
今年もあと3週間余りとなりました。
今年も災害が多い年でした。
特に10月12日に静岡県に強い勢力で上陸した台風19号は
東日本の広範囲にわたって豪雨をもたらし、
死者99名、行方不明者3名、
住家の全壊2,849棟、半壊19,417棟、一部破損20,642棟、
床上浸水18,230棟、床下浸水28,710棟
という甚大な被害を与えました。(2019年11月28日時点)
浸水被害に遭ったマンションも多数ありました。
マンションオーナーとしては、
自然災害に備える保険に加入しておく必要があります。
そこで今回は自然災害に備える保険について解説します。
マンションオーナーが火災保険でカバーする範囲
マンション(アパート)一棟を所有するオーナーの場合は、
共用部から専用部まで建物全てに火災保険をかけます。
マンションを区分所有するオーナーの場合は、
所有する専用部に火災保険をかけます。
共用部はマンションの管理組合が火災保険をかけます。
それぞれ、専用部の家財を補償するためには、
入居者に家財保険に入ってもらう必要があります。
火災保険の火災に対する補償
日本の法律では、「失火責任法」(失火ノ責任ニ関スル法律)に
よって、火災の原因を起こした者は、「重大な過失」がなければ、
損害賠償責任を負わないことになっています。
これは、入居者が火元となった場合も、
近隣住宅の火災が飛び火して火災になった場合も同様です。
また、もし何者かに放火された場合には、
加害者が特定できなければ、損害賠償が受けられません。
このような火災に備えるためにも、
マンションオーナーは保有物件について
火災保険に加入する必要があります。
なお、地震が原因で起こった火災は、火災保険ではカバーされません。
後述の地震保険に入ることでカバーされます。
火災保険でカバーしておきたい火災以外の災害
マンションオーナーが加入する火災保険には、
「落雷・破裂・爆発」「風災・ひょう災・雪災」「水災」
の補償内容を含めることが望ましいです。
(補償内容や諸条件は保険商品により異なるため、個別に確認が必要です)
「落雷・破裂・爆発」は、落雷による建物の損壊や火災や、
ガス爆発などによる建物の損壊や火災による被害を補償します。
「風災・ひょう災・雪災補償」は、台風、突風、竜巻、暴風、
ひょう、雪や雪崩による被害を補償します。
「水災補償」は台風、暴風雨、豪雨等による洪水・融雪洪水・高潮・
土砂崩れ・落石などによる被害を補償します。
なお、地震による津波は水災補償ではカバーされず、
後述の地震保険に加入する必要があります。
なお、自然災害ではありませんが、「水漏れ」や「盗難」も、
火災保険の補償内容に含めることが望ましいです。
(補償内容や諸条件は保険商品により異なるため、個別に確認が必要です)
火災保険とセットで加入できる「地震保険」
地震・噴火またはこれらによる津波を原因とする被害は、
火災保険の補償の対象外となり、「地震保険」への加入が必要です。
「地震保険」は「火災保険」とセットでなければ加入できません。
既にある火災保険に地震保険を追加することはできます。
「地震保険」は地震、噴火やこれらによる津波や液状化現象を
原因として建物が被った損害を補償します。
地震保険は火災保険で設定した保険金額の
30%~50%の範囲内で保険金額を設定できます。
建物の被害によって、「全損」「半損」「一部損」の3段階に判定され、
「全損」は保険金額の100%、「半損」は保険金額の50%、
「一部損」は保険金額の5%を上限に補償されます。
マンションオーナー向けの火災保険の特約
マンションオーナー向けの火災保険には、次の特約もあります。
(保険会社によって特約の名称が異なる場合があります。
補償内容や諸条件は保険商品・特約により異なるため、
個別に確認が必要です。)
・建物管理賠償責任特約(施設賠償責任特約)
例えば外壁がはがれ落ちて通行人にケガをさせてしまったり、
階段が崩れて入居者に大ケガをさせた場合のように、
建物の安全性の維持・管理の不備などが原因で、
人にケガをさせたり、物を損壊したりする場合の損害を補償します。
・家賃補償特約
火災などが発生したことで、復旧までの間に家賃収入が減少した場合、
契約時に定めた月額家賃を復旧期間までを限度に補償します。
・家主費用特約
賃貸住宅内で死亡事故が発生し、賃貸住宅が空室となった結果、
発生した空室期間または空室期間の短縮のため家賃を値引きした
ことによる値引き期間の家賃損失を補償します。
また、「修復・清掃・脱臭費用等」の原状回復のための費用や
遺品整理にかかった費用を実費補償します。
火災保険の内容を確認してみては
昨今は自然災害が多発しており、損害保険会社は
保険料の値上げを余儀なくされています。
大手4社の火災保険は
2019年10月に平均で5~9%の値上げをしたばかりですが、
2021年1月にも5%を目安に値上げする調整が図られています。
今後も地球温暖化などの影響により、
自然災害リスクは下がることはないと想定されるため、
早めに必要な保険に加入することが賢明ではないでしょうか。
地域や物件によって災害リスクが異なるため、
設定する保険金額や補償範囲については個別に検討が必要です。
免責金額を設定することで保険料を抑えることもできます。
すでに火災保険に加入しているオーナーの方も、
火災保険の補償内容や特約について、
改めて確認してみてはいかがでしょうか。
なお、本稿でご紹介した内容について、
補償内容や諸条件は保険商品・特約により異なるため、
個別にご確認いただきますようお願いします。
【出典】
・大家の味方(不動産・賃貸経営コンサルタント 柴沼郁夫)
https://www.ooya-mikata.com/fire_insurance/
・i保険 火災保険比較サイト
https://www.kasai-hoken.info/property/owner.html
・Nikkei Styleマネー研究所 2019/10/25
水災補償ありは加入者の7割 火災保険の契約を再点検
ファイナンシャルプランナー 風呂内亜矢
https://style.nikkei.com/article/DGXMZO51287660T21C19A0000000/
・日本経済新聞電子版 2019/10/5
火災保険料、21年1月にも引き上げへ 大規模災害受け
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO50656860V01C19A0EA3000/
この原稿は名城企画株式会社が発行する「名古屋・東海収益不動産NAVIメールマガジン」の
2019年12月9日発行分の転載です。