
今回は前回のメルマガに続き、
国土交通省が令和8年3月に発表した令和8年の地価公示について、
名古屋圏・東海三県の状況を解説します。
※以下( )は前年変動率を表します。
「%」は通常は上昇を表し、下落の場合のみ「%下落」と表記します。
名古屋圏は、商業地3.3%(3.8%)、住宅地1.9%(2.3%)と、
5年連続で上昇したものの、上昇幅が縮小しました。
愛知県の商業地
愛知県の商業地(名古屋圏内)は3.5%(4.0%)となりました 。
名古屋市は4.5%(5.0%)となり、全16区のうち4区で上昇幅が拡大。
特に中区は5.1%(4.7%)と上昇幅が拡大。
栄地区のオフィス空室率の低下や、交通利便性に優れた都心部の
マンション用地需要が堅調であることが要因です。
名古屋市以外では、大府市7.4%(9.1%)、知立市5.1%(6.2%)、
稲沢市4.9%(5.6%)、刈谷市4.6%(6.2%)、長久手市4.6%(4.5%)
などが高い上昇となりましたが、
地価や建築費の上昇に伴い、上昇幅は縮小傾向にあります。
<愛知県の商業地上昇率上位5地点>
1位 名古屋市中村区名駅南5丁目1111番外 13.8%
2位 名古屋市千種区内山2丁目701番外 12.9%
3位 名古屋市熱田区三本松町1704番 12.3%
4位 安城市北山崎町築地1番1外 12.1%
5位 大府市中央町2丁目95番1外 11.1%
1位の中村区名駅南5丁目は、名古屋駅徒歩圏という立地条件に加え、
周辺での分譲・賃貸マンション開発が活発です。
2位の名古屋市千種区内山2丁目は、名古屋市中心部の地価高騰が波及し、
今池駅周辺の利便性の良さが再評価されています。
3位の名古屋市熱田区三本松町は、金山駅南側エリアの再開発への
強い期待感が背景にあります。
4位の安城市北山崎町は、JR安城駅周辺の利便性に加え、
堅調な住宅実需が商業地のマンション需要につながっています。
5位の大府市中央町2丁目は、名古屋市内の地価上昇に伴い、
名古屋駅まで新快速で約15分で値頃感のある大府駅周辺に
子育て世代の流入が続き、駅近の商業地の需要が高まっています。
愛知県の住宅地
愛知県の住宅地(名古屋圏内)は2.0%(2.5%)となり、上昇幅が縮小。
名古屋市は3.1%(3.6%)と上昇を継続していますが、全16区のうち
上昇幅が拡大したのは3区、1区が同率、12区で上昇幅が縮小しました。
名古屋市で上昇幅の上位5区は次の通り。
熱田区6.3%(8.4%)、東区6.1%(4.2%)、中村区4.1%(5.2%)、
千種区3.9%(4.8%)、昭和区3.9%(3.6%)。
都心部の希少性が高いエリアでは依然として需要が旺盛です。
名古屋市以外で上昇幅が大きい市は、
長久手市5.3%(4.9%)、大府市3.8%(6.4%)、知立市3.3%(4.4%)、
豊明市3.1%(4.1%)でした。
<愛知県の住宅地上昇率上位5地点>
1位 名古屋市東区徳川町809番 14.7%
2位 名古屋市東区徳川1丁目13-7 14.0%
3位 名古屋市東区白壁3丁目18-24 12.9%
4位 名古屋市熱田区高蔵町611番 11.5%
5位 名古屋市千種区神田町2番16 9.4%
1位〜3位の名古屋市東区の地点はブランドのある高級住宅街であり、
高値の土地取引が相次いだことが、価格上昇の要因となりました。
4位の名古屋市熱田区の地点は金山駅や神宮前駅に近く、
落ち着いた住環境のため、強い需要が継続しています。
5位の名古屋市千種区の地点は、名古屋市中心部での供給不足を背景に、
周辺区の優良な住宅地として上昇につながりました。
岐阜県の商業地
岐阜県の商業地は0.6%(0.6%)と3年連続で上昇しました 。
岐阜市は0.3%(0.6%)。JR岐阜駅北口の再開発事業は
資材・人件費高騰により規模縮小や完成時期の遅れが発表されました。
高山市12.7%(14.5%)、安八町1.6%(1.3%)、八百津町1.5%(1.5%) 、
多治見市1.3%(1.3%)、大垣市1.2%(0.3%) などが上昇しました。
<岐阜県の商業地上昇率上位5地点>
1位 高山市上三之町51番 24.9%
2位 高山市花里町6丁目25番2外 13.2%
3位 大垣市高屋町1丁目34番1外 5.1%
4位 大垣市高屋町3丁目28番 4.8%
5位 大垣市林町5丁目18番11 3.5%
1位・2位の高山市の地点は、インバウンド需要がコロナ前を超え、
大手資本によるホテル開発計画が複数進んでいることが
地価を大きく押し上げました。
3位~5位の大垣市は、大垣駅周辺を中心とした市街地再開発計画が
進展しており、利便性や繁華性が向上することへの強い期待感があります。
また、JR新快速で名古屋まで約30分という交通アクセスの良さから、
マンション開発の需要が旺盛です。
