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マンション管理適正化法・建替え円滑化法の改正

 令和2年6月24日に公布された
 「マンションの管理の適正化の推進に関する法律及び
  マンションの建替え等の円滑化に関する法律の一部を改正する法律」
 (以下「改正法」)が、令和4年4月1日に全面施行されました。

 今回のメルマガでは、これらの法改正の概要と、
 この改正を受けて令和4年4月1日から開始される
 「マンション管理計画認定制度」について解説します。

 

令和2年6月24日に公布された改正法

 改正法が成立した背景には、
 マンションをめぐる次の状況があります。

 ・マンションの老築化が進む
  築後40年以上になるマンションは、令和元年末には91万戸ですが、
  令和21年末には384万戸に上ると予測されます。(国土交通省調査)
  適切な管理がされてなければ、居住者、近隣住民等に
  危険を及ぼす可能性があります。

 ・修繕積立金の不足
  修繕積立金残高が計画に対して余剰があるマンションは33.8%で、
  34.8%は不足、31.4%は不明と、
  必要な修繕がなされていないことが懸念されます。
  (平成30年度マンション総合調査)

 これらの状況を踏まえ、マンションの老朽化を防ぐために、
 マンションの管理を適切に行うよう、この法改正がなされました。

 

マンション管理適正化法の改正(令和4年4月1日施行)

 改正のポイントは次の2点です。

 1.マンション管理計画の認定制度
   マンション管理組合は地方公共団体から、
   マンション管理計画が適正であることの認定を受ける制度が
   設けられました。この詳細については後述します。
 
 2.地方公共団体による助言・指導等
   マンションの管理責任は管理組合にあるため、
   従来、地方公共団体はマンションの管理が不十分な場合でも
   介入をしにくい状況がありました。

   今回の法改正により、地方公共団体は必要に応じて、
   マンション管理適正化のための助言や指導を行うことが
   できるようになり、
   さらに管理組合の管理・運営が著しく不適切な場合は、
   勧告を行うことができるようになりました。

 

マンション建替円滑化法の改正

 改正のポイントは次の3点です。

 1.建替えにあたっての容積率の緩和特例の対象拡大
   (令和3年12月20日施行)

   マンション建替えにあたって、容積率が割増されるなら、
   区分所有者は現状より資産が増えることになり、
   老築化したマンションの建替えのインセンティブになります。
   従来はこの特例が、マンションの耐震性が不足している場合
   (1981年以前の旧耐震基準で建設された物件)に限り、
   認められていました。
 
   今回の法改正により、特例が適用される範囲が
   次のように拡大されました。
 
   ・火災に対する安全性の不足(非常用進入口の未設置など)
   ・外壁の剥落等により周辺に危害を与えるおそれ
    (ひび割れや剥がれが一定以上あるなど)
   ・給排水管の腐食(天井裏の排水管で2か所以上の漏水など)
   ・バリアフリー不適合(3階建て以上でエレベーターがない、
    玄関の幅が75㎝未満など)

 2.マンション敷地売却の要件緩和の対象の拡大
   (令和3年12月20日施行)

   マンションと敷地の売却は、区分所有者全員の同意が必要です。
   従来、耐震性が不足しているマンションは、その条件が緩和され、
   区分所有者の4/5以上の同意で可能とされていました。

   今回の法改正により、火災に対する安全性の不足、
   外壁の剥落等により周辺に危害を与えるおそれがあるマンションも、
   区分所有者の4/5以上の同意があれば
   売却が認められるようになりました。
 

 3.団地の敷地分割制度(令和4年4月1日施行)

   団地の建替えまたは敷地売却については、
   本来は区分所有者全員の同意が必要でした。
 
   今回の法改正により、耐震性不足、火災に対する安全性の不足、
   外壁の剥落等により周辺に危害を与えるおそれがある
   団地についても、区分所有者の4/5以上の同意で
   建替えまたは敷地売却が可能になりました。

 

マンション管理計画認定制度

 改正法により令和4年4月1日から、
 「マンション管理計画認定制度」が開始されます。

 

