
東海地方有数の商業地である栄では、2017年以降、
大規模な再開発事業が相次いで発表されています。
栄はどのように変わっていくのでしょうか。
東海地方一番の商業地の座を名駅に奪われた栄
栄は戦後の復興以降、長く東海地方一番の商業地でしたが、
近年の名駅地区の急激な発展により、その地位が名駅に奪われました。
国土交通省が毎年1月1日時点の地価を発表する地価公示で
名駅地区と栄地区の最高価格を比べると、
2007年までは栄地区(栄3-5-1、名古屋三越)の方が高かったですが、
2008年に名駅(名駅1-2-2、近鉄パッセ)が逆転し、
以降は名駅が東海地方の商業地で最も地価が高くなっています。
2019年の国土交通省の公示価格は、
栄3-5-1は1050万円/平米、名駅1-2-2は1230万円/平米です。
また、百貨店売上高でも、これまで栄が上回っていましたが、
2018年以降は名駅地区が栄地区を上回ることが確実です。
名駅では2017年4月に「タカシマヤゲートタワーモール」が開業し、
売場面積を増やしたのと対照的に、
栄地区では2018年6月末に丸栄が閉店したためです。
ようやく動き出した栄の再開発
名駅地区が急激に発展した要因は、
大企業が名駅周辺に自社用地を所有しており、
そこに高層ビルを建てることができたという要因があります。
一方、歴史がある栄地区には地権者が複数いるため、
開発計画が提案されても地権者全員の合意を得ることが難しく、
それが再開発が進まない原因の1つでした。
その栄地区でもようやく2017年頃から、
大規模な再開発事業が立て続けに発表されました。
現在、栄地区で計画されている主な再開発計画は次の通りです。
■中日ビル建て替え(中区栄4丁目)
中日新聞社が2024年度の完成を目指して、
高さ約170m、地上31階・地下4階、
延べ床面積約113,000平方メートルのビルを建設する計画。
B1階から3階までは商業施設、4階から22階はオフィス、
6階に多目的ホール、23階から31階は
ロイヤルパークホテルズアンドリゾーツの250室のホテルとなる予定。

中日ビル
■旧住友商事名古屋ビル跡地(東区東桜1丁目・中区錦3丁目)
NTT都市開発が計画。2019年秋から2022年初頭までの予定。
20階のビルを建て、隣接のビルと一体開発し、
新たに高さ96メートル、延べ3万900平方メートル、
敷地面積が約1900平方メートルのビルを建設予定。
地上1階と地下に店舗が入居し、2階以上はオフィスの予定。
■久屋大通公園の再整備
久屋大通公園の錦通りから北側部分については、
三井不動産などがPark-PFI制度による
整備・管理および収益施設の運営を担う事業者に選定され、
2019年1月から工事が着手されています。

外堀通りから桜通りまでの「北エリア」は
近所住民や働く人が気軽に立ち寄り休憩できる「都会の安らぎ空間」
をテーマにして2020年4月に完成予定。
桜通りから錦通りまでの「テレビ塔エリア」は
観光客や市民が交流できる「観光・交流空間」をテーマにして
2020年7月に完成予定。
テレビ塔はVRなどの最新技術をふんだんに盛り込んだ
「未来のタワー」をコンセプトし、4階と5階部分には
超高級ホテルを誘致する計画。
将来的には錦通りの南エリアも再整備する予定。
こちらは「にぎわいの空間」をテーマに、これまで以上に
来場者が集い楽しむことができるエリアにするとされています。
■栄広場周辺開発(中区錦3丁目)
栄の中心にある「栄広場」は約1800平方メートルの市有地です。
これと大丸松坂屋が持つ約3000平方メートルの土地を合わせて
高層ビルを建設し、再開発をする計画。
2019年度に事業者が公募され、2024年の開業を目指します。
■丸栄跡地(中区栄3丁目・錦3丁目)
丸栄の所有会社である興和が、北側の栄町ビルとニューサカエビルを
含めて一体で商業施設を建設し、2027年の開業を目標とする計画。
■長者町複合ビル(中区錦2丁目)
野村不動産などの再開発組合が2018年度末から2021年にかけて建設。
高さ111メートルのマンション、低層棟に商業施設が入居予定。
栄の魅力とは?
栄の魅力とは、全国で2番目の規模の地下街があり、
地上と地下の様々な店舗や施設を回遊して楽しめること、
憩いの場や交流スペースにもなる久屋大通り公園があり、
シンボルとなるテレビ塔やオアシス21があること、
ではないでしょうか。

上記の再開発計画により、このような栄の魅力が
さらに高められることが期待されます。
かねてより、名古屋市は日本の大都市の中でも
魅力がない都市だと言われ続けてきました。
一連の再開発によって栄の魅力が高まることは、
名駅、伏見、大須、名古屋城などへの波及効果が期待でき、
名古屋全体の魅力を高めることに繋がるのではないでしょうか。
【参考】
・2018/10/28 毎日新聞 中部版
「追跡2018:リニア開通や老朽化、動き出す再開発
「地域一」栄の意地」
・新公民連携最前線PPPまちづくりWebサイト 2018年2月15日
https://project.nikkeibp.co.jp/atclppp/PPP/news/021500625/
・日本経済新聞 2019年1月23日
「大丸松坂屋と名古屋市、栄・錦再開発で基本合意」
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO40368190T20C19A1L91000/
・日本経済新聞 2019年2月16日 「『ロイヤルパーク誘致』
「中日ビル」立て替え 250室ホテル
・2027年には名古屋の栄(さかえ)が生まれ変わる?
「栄地区グランドビジョン」とは!
https://www.homes.co.jp/cont/press/buy/buy_00281/
この原稿は名城企画株式会社が発行する「名古屋・東海収益不動産NAVIメールマガジン」の
2019年5月7日発行分の転載です。