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マンションの防火設備

 2017年6月14日にロンドンのグレンフェルタワーという
 24階建てのマンションで火災が発生、建物全体に延焼し、
 死者・行方不明者が約80人発生したというニュースは
 記憶に新しいところです。

 日本でもタワーマンションが増えているため、
 不安を覚えた方も多いのではないでしょうか。

 この火災は4階の冷蔵庫の漏電が出火原因だと言われていますが、
 建物全体にまで延焼したのは次の複合的な原因が指摘されています。
 ・可燃性の断熱材・外壁材が使われていた
 ・外断熱により躯体の外側に生まれた通気層が延焼経路となった
 ・スプリンクラーが設置されていなかった
 ・階段とエレベーターが建物中央に1か所しかなく、
 これが延焼経路ともなり、避難経路としても機能しなかった

 戸建て住宅に比べてマンションは火災に強いといわれていますが、
 万が一、火災が発生したときに、このような被害拡大を防ぐために、
 各種の消防設備の設置が定められています。
 そこで、マンションの防火対策についてお伝えします。

 

マンション火災の現状

 消防庁の発表では、住宅火災の出火件数は
 2006年には1万6683件だったのが、
 2016年には1万523件と、年々、減少しています。

 これは、2006年以降、新築・既築住宅ともに
 住宅用火災警報器の設置が義務化されたことが
 主な要因と考えられています。

 住宅火災で最も多いのは一軒家で、7割ほどを占めます。
 マンションは残りの3割ほどですが、
 2016年では3300件あまり発生しており、対策は必須です。

 マンションは木造家屋に比べて、
 火災が拡大するのが遅いというのが大きな特徴です。

 マンションの構造躯体であるコンクリートは耐火性が高く、
 厚さ12センチ以上あれば火災発生から約60分間は
 火を遮ることができると考えられています。

 また、マンションの玄関ドアは、
 一定以上の厚みのある鉄板などで造られた
 耐火性のあるドアが使用されるのが一般的です。
 こちらも、火を遮る時間は約60分間です。

 従って、マンションで火災が拡大してしまう大きな原因は、
 火の通り道となる開口部がある、つまり、窓が開いていた、
 あるいは、火を遮るはずの玄関が開けっ放しだった
 などといったことによるものです。

 住民には、火災が発生した際に、火や煙が迫ってなければ、
 窓や玄関を閉めて避難してもらうことを
 周知しておくことが大切です。

 

面積、建物の高さなどによって消防設備の設置義務あり

 マンションに設置しなければならない消防設備は
 消防法をはじめとする各法令によって定められています。

 現在ではさまざまな構造や形態の建物が増え、
 消防法一つでは、対応しきれないため、
 特例基準を設けて、延床面積や建物の階数などによって、
 設置すべき設備が細かく定められています。

 例えば、延床面積が500平方以上で11階以上あるマンションは、
 11階以上の部屋や共用部分にスプリンクラーを
 設置しなければなりません。

 しかし、10階より下の階にはスプリンクラーは必要なく、
 火災発生時に火災を感知して警報などで知らせる
 自動火災報知設備を各住戸につけること、
 また、共用部分には、自動火災報知設備の作動に連動するものか、
 あるいは人が操作することで火災の発生を知らせる、
 非常警報設備の設置などが求められています。

 内装に使われている素材が難燃性のものかどうか、
 二方向に避難経路があるかどうかなどによっても異なりますので、
 マンションの形態や素材をきちんと把握した上で
 確認する必要があります。

 

避難用階段の重要性

 火災が発生したときの避難方法は、
 共用階段か、ベランダの避難はしごを使うことです。

 避難の第一選択肢は共用階段になりますが、
 共用階段と住戸との位置関係により避難のしやすさが違います。

 玄関を出たら左右どちらにも共用階段がある場合は、
 どちらか一方で火災が発生しても、
 反対方向の階段を使うことができるため避難しやすいです。

 もし、どちらか一方しかなければ、
 階段がある方向で火災が発生した場合には、
 ベランダの避難はしごが次の選択肢になります。

 避難はしごは、各住戸に付いていることもあれば、
 1フロアーに一か所しか設置しておらず、
 ベランダで隣との仕切りになっている「隔て板」を突き破って
 避難はしごのある部屋に移動して使う場合も少なくありません。

 この「隔て板」は、日常ではある程度の強度が必要ですが、
 緊急時には比較的簡単に突き破れる必要があります。
 この強度に規格はなく、製品によって強度が違うため、
 10秒以内では突き破れなかったという実験結果もあるそうです。
 隔て板の強度と災害時の避難のしやすさは検討する必要があります。

 高層マンションで外階段ではなく階段が屋内にある場合、
 階段に煙が入り込むと、「煙突効果」で煙が急速に上層階へ広がり、
 火災階より上の階にいる人たちが避難できなくなってしまいます。

 このような事態がおきないように、
 階段のある空間と各階との空間を区切る対策が採られています。
 代表的なものが「特別避難階段」で、
 各部屋と階段の間に、さらに安全な空間を設け、
 煙が階段に流入しないような仕組みになっています。

 マンション火災はどの建物でも起こり得ます。
 マンションは火災に強いから大丈夫という認識ではなく、
 所有しているマンション、これから所有するマンションには、
 どのような対策が必要なのか、何が足りていないのか、
 確認していただくことをお勧めします。

 

 【出典】

 ・2017年7月6日 損保ジャパン日本興亜RMレポート161
  「英国・ロンドンの高層住宅火災の概要」
  http://www.sjnk-rm.co.jp/publications/pdf/r161.pdf
 ・平成29年版 消防白書
  http://www.fdma.go.jp/html/hakusho/h29/h29/pdf/part1_section1.pdf
  https://www.fdma.go.jp/neuter/topics/houdou/h29/07/290728_houdou_1.pdf
 ・All About住宅・不動産「マンションが火事になったらどうする!?」
  https://allabout.co.jp/gm/gc/26952/
 ・NHKそなえる防災 「第3回 超高層建物の火災安全対策を考えよう」
  http://www.nhk.or.jp/sonae/column/20120815.html
 ・NHK解説委員室「使えますか? マンションの消防設備」
  http://www.nhk.or.jp/kaisetsu-blog/700/275451.htm
 ・産経新聞「火災に備える(1)住宅火災の現状」2015.10.5付
  https://www.sankei.com/life/news/151005/lif1510050010-n1.html
 ・ファミリーネット・ジャパン
  「地震・火災から身を守る(5)マンション火災の特徴」
  http://www.cyberhome.ne.jp/union/protection/detail_20150123.html
 ・能美防災公式サイト「適用設備早見フローチャート」
  https://www.nohmi.co.jp/product/lisa/knowledge/need/flow_chart.html
 ・能美防災公式サイト「どうして特例ができたのか?」
  https://www.nohmi.co.jp/product/lisa/knowledge/why/progress.html

 

この原稿は名城企画株式会社が発行する「名古屋・東海収益不動産NAVIメールマガジン」の
2018年7月23日発行分の転載です。