
岐阜県飛騨地方に位置する高山市。
2005年に周辺9町村を編入合併して、面積2177平方キロメートルとなり、
東京都(2193平方キロメートル)とほぼ同じ大きさの、
日本で最も面積が広い市となりました。
また、長野県、富山県、石川県、福井県と4県と接する珍しい市です。
岐阜県人口動態統計調査結果(平成30年9月中)によれば、
高山市は人口およそ9万人ほどです。
名古屋からは「特急ワイドビューひだ」で2時間ほど、
高速バスは名古屋、京都、大阪、新宿などと高山を結んでいます。
全国的に地方の地価が下落し続ける中、高山市は山間地にありながらも、
近年、地価が上昇を続けている地点があります。
2018年7月1日の国土交通省などが発表した基準地価では、
観光需要の増加を受けて、古い町並みの近くにある地点の地価は
「高山市上三之町47」は前年比7.4%増加しており、
「高山市本町1の45」は前年比3.3%増加しています。
他の山間部には見られない傾向です。
その要因は、観光客の増加、特に外国人観光客の増加による
観光需要の高まりです。今回は高山市の観光需要について紹介します。
観光客が増加する高山
高山の中心地は、「古い町並み」として、
「国選定重要伝統的建造物群保存地区」に登録されています。
城下町、商人の町として発達してきました。
昔ながらの町家が立ち並び、通り沿いに用水が流れる街並みが人気です。
足を伸ばせば世界遺産の白川郷・五箇山、奥飛騨温泉郷、下呂温泉、
などが周囲にあり、これらと合わせて観光する人も多いです。
国内外の観光客は平成24年から平成29年への5年間で
宿泊客は196万人から221万人へと約13%増加、
日帰り客は180万人から241万人へと約34%増加しました。
この間、外国人の宿泊客は15万人から46万人へと約3倍に
増加しました。実に人口の5倍の数です。
国・地域別では、約10万9千人の台湾を筆頭に、
香港、中国、タイ、オーストラリア、スペイン、シンガポール、
アメリカ、イギリス、フランスと続きます。
30年以上にわたる外国人観光客誘致の取り組み
空港から遠く新幹線も通っていない山間部にも関わらず、
高山市には、なぜこれだけの外国人観光客が訪れるのでしょうか。
そこには、30年以上かけた地道な取り組みがありました。
高山市は今から30年以上前の1986年に国際観光都市宣言を発表。
以来、行政がPRに取り組み、官民が協力し、近隣自治体とも連携して、
次のように、外国人観光客の誘致に取り組んできました。
・高山市は、1982年に国際係を設置、2011年に海外戦略室を設置、
2016年にはブランド海外戦略部を設置。
これらの部署が外国人観光客誘致の旗振り役となってきました。
・アメリカ・デンバーの日本国総領事館やパリと香港の
日本政府観光局(JNTO)にそれぞれ市の職員を1名派遣し、
(過去には北京CLAIR事務所にも派遣していました)
高山市のプロモーションや市場調査を行っています。
また国内でも、観光庁、JNTO、JETRO、中部国際空港に
高山市の職員を派遣しています。
・2000年には飛騨高山国際誘客協議会(高山版DMO)を設立、
民間の事業者は1口10万円の会費によって運営され、
海外のプロモーション、外国人旅行者へのアンケート、
外国語マップやパンフレットの作成を行っています。
・パンフレットやマップ、ホームページは11言語分を作成しています。
(日本語、英語、中国繁体字、中国簡体字、韓国語、フランス語、
ドイツ語、スペイン語、イタリア語、タイ語、ヘブライ語)
パンフレットもその国の観光客に好まれる内容となるよう、
欧州の人には日本の古い町並みや里山の風景、
韓国人には山登り、タイ人には桜や雪景色などを盛り込んでいます。
・2015年に7日間無料で使える屋外フリーWi-Fiを整備しました。
利用者への観光情報の提供やアンケートにも活用されています。
・ムスリムの観光客向けには、ハラール対応店や
礼拝堂付きの観光施設を記載したマップを作成しました。
・JR高山駅前には、日本政府観光局(JNTO)認定の
飛騨高山観光案内所を設置しました。
・官民が協力して、本町三丁目商店街では全国初となる、
商店街単独での消費税免税カウンターを設置しました。
・近隣観光地や事業者と連携して、兼六園、白川郷、松本城などの
人気観光地と高山を周遊できるようなパックツアーを
外国人向けに作成し販売しています。
高山市の外国人観光客の増加は、このような30年以上にわたる
地道な取り組みの成果が実を結んでいると言えます。
このような取り組みが評価され、高山市は観光地として
ミシュラン・グリーンガイド・ジャポンで3つ星を取得しています。
堅調な不動産需要
高山市では観光需要の高まりを受けて、ホテルの開発計画も相次いでいます。
・呉竹荘はホテル呉竹荘高山駅前を2019 年3 月に開業予定。
・東急不動産は高山駅前東口にホテルを建設し、2020年2月に開業予定。
・京王電鉄は高山グリーンホテル内に新館を2020年春に開業予定。
・森トラストは外資系ラグジュアリーホテルを建設予定。
・ウッドフレンズは木造のホテルを建設する構想を発表。
高山市は30年以上にわたって、外国人観光客を誘致するために
官民を挙げた、また周辺地域と連携した取り組みを蓄積してきました。
そのため、人気の観光地としての地位は盤石で、
今後もホテル、民泊、店舗、駐車場などの堅調な不動産需要が
続くと予想されます。
【出典】
・岐阜県:岐阜県人口動態統計調査(平成30年10月1日現在)
https://www.pref.gifu.lg.jp/event-calendar/c_11111/jinko201810.html
・中日新聞 2018年9月19日 基準地価都道府県別上位10地点
・高山市観光統計 https://tinyurl.com/y8b25vke
・古い町並(国選定重要伝統的建造物群保存地区)|高山市観光情報
http://kankou.city.takayama.lg.jp/2000002/2000026/2000197.html
・東京から4時間、「美しすぎる」小さな集落に、なぜ欧米人殺到?
高山市の緻密な観光戦略 | ビジネスジャーナル
https://biz-journal.jp/2017/02/post_17896.html
・訪日ラボ 2018年8月23日
「なぜ飛騨高山に外国人観光客が殺到するのか?」
https://honichi.com/news/2018/08/23/takayamainbound/
・月刊事業構想2018年3月号
飛騨・高山に人口5倍の外国人が訪れる理由 インバウンドの軌跡
https://www.projectdesign.jp/201803/gifu/004629.php
・静岡新聞 ホテル呉竹荘 国内展開 19年3月、岐阜に1号店
2017年12月7日
・建通新聞 2018年6月6日「東急不動産が高山にホテル新築」
・京王電鉄 2018年10月30日
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000241.000022856.html
・森トラスト https://www.mori-trust.co.jp/project/newprojects_hotel.html
・日経メッセ ウッドフレンズ、高山に木造ホテル構想、名証2部に上場
2018年6月9日 https://messe.nikkei.co.jp/ac/news/138005.html
この原稿は名城企画株式会社が発行する「名古屋・東海収益不動産NAVIメールマガジン」の
2019年2月18日発行分の転載です。