岐阜県の住宅地
岐阜県は0.2%下落(0.3%下落)と、下落幅が縮小しました。
岐阜市は0.1%下落(0.1%下落)で横ばい傾向です。
北方町1.0%(0.6%)、岐南町0.8%(1.2%)、中津川市0.6%(0.6%)、
羽島市0.6%(0.3%)、富加町0.5%(0.1%)などが上昇しました。
<岐阜県の住宅地上昇率上位5地点>
1位 岐阜市西荘3丁目16番30 5.3%
2位 多治見市音羽町1丁目16番4 3.9%
3位 羽島市舟橋町宮北8丁目20番 3.0%
4位 羽島市福寿町本郷1丁目76番 2.4%
5位 多治見市宝町3丁目178番3 2.3%
1位の岐阜市西荘3丁目の地点は、
JR西岐阜駅の徒歩圏で生活利便性が高く、割安感があります。
2位と5位の多治見市の地点は、JR中央本線沿線の多治見駅から
名古屋駅まで約35分という立地から、愛知県内と比較して
割安感のある住宅地として人気があります。
3位と4位の羽島市の地点は、新幹線岐阜羽島駅および名鉄新羽島駅の
徒歩圏内であり、名古屋や岐阜市内への通勤・通学の利便性から需要があります。
三重県の商業地
三重県は1.4%(0.5%)で2期連続の上昇。
四日市市は1.7%(1.7%)で、近鉄四日市駅前での
交通ターミナル整備事業等の再開発への期待感や、
ホテル需要の堅調さにより地価上昇が継続しています。
桑名市1.0%(1.0%)は駅周辺でのマンション需要との競合があります。
そのほか、鈴鹿市0.9%(0.9%)、菰野町0.6%(0.6%)、
川越町0.6%(0.6%)などで上昇しました。
<三重県の商業地上昇率上位5地点>
1位 四日市市諏訪栄町13番2 2.7%
2位 桑名市大字桑名字太一丸656番 1.6%
3位 桑名市大字桑名字一色町668番 1.6%
4位 四日市市沖の島町3番16 1.3%
5位 津市東丸之内18番14 1.1%
1位と4位の四日市市の地点は、近鉄四日市駅周辺の
駅前再開発プロジェクトの期待感で上昇しました。
2位と3位の桑名市の地点は、桑名駅周辺の整備事業など
駅周辺のインフラ整備が進んだことで利便性が再評価されています。
5位の津市の地点は、津市の中心市街地ですが、
官民連携による中心市街地活性化の期待感があります。
三重県の住宅地
三重県の住宅地は0.7%(0.5%)と3期連続の上昇。
鈴鹿市1.3%(1.1%)、四日市市0.9%(1.0%)、朝日町0.9%(0.9%)、
津市0.8%(0.8%)、桑名市0.7%(0.8%)などで上昇しました。
<三重県の住宅地上昇率上位5地点>
1位 津市南が丘3丁目10番12 4.0%
2位 四日市市堀木2丁目331番 4.0%
3位 四日市市赤堀新町223番 3.9%
4位 桑名市大字矢田字大塚90番2外 3.5%
5位 桑名市大字東方字徳成1601番30 3.4%
1位の津市の地点は高台にある閑静な人気住宅地で、
供給が限定的なため強い上昇が継続しています。
2位と3位の四日市市の地点は中心市街地に近い利便性の高い
住宅地域であり、住環境も優れていることから、需要が堅調です。
4位と5位の桑名市の地点は、桑名駅に近い丘陵地の利便性に加え、
土地区画整理事業の進捗による住環境の向上が高く評価されています。
さて、前回と今回の2回にわたって、令和8年の地価公示について解説し、
今回は東海三県に注目しました。
東京圏や大阪圏は、商業地、住宅地とも前年を上回る上昇率となりました。
特に都心部のマンション需要やインバウンドによる
ホテル需要が極めて強く、地価上昇が加速しています。
対して、名古屋圏は商業地、住宅地とも上昇しているものの、
上昇率は鈍化しています。
名古屋圏は東京圏や大阪圏と比べると、インバウンド需要が強くなく、
富裕層による高額マンションの購入も限られているためです。
また、全国に共通する動向として、地価の急上昇や建築コスト高騰を受け、
不動産の投資や購入を控える動きが見られますが、
東京圏や大阪圏ほど需要が強くない分、その影響が色濃く反映しています。
名古屋圏の成長の起爆剤として期待された、
リニア中央新幹線は、開業時期が不透明となっており、
名古屋鉄道による名古屋駅ビルの再開発計画も停滞しています。
今後、これらの大規模事業の進捗が待たれます。
<出典>
・令和8年地価公示(国土交通省)
・愛知県 令和8年地価公示
https://www.pref.aichi.jp/soshiki/toshi/0000029550.html
・岐阜県 令和8年地価公示の結果
https://www.pref.gifu.lg.jp/page/487440.html
・三重県 令和8年地価公示
https://www.pref.mie.lg.jp/SHIGEN/HP/000223835_00007.htm