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スルガ銀行問題が不動産投資に与える影響

 一時は地銀の優等生とされたスルガ銀行。しかしながら、
 昨年、組織的な不正や過剰融資が明るみになり、信用が失墜しました。
 それだけでなく、不動産市場に少なからぬ影響を与えました。

 今回は、スルガ銀行問題の経緯を振り返り、不動産市場に与えた影響と、
 今後の不動産投資に求められるスタンスについて解説します。

 

スルガ銀行問題の経緯

 スルガ銀行の不正問題は、2018年のスマートデイズの破綻によって
 明るみになりました。同社は首都圏で女性専用シェアハウス
 「かぼちゃの馬車」を運営し、サラリーマンを対象に
 サブリース契約によるシェアハウス投資を盛んに勧誘していました。

 ところが、2018年1月からオーナーへの賃料の支払いができなくなり、
 2018年4月18日に破産手続きに移行しました。
 その過程で表面化したのがスルガ銀行の組織的な不正と過剰な融資でした。

 背景として、日銀による大規模金融緩和・超低金利政策の中で、
 地銀にとっては比較的金利が高い投資用アパート・マンション融資が
 重要な収益源となっていたということがあります。

 スルガ銀行は、他の金融機関が融資しないような物件のオーナーへも
 スピーディーで積極的な融資を行うことで高収益を上げ、
 一時は地銀の優等生とみなされるほどでした。

 しかし、実態は、組織的に融資書類の改ざんがまかり通り、
 審査が形骸化し、物件の収益性・返済可能性を考慮せずに、
 周辺相場よりも割高な物件価格であっても、
 資金や担保が不十分なサラリーマンにも過剰な融資を行っていたのです。

 金融庁はスルガ銀行に2018年4月上旬に立ち入り検査を開始、
 第三者委員会を設置し、同9月7日に第三者委員会の調査報告書を公表、
 同10月5日に同行に対し行政処分を行いました。
 投資用不動産関連融資の6か月間の新規業務停止と、
 2018年11月末までの経営責任の明確化とともに具体的な改善計画の提出、
 創業家系への不透明な融資の是正を求める業務改善命令を下しました。

 

金融機関の過剰な融資はどの程度行われていたか

 不動産業界や金融業界関係者が今懸念していることは、
 スルガ銀行以外に、事業者や金融機関の不正による過剰な融資が
 どの程度行われていたのか、ということです。

 2018年5月には、アパートの企画・施工管理を手掛けるTATERUによる
 西京銀行への書類改ざんがあったことが報道されました。

 2018年11月に金融庁は西武信用金庫への立ち入り検査を行いました。
 業者が書類を改ざんしていたことが分かったためです。
 
 金融庁は他の金融機関でも業者や金融機関による不正が行われていないか、
 全国の銀行に対して調査に着手しています。
 今後の金融庁の審査、それによって明らかになる不正の広がりによっては、
 不動産市場にもさらに大きな影響があるかもしれません。

 

金融機関の投資用アパート・マンション融資の引き締めの動き

 金融機関はスマートデイズが破綻する前の2016年~2017年頃から、
 サブリース物件の空室が目立つようになったことなどから、
 投資用アパート・マンションへの融資審査を厳格化しつつありました。
 2018年にスマートデイズ破綻やスルガ銀行問題が発生したことから、
 さらに融資を抑制する動きが顕著になりました。

 日銀によると、銀行全体の投資用不動産向け新規融資は
 2016年7月~9月の1兆889億円をピークに、
 7四半期連続で前年同期比の実績を下回っています。直近では、
 2018年4月~6月期で5603億円と前年同期比22%減少、
 2018年7月~9月期で7344億円と前年同期比14%減少しています。

 日本経済新聞が2018年10月に地銀100行から回答を得た調査結果によると、
 アパート・マンションなど投資用不動産向け融資について、
 融資姿勢は66%が「案件次第」、34%が「慎重に進める」としており、
 「積極的に伸ばす」は0%でした。
 
 独立行政法人住宅金融支援機構(旧住宅金融公庫)も
 サブリース契約の賃貸物件の空室が増加していることを受け、
 2018年度から賃貸住宅向けの融資基準を厳しくしました。

 東海地方の大手信金もサブリース契約の返済延滞への懸念から、 
 2018年11月からサブリース契約の新規取り扱いを中止しました。
 関東地方の信金では、最寄駅から近い物件にしか融資を認めないようにして
 新規の融資が事実上ストップしているようです。

 このような金融機関の融資引き締めの姿勢を受けて、
 投資計画を変更せざるをえない投資家も少なくないようです。

 

これからの不動産投資家・オーナーに求められる対策

 金融機関による融資引き締めの程度や期間は見通せませんが、
 今後、不動産投資家・オーナーはどのような対策をとればよいでしょうか。
 
 融資を絞り込んでいる金融機関から融資を引き出すためには、
 投資家・オーナーは、従来より頭金や自己資金を多くしたり、
 相応の担保を設定するなど、金融機関のリスクをヘッジする対応が
 求められるのではないでしょうか。

 また、物件の収益の試算は、より保守的に行うことが求められます。
 今後は、大規模金融緩和の収束による金利上昇も
 視野に入れる必要があるかもしれません。
 保守的な試算をしても返済可能性が高いと説明できれば、
 金融機関から融資を受けられる余地があるのではないでしょうか。

 アパート・マンションへの投資には、
 以前にも増して信頼できる管理会社を見つけることが求められます。
 入居者募集業務を管理会社に依頼する場合は、仲介部署を持ち、
 客付けにもしっかり取り組む管理会社を見つけることで、
 空室発生のリスクも抑えることができると考えられます。

 また、物件や土地利用の選択肢を広げて検討することも必要です。
 金融機関が主に融資引き締めをする対象のアパート・マンションだけでなく、
 戸建て、ビル、駐車場、コインパーキングなども選択肢に入れて、
 手持ち資金や土地、融資可能性、収益性の面から
 最適な不動産活用の選択肢を選ぶことが求められます。

 なお、弊社は不動産の管理も行っており、仲介部署もあります。
 また、弊社はアパート・マンションだけでなく、
 戸建て、ビル、駐車場、コインパーキングと、様々な物件を扱っています。
 弊社にご相談いただければ、幅広い選択肢の中から、
 現状に適した不動産投資・土地活用の方法をご提案できるかもしれません。

 

 【出典】

 ・日本経済新聞 2018年10月6日「スルガ銀再建 険しい道」
 ・日本経済新聞 2018年10月7日「不動産投資細る融資」
 ・日本経済新聞 2018年9月26日「不動産投資への過剰融資を抑制」
 ・日本経済新聞 2018年11月16日「地銀、アパート融資減速」
 ・朝日新聞デジタル 2018年7月26日
  「賃貸住宅融資、支援機構が厳格化 サブリース巡り懸念」
  https://www.asahi.com/articles/ASL7S46LTL7SULFA010.html
 ・ニッキン 2018年9月7日 「信金、貸家融資から撤退相次ぐ」
 ・Business Journal 「第2のスルガ銀行問題か…西京銀行の不祥事体質、
 ・朝日新聞 2018年10月31日
  「西武信金に立ち入りへ 融資、業者が書類改ざん 金融庁」
 ・ビジネスジャーナル 2018年9月7日「TATERUの顧客向け融資独占」
  https://biz-journal.jp/2018/09/post_24683.html

 

この原稿は名城企画株式会社が発行する「名古屋・東海収益不動産NAVIメールマガジン」の
2019年1月30日発行分の転載です。