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「不動産売買の「なりすまし詐欺」にご用心」

 2017年8月に、積水ハウスが土地の購入をめぐって、
 55億円を超える詐欺の被害に遭ったことが明らかになりました。

 大手ハウスメーカーでさえも、遭ってしまう不動産詐欺被害。
 詐欺グループが仕掛ける手口とはどのようなものでしょうか。
 また、詐欺に遭わないためにはどうしたらよいのでしょうか。

 

大手ハウスメーカーでさえも騙される? 

 積水ハウスは、2017年4月に東京都品川区の
 JR山手線五反田駅から徒歩3分という好立地の
 土地約2千平方メートルを分譲マンション用地として
 70億円で購入する契約を結びました。

 積水ハウスが契約している不動産業者が土地所有者から
 購入し、直ちに積水ハウスに転売する形の取引
 (第三者のためにする契約)でした。
 積水ハウスは2017年6月に63億円を不動産業者に支払い、
 所有者から不動産業者を経て積水ハウスに
 所有権を移転する一連の登記申請を行いました。

 ところが、法務局からその登記申請が却下されてしまいました。
 所有者側が提出した書類に偽造が見つかったためです。
 つまり、所有者は偽物だったのです。

 印鑑証明書の用紙は本物だったようですが、
 インクが消された後、再度所有者の名前で印影、住所等が
 印刷されたのではないかと言われています。

 偽の所有者とは連絡がとれなくなり、
 積水ハウスは警察に被害届を提出しましたが、
 代金の回収は困難だと認め、特別損失を計上しています。

 

詐欺グループの手口

 なぜ、このような事件が起こったのでしょうか。
 所有者側の提出書類が偽造されていたことから、
 所有者に成り済まして他人の土地を無断で売買して
 代金をだまし取る詐欺グループ、いわゆる「地面師」に
 騙された可能性が高いと考えられています。

 積水ハウス側は所有者の本人確認をしたにも関わらず、
 なぜ騙されてしまったのでしょうか。
 実は、印鑑登録証明書とパスポートが偽造されていたのです。
 目の前にいる所有者に成り済ました人物の顔写真が
 所有者名義のパスポートに載っていたなら、無理もありません。

 東京オリンピックで地価が上昇する都心部や人気住宅地を中心に、
 このような詐欺グループによる不動産取引詐欺は多発しています。
 その要因の1つが、印刷技術の発達です。
 登記申請書類や本人確認書類を本物そっくりに偽造できるように
 なり、3Dプリンターを使えば実印すら偽造することもできます。
 それらを見破るのはプロでも難しい状況になっています。

 さらに、もしかしたら、成り済まし犯本人だけではなく、
 仲介業者や弁護士や司法書士までもが詐欺グループに
 協力しているケースもあるかもしれません。
 そうなると、もはやお手上げと言わざるをえません。

 

詐欺グループに狙われやすい物件

 詐欺グループに狙われやすいのは、次のような物件だと考えられます
 このような条件が揃う不動産の取引には注意が必要です。

 1)誰もが欲しくなるような高い収益性が見込める物件
   詐欺グループが大きな金額を騙し取ることができるためです。

 2)建物のない更地か、建物に所有者が住んでいない物件
   買い主と本物の所有者が会ってしまうと
   所有者の成りすましが見抜かれてしまうためです。

 3)金融機関が関与する抵当権が付いていない不動産
   抵当権が付いていると取引に関与する人物が増え
   詐欺グループのリスクが増え、手取額も減るためです。

 4)放置されている空き家
   放置状態の空き家は高齢者が所有していることが多く、
   勝手に名義を変えて転売しても本人が気付きにくいためです。

 

不動産詐欺に遭わないためには

 過去の詐欺グループの手口も踏まえると、
 次の対策をすれば被害を避けられたかもしれないケースもあります。
 特に金額が大きい取引では、慎重に確認するに越したことはありません。

 ・所有者本人と面会して実際に本人確認する
  所有者本人との面会などの希望を、相手方が様々な理由をつけて
  断ったり先延ばしにするなら要注意です。

 ・物件の前所有者に確認する
  登記簿から前所有者を確認し、可能であれば前所有者に、
  現在の所有者が所有権を取得した時の様子等(相続、売買、贈与等)
  を聞き取りによって確認します。

 ・本人確認書類について本人を知る人に確認して裏をとる
  その土地の住人なら近所の人に聞けば分かることもあります。
  なお、今回のケースでも、別の不動産業者が事前に近所の人に
  顔写真を見せ、別人と判明して契約を中止していたようです。

 ・取引を仲介する企業や関係する企業、人物が実在するかを確認する
  詐欺事件ではペーパーカンパニーがよく使われます。
  本店が別にある場合、本店の実在を現地で確認することも重要です。

 ・取引の間に入る仲介会社や司法書士・弁護士などを確認する
  これらの人をパスポートや免許証で本人確認するほか、
  会社員の場合は社会保険証、社員証などを確認する。
  できることなら、相手方の指定する人ではなく、
  自分が信頼できる人に依頼する方が安心です。

 ・「なんとなく契約を急がされる」、「不自然なところがある」
  といった違和感がある場合は、手続きを進めずに慎重に確認する

 なお、司法書士や宅建業者が加入する業務賠償保険について、
 任意で高額補償がされる保険に入っておくことで、
 一定の金銭リスクを軽減することができます。

 誰もが欲しがる土地の取引は、詐欺の可能性があることを踏まえ、
 念には念を入れて、慎重に判断をしていただければと思います。

 

 【出典】

 ・積水ハウス「分譲マンション用地の購入に関する取引事故につきまして」
  平成29年8月2日付プレスリリース http://goo.gl/KJfCCN
 ・サンデー毎日「積水ハウスが「地面師」被害に? 
  不動産「なりすまし詐欺」拡大中」9月10日号
  https://mainichi.jp/sunday/articles/20170828/org/00m/070/002000d
 ・日本経済新聞「積水ハウス、「地面師」を告訴 
  詐欺容疑で55億円被害か」2017/9/15付電子版
  https://www.nikkei.com/article/DGXLASDG15H8P_V10C17A9CC1000
 ・東洋経済オンライン「積水ハウスまで騙された「地面師」暗躍の実態」
  2017年08月09日付
 ・現代ビジネス「積水ハウスから63億円をだまし取った
  「地面師」の恐るべき手口」 2017年8月3日付
  http://gendai.ismedia.jp/articles/-/52480
 ・産経新聞「暗躍する地面師、狙われる放置空き家 
  転売しても気付かず」2017年2月7日付
  http://www.sankei.com/affairs/news/170207/afr1702070004-n1.html

 

この原稿は名城企画株式会社が発行する「名古屋・東海収益不動産NAVIメールマガジン」の
2018年1月22日発行分の転載です。