
今回は注目エリアとして、大須をとりあげます。
大須といえば、大須観音に連なる門前町として栄える、
さまざまな店が東西南北に軒を連ねるにぎやかな商店街。
実は、1960年代には衰退の危機を迎えていました。
大須商店街はどのように再生を果たしたのでしょうか。
1200もの店・施設が集まる「ごった煮」商店街
名古屋・栄の南側に位置し、北の若宮大通、
南の大須通、西の伏見通、東の南大津通の
四つの通りに囲まれた長方形のエリアが大須です。
西側には大須のシンボル大須観音があり、
その東に約500メートルのところには、
織田信長の父、織田信秀が1540年に開いた織田家の菩提寺、
萬松寺があります。元は現在の錦・丸の内付近にありましたが、
1610年に名古屋城築城に伴い大須に移設されました。
西側の伏見通には名古屋市営地下鉄鶴舞線の大須観音駅、
南東には名城線・鶴舞線の2つの路線が通る上前津駅があり、
2つの路線からのアクセスもよい立地です。
ありとあらゆる店や施設が1200も集結していることから
「ごった煮」商店街といわれています。
長年営業を続ける、「大須ういろ本店」や「山中羊羹舗」
呉服店「三井屋」、鰻店「やっこ」などの老舗も軒を連ねます。
また、大須通りの大須交差点から南には「仏壇通り」があり、
老舗の仏壇・仏具店が集まっています。
中古品・古着やリサイクルショップのお店も多く、
中古品売買の「コメ兵」の本店も大須にあります。
若者に人気の新しいカフェ、ファッションのお店、
サブカルチャーの雑貨店、コスプレ店やメイド喫茶もあります。
最近では、不思議の国のアリスの世界観を表す
アクセサリー・雑貨店「水曜日のアリス」が若い女性に人気です。
食べ歩きグルメが楽しめるのも大須の特徴です。
台湾の焼き小龍包の「包包亭(パオパオテイ)」、
みたらし団子「新雀本店」、老舗洋食屋「すゞ家 大須赤門店」、
カレー南蛮そばが有名なそば屋「丁字屋」、
ナポリピザの「SOLO PIZZA Napoletana」、
そのほか名古屋めしのお店、スイーツのお店なども多数あります。
また、「名古屋スポーツセンター(大須スケート場)」は、
伊藤みどり、安藤美姫、浅田真央など世界的なトップスケーター
を輩出したスケートリンクとして知られています。
大須観音はかつて他の場所にあった
実は大須観音は、もともとこの地にあったお寺ではありません。
徳川家康の命令により、岐阜県羽島市大須にあった真福寺が
水害から守るために1612年に今の地に移されました。
そこから、この地が「大須」と呼ばれるようになり、
大須観音の門前町として発展してきました。
その後も大須は芝居小屋、見世物小屋、遊郭などで栄えました。
大須商店街のにぎわいが続く秘密
戦後、若宮大通ができたことで、栄と大須が分断され、
また1957年頃から栄に地下街ができたことにより、
次第に大須への人通りは減り、商店街では閉店する店も増えました。
元気な大須を取り戻そうと、1975年に地元商店街や学生などが
一丸となってイベントを開催。
その成功をきっかけに、今も毎年10月に行われている
「大須大道町人祭」が始まりました。
その後、1977年に地下鉄鶴舞線が開通し「大須観音駅」ができ、
またラジオセンターアメ横ビル(第1アメ横ビル)が
できたことをきっかけに、
大須に来る若い人たちが増えるようになりました。
大須にはこうした若い人たち向けのお店が増えるのですが、
かつて、そこには障害がありました。
ある店舗が閉店した後、地権者がなかなか
他の人に店舗を貸そうとしなかったのです。
そこで、大須商店街の空き店舗対策に取り組む人たちが、
地権者と粘り強く交渉し、新しい出店希望者に
お店を貸すようにしていきました。
その結果、新しいお店が次々と出店するようになりました。
今では、空き店舗情報を公開して、新規出店を促しています。
大須商店街ではこのような努力によって、
新たな魅力が生まれ、賑わいが維持されてきたのです。
経営難から一度は閉鎖になった「大須演芸場」も
2015年9月に再スタートしました。
これからも、大須商店街の賑わいは続いていくことでしょう。
【出典】
・なごや大須商店街公式サイト http://osu.co.jp/
・朝日新聞「大須観音 かつてはここに」2017年9月30日付
http://www.asahi.com/area/aichi/articles/MTW20171002241580001.html
・中小企業庁「がんばる商店街77選」大須商店街連盟
http://www.chusho.meti.go.jp/shogyo/shogyo/shoutengai77sen/nigiwai/4chuubu/1_chuubu_19.html
この原稿は名城企画株式会社が発行する「名古屋・東海収益不動産NAVIメールマガジン」の
2018年2月5日発行分の転載です。