 <認定されるメリット>

 マンション管理組合の管理計画が地方公共団体に認定されると、
 次のメリットがあります。

 ・財団法人マンション管理センターが運営するサイトに
  認定されていることが公表され、適正に管理されたマンションだと
  外部から認知される
 ・適正に管理されたマンションとして、市場において評価される
 ・住宅金融支援機構の「フラット35」の金利の引き下げや
  「マンション共用部分リフォーム融資」の金利の引き下げがある
 ・区分所有者の管理意識を高め、管理水準を維持向上しやすくなる

 

 <認定を受ける方法>

 マンション管理計画認定制度の認定を受けるには、
 所在地が市の場合は市に、町村の場合は都道府県に申請します。

 管理計画の認定を受けるには、マンションの管理組合が
 自治体に対して管理計画を提出し、認定を受ける必要があります。
 申請方法としては、
 「マンション管理センターの管理計画認定手続支援サービス」
 を利用する場合と、
 市または都道府県の窓口に直接申請する方法があります。

 なお、認定された管理計画は、5年ごとに更新が必要です。

 

 <認定基準>

 マンション管理計画認定制度の認定は次の基準で評価されます。

 1.管理組合の運営
  (1)管理者等が定められていること
  (2)監事が選任されていること
  (3)集会が年1回以上開催されていること

 2.管理規約
  (1)管理規約が作成されていること
  (2)マンションの適切な管理のため、管理規約において
     災害等の緊急時や管理上必要なときの専有部の立ち入り、
     修繕等の履歴情報の管理等について定められていること
  (3)マンションの管理状況に係る情報取得の円滑化のため、
     管理規約において、管理組合の財務・管理に関する情報の
     書面の交付(または電磁的方法による提供)について
     定められていること

 3.管理組合の経理
  (1)管理費及び修繕積立金等について明確に区分して
     経理が行われていること
  (2)修繕積立金会計から他の会計への充当がされていないこと
  (3)直前の事業年度の終了の日時点における修繕積立金の
     3ヶ月以上の滞納額が全体の1割以内であること

 4.長期修繕計画の作成及び見直し等
  (1)長期修繕計画が「長期修繕計画標準様式」に準拠し作成され、
     長期修繕計画の内容及びこれに基づき算定された
     修繕積立金額について集会にて決議されていること
  (2)長期修繕計画の作成または見直しが7年以内に行われていること
  (3)長期修繕計画の実効性を確保するため、計画期間が30年以上で、
     かつ、残存期間内に大規模修繕工事が2回以上含まれるように
     設定されていること
  (4)長期修繕計画において将来の一時的な修繕積立金の徴収を
     予定していないこと
  (5)長期修繕計画の計画期間全体での修繕積立金の総額から
     算定された修繕積立金の平均額が著しく低額でないこと
  (6)長期修繕計画の計画期間の最終年度において、
     借入金の残高のない長期修繕計画となっていること
 
 5.その他
  (1)管理組合がマンションの区分所有者等への平常時における
     連絡に加え、災害等の緊急時に迅速な対応を行うため、
     組合員名簿、居住者名簿を備えているとともに、
     1年に1回以上は内容の確認を行っていること
  (2)都道府県等マンション管理適正化指針に照らして
     適切なものであること

 

まとめ

 マンションの価値の査定において、今後はマンションの管理水準が
 考慮されるようになると考えられます。
 そのため、「マンション管理計画認定制度」で
 マンション管理計画の認定を受けておくことは、
 マンションの価値を維持する1つの有効な手段だと言えます。

 

 【出典】

 ・マンション管理センター マンション管理・再生は新時代へ
  https://tinyurl.com/462u8wda
 ・国土交通省 マンションの管理の適正化の推進に関する法律及び
  マンションの建替え等の円滑化に関する法律の一部を改正する法律が
  公布されました https://tinyurl.com/bdfezsaf
 ・国土交通省 マンション管理適正化法の改正概要
  https://www.mlit.go.jp/common/001356471.pdf
 ・読売新聞オンライン 【独自】老朽マンションの建て替え促進策導入へ
  …階数増やせる特例で「新陳代謝」進める 2021年7月14日
  https://www.yomiuri.co.jp/economy/20210713-OYT1T50325/
 ・弁護士によるマンション管理ガイド
  https://mansionbengo.jp/soshiki-unei/kanrikeikakunintei

 

この原稿は名城企画株式会社が発行する「名古屋・東海収益不動産NAVIメールマガジン」の
2022年5月9日発行分の転載です。