足、
エネルギー価格高騰、円安、コンテナ不足などによる物流の停滞、
半導体需給の逼迫、環境負荷を低減する投資コストの上乗せ、などがあります。
また、建設技術者の人件費が上昇している理由は、
少子化による若手入職者の減少、
2024年に建設業にも残業規制が適用されて労働時間が制限され、
以前より労働力が不足状態にあること、
人手不足の中で賃上げ競争が激しくなっていること、などがあります。
建設資材価格や建設技術者の人件費はどの程度上昇しているか
日本建設業連合会「建設工事を発注する民間事業者・施主の皆様に
対するお願い 建設資材高騰・労務費の上昇等の現状」では、
2021年1月から2026年2月までの5年間の建築資材価格の上昇率や、
建設技能労働者の人件費(労務単価)の上昇率が示されています。
<建設資材価格>
建築資材価格は、5年前と比較して、全体平均で38%上昇、
土木部門平均で42%、建築部門平均で37%上昇しています。
材料費割合が建設費全体の50%~60%を占めると仮定すると、
5年間の建設資材の高騰により、建設費は19~23%上昇したことになります。
代表的な品目の5年前からの上昇率は次の通りです。
・H形鋼 43%
・鋼板 中厚板 66%
・鋼矢板 42%
・生コンクリート 69%
・コンクリート型枠用合板 45%
・管柱杉KD(人工乾燥) 21%
・ステンレス鋼版 51%
・アルミ地金 109%
・板ガラス 83%
・スレートアスファルト 44%
・ビニル絶縁電線(600V) 141%
・配管用炭素鋼 鋼管 73%
・硬質ポリ塩化ビニル管 45%
なお、建設物価調査会「建設物価 建築費指数」によれば、
集合住宅(RC造)の工事原価は、2015年1月を100とすると
2026年1月は142.9と、10年間で4割以上上昇しています。
<建設技能労働者の人件費(労務単価)>
建設技能者の賃金相当として積算される公共工事設計労務単価は、
2021年3月は日給20,214円、2026年3月は日給25,834円と、
5年前と比較して27.8%上昇しています。
労務費が建設費全体の30%を占めると仮定すると、
5年間の労務費上昇の影響により、建設費は8.3%上昇したことになります。
(なお、2011年から2026年までは15年連続で上昇しています。)
代表的な職種の5年前からの上昇率は次の通りです。
・鉄筋工 22.5%
・溶接工 26.2%
・型枠工 26.9%
・鉄骨工 16.0%
・防水工 27.8%
・左官 22.6%
・塗装工 29.0%
・内装工 24.2%
・電工 34.5%
・ダクト工 35.0%
・配管工 31.4%
・運転手(特殊)28.5%
・普通作業員 25.6%
・とび工 21.2%
・交通誘導警備員 32.3%
相次ぐ再開発プロジェクトの見直し
建設コストの上昇を要因として、大規模な再開発プロジェクトが
見直しされる事例が全国的に相次いでおり、
地域経済にも大きなインパクトを与えています。
東海3県では次のような再開発の見直しが発表されました。
・名鉄名古屋駅地区再開発(名古屋市中村区)
2017年3月29日(当初計画発表)
地上30階、高さ約180m、南北約400mにわたる、
駅・百貨店・ホテル等を一体化する巨大ビルを建設する計画。
2027年のリニア開業に合わせた完成を目指していた。
2025年12月12日(見直しの発表)
計画の再検証と着工時期の「未定」を発表。
理由は、建設コストが当初想定から数千億円規模に増加したことと、
施工予定のゼネコンから人手不足を理由に入札辞退があったため。
名鉄百貨店本店は2026年2月末に営業終了するも、
その後の解体・新築工程はすべて白紙に近い状態に。
・金山駅周辺再開発(名古屋市中区・熱田区)
2025年2月26日(再整備方針の発表)
アスナル金山を2028年2月までに解体し、跡地に
オフィス・ホール・商業施設の複合ビルの建設を2032年度に
着工する方針を公表。
2026年2月10日(見直しの発表)
建設費高騰を受け、民間の事業参画意欲などを再精査するため、
アスナル金山の営業を当初の予定から8年延長し、
2036年3月末まで継続することを決定。
・JR岐阜駅北中央西・東地区再開発(岐阜市)
2022年2月28日(当初計画発表)
地上34階建て(高さ約130m)の超高層マンション2棟を建設。
2025年度着工、2028年度完成を目指す。
2025年2月14日(見直しの発表)
規模の縮小と延期を発表。資材費や人件費の高騰により、
西地区の棟を34階建てから20階建て程度へ低層化することを検討。
完成時期も2029〜2030年度へと遅れる見通し。
・近鉄四日市駅前「新図書館」整備計画(四日市市)
2021年〜2022年頃(当初計画の検討)
スターアイランド跡地の地上32階建てビル(近鉄主導)の
3〜8階に新図書館を設置する方針。
2024年5月24日(見直しの発表)
スターアイランド跡地への設置を断念。近鉄側から、建設費が
当初想定の約210億円から約390億円へと約2倍に膨らんだため、
事業の無期限延期の申し入れがあった。これを受け、
市は別の場所(市役所周辺など)で図書館を建てる方針へ転換。
全国の主な再開発の見直し事例
全国でも次のような再開発の見直しが発表されています。
・東京都:中野サンプラザ跡地(中野駅新北口駅前地区)
東京を代表する巨大プロジェクトの一つとされていたが、
2025年に入り事実上の白紙撤回に。
・福岡県:博多駅空中都市プロジェクト
JR博多駅の線路上空に巨大な複合ビルを建設し、
博多口と筑紫口を結ぶ野心的な計画が2025年に断念された。
・大阪府:大阪ガスビルディング(西側複合ビル開発)
歴史的建築物であるガスビルの保存と並行して、西側に新ビルを建てる
計画だったが、着工延期となり完成も遅れる見通し。
・北海道:札幌駅南口・北5西1・西2地区再開発
北海道新幹線の札幌延伸を見据えた超高層ビル計画が、
43階建てから35階建て前後へと縮小する方針が示された。
さて、今回は建設コストの上昇についてとりあげました。
建設コストは、収束の見通しが立たず、
当面は上昇傾向が継続すると予想されます。
不動産投資を計画するにあたっては、
将来的に建設資材価格や建設技術者の人件費がどの程度上昇するかを、
ある程度シミュレーションしておく必要があります。
【参考】
・ファッションプレス https://www.fashion-press.net/news/134168
・飛翔~リニア時代の新しい名古屋へ https://x.gd/cUyEY
・FNNプライムオンライン https://www.fnn.jp/articles/-/1001662
・建設通信新聞 https://www.kensetsunews.com/web-kan/1051361
・ココログ(超高層ビル・都市開発研究所) https://x.gd/jfHJg
・YOUよっかいち https://www.you-yokkaichi.com/2024/05/23/32531/
・森智広(四日市市長)公式ブログ
https://ameblo.jp/mori-tomohiro/entry-12853410919.html
・ITmedia ビジネスオンライン https://x.gd/fP4vK
・TNCテレビ西日本 https://x.gd/mV2Rl
・株式会社インデックスコンサルティング
https://index-group.co.jp/index-consulting/reports/detail/228
・日本経済新聞 https://x.gd/anHeQ
・リアルパートナーズ https://x.gd/nsbP4
・日本建設業連合会(日建連) https://x.gd/lmY1l