名古屋市東区と北区にまたがる場所にある大曽根は、
現在はＪＲ中央本線、名鉄瀬戸線、名古屋市営地下鉄名城線、
ゆとりーとラインの4路線が行き交う交通の便が良いエリアです。
今回は大曽根の歴史や魅力を紹介します。
交通の要衝として発展
大曽根の「曽根」は町の一歩手前の意味のようです（所説あり）。
江戸時代は名古屋城下から５つの街道に出入りする玄関口が
「名古屋五口」（大曽根口、志水口、駿河口、熱田口、枇杷島口）
であり、下街道（善光寺街道）の玄関口が大曽根口でした。
大曽根口の木戸は現在の赤塚交差点付近にありました。
街道に沿って通行人相手の商売も盛んだったようです。
明治になると、大曽根は多治見や瀬戸方面で作られた陶磁器を
輸出する際の中継点となり、
瀬戸と名古屋を結ぶ瀬戸自動鉄道（今の名鉄瀬戸線）が
明治39年（1906年）に大曽根駅まで開通し、
国鉄中央線の大曽根駅が明治44年（1911年）に開業しました。
戦後、震災復興を兼ねて、道路の整備や住環境の向上を目的として、
昭和38年（1963年）から大曽根土地区画整理事業が着手されました。
この整備事業は変更を重ね、平成16年（2004年）まで続けられました。
整備事業によって、線路の高架化や道路路線変更、道路拡幅、
建物の集約と高層利用、公園や街路などが整備されました。
この整備事業の間、地下鉄名城線大曽根駅の設置
（大曽根～市役所開通、その後、大曽根～砂田橋の開通、環状化、）、
名鉄瀬戸線の外濠線の廃止と栄への乗り入れ開始、
ゆとりーとライン大曽根駅の設置によって、
大曽根の交通の利便性はさらに向上しました。
高度成長期には大曽根駅の東西両側に商店が立ち並び、
大いに賑わっていた頃がありました。
昭和40年には大曽根駅から西に600メートルのアーケードが完成し、
名古屋の３大アーケードと称されていました。
現在では、消費者のライフスタイルの変化、
都心への商業機能の集積の影響、区画整理の影響もあり、
往時の賑わいはありません。
工業地帯としての発展と、大規模施設への転換
大曽根地域は交通の便がよく、矢田川の伏流水が豊富なことから、
明治時代から工業地帯として発展しました。
明治時代には先述のように、瀬戸や多治見方面で作られた陶磁器を
輸出する前に、大曽根で絵付けが盛んに行われていました。
大正時代になると、住宅近代化の需要の高まりや繊維輸出の好況を
うけ、硬質衛生陶器やタイル、紡績や製紙の工場が立地しました。
大正後半からは機械製造の工場が進出し、
大正13年（1924年）に現在も操業する三菱電機の工場が設立され、
昭和13年（1938年）に三菱重工の工場が設立されました。
（昭和19年・20年の名古屋空襲では三菱重工の工場が焼失）
戦後から高度成長期を経て、多くの工場は地方や海外に移転し、
あるいは閉鎖されていきました。
1990年代以降、工場跡地を利用して大規模施設が相次いで誕生
しました。三菱重工業の跡地にナゴヤドームが1997年3月に開業。
日本たばこ産業（JT）の跡地に
イオンモールナゴヤドーム前が2006年3月に開業。
その隣には名城大学ナゴヤドーム前キャンパスが2016年に設立。
また、大曽根駅東の三菱電機グラウンド跡地に
ショッピングセンター「メッツ大曽根」が2002年に開業しました。
交通の利便性が高く、現実的に住みたい街
リクルートSUUMOが発表した
「2015年版 名古屋市在住者が選ぶ住みたい街ランキング」によると、
大曽根は「住みたい街ランキング総合」では15位であるものの、
「今払える予算（家賃）内で住みたい街（駅）」の1位でした。
大曽根は名古屋駅にも栄にも電車で10分程度という利便性がある一方、
例えば地下鉄東山線沿線などと比べると家賃が割安です。
イオンなどの商業施設もあり、
住宅地としての落ち着いた雰囲気もあることが評価されているようです。
このように、大曽根は交通の要衝であるために、
時代が変わっても異なる用途で利用され続けてきた街だと言えます。
今後、大曽根はどのように変貌していくか、見守りたいです。
【出典】
・名古屋市公式ＨＰ 「市街地の開発整備 大幸南地区」
http://www.city.nagoya.jp/shisei/category/53-10-7-6-2-0-0-0-0-0.html
・「大曽根土地区画整理事業」（名古屋市）
・大曽根本通商店街公式ＨＰ 商店街について
http://www.ozone-ave.com/about
・なごや街角今昔【１０】大曽根…伸びていく街
https://goo.gl/6oi54R
・リクルートSUUMO
「2015年版 名古屋市在住者が選ぶ住みたい街ランキング」
https://suumo.jp/edit/sumi_machi/2015/nagoya/machi/#live
この原稿は名城企画株式会社が発行する「名古屋・東海収益不動産NAVIメールマガジン」の
2018年3月5日発行分の転載です。