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不動産オーナーが知っておきたい民法改正のポイント

 2017年5月に成立した「民法の一部を改正する法律」が
 2020年4月1日から施行されます。
 従来の民法から改正されるのは約200項目。
 不動産の賃貸借契約に関する変更もあります。

 今回は、2020年4月に施行される改正民法について、
 不動産オーナーが知っておきたい重要ポイントを解説します。

 

120年ぶりとなる債権法の改正

 従来の民法が制定されたのは、明治時代の1896年のことです。
 民法には「債権法」と呼ばれる、
 契約等に関する基本的なルールが定められた箇所があります。
 120年の間で、社会・経済は大きく変わりましたが、
 債権法については約120年にわたって大きな改正がありませんでした。

 今回の民法改正は、次の2つの目的があります。
 1.約120年間の社会経済の変化に対応するために
   実質的にルールを変更する
 2.現在の裁判や取引の実務で通用している基本的なルールを
   法律の条文上も明確にし、読み取りやすくする

 約200項目におよぶ改正点の中で、
 賃貸人(不動産オーナー)がまず知っておきたいポイントを、
 一部ではありますが、今回は次の3点についてご紹介します。

 1.敷金が定義される
 2.原状回復のルールが明確化される
 3.連帯保証人を保護するルールが定められる

 それぞれ詳しく見ていきます。

 

1. 敷金が定義される

 従来、不動産の賃貸借契約における「敷金」は、
 民法上で明確な定義が定められていませんでした。
 今回の民法改正によって、「敷金」の定義とルールが明確化されます。

 敷金について、改正民法では以下のように定義されます。
 “いかなる名目によるかを問わず、賃料債務その他の賃貸借に
 基づいて生ずる賃借人の賃貸人に対する金銭の給付を目的とする
 債務を担保する目的で、賃借人が賃貸人に交付する金銭をいう”
 (改正民法 第622条の2)

 つまり、敷金とは、賃借人の債務(家賃支払いや原状回復など)を
 担保する金銭と定められました。

 例えば、部屋の明け渡しにおいて、事前に納められた敷金から
 家賃滞納額や原状回復費用を差し引いた金額を、
 賃借人に返還する義務が生じます。

 事実上、従来の敷金と相違ありませんが、
 法律で定義されたことが大きな違いです。

 

2.原状回復のルールが明確化される

 従来、賃貸借取引における部屋の原状回復については、
 国土交通省の「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」に
 沿って行われてきました。
 今回、その一部が民法に盛り込まれます。

 ポイントは、賃借人に過失がない部分は、
 原状回復義務が生じないことです。
 例えば、通常摩耗による床やカーペットの傷、
 家具の設置による床やカーペットのへこみ、
 日照によるクロスの変色、家電の後方壁面に付いた“電気ヤケ”、
 地震で損傷したガラス、などが挙げられます。

 一方、タバコの匂い・汚れ、ペットによる柱などの傷、
 引っ越し作業で発生した傷など、
 賃借人に過失がある場合のみ、原状回復義務が生じます。

 敷金と同様に、ガイドラインの内容を民法に反映させたわけですが、
 「原状回復義務が発生するもの」「発生しないもの」の線引きが
 明確になったことがポイントです。

 

3. 連帯保証人を保護するルールが定められる

 賃貸借契約における連帯保証人に関するルールが変更されます。
 要点は、「連帯保証人の責任限度額(極度額)を定める」ことと、
 「連帯保証人からの問い合わせに回答する」ことです。

 「連帯保証人の責任限度額(極度額)を定める」について、
 もし賃貸借契約の締結時に責任限度額が定められていなければ、
 その取引は無効となります。
 なお、連帯保証人の責任限度額は改正民法には定められていませんが、
 賃貸借契約では「家賃の1年分」または「○○○万円」などのように
 定めることになります。

 また賃貸人は、家賃の支払い状況といった連帯保証人の
 問い合わせについて、滞りなく回答することが義務となりました。
 これを個人情報保護などを理由に拒否することができなくなります。

 

改正民法は施行日後に締結された契約に適用される

 これまでにご紹介した改正民法の内容は、
 施行日である2020年4月1日以降に締結された契約に適用されます。

 例えば、改正民法施行前の2019年に締結された賃貸借契約には、
 敷金について定めた改正民法622条の2などの規定は適用されず、
 従来どおりの敷金の解釈となります。

 なお、2020年4月1日以降に当事者が合意によって
 賃貸借契約を更新したときは、
 当事者間で改正民法が適用されることが予測されたと考えられるため、
 改正民法が適用されます。

 改正民法の施行は間近に迫っています。
 もし個別の契約について不安な点がありましたら、
 今のうちに弁護士や司法書士などの専門家に
 相談することが望ましいと言えます。

 

 【参考】

 ・法務省 民法の一部を改正する法律(債権法改正)について
  http://www.moj.go.jp/MINJI/minji06_001070000.html
 ・120年ぶりの民法改正で「敷金の返還義務」「原状回復の負担割合」
  が法律で明文化 https://fukumane.jp/deposit-return-law/
 ・敷金と原状回復ルールが明確化。
  改正民法の成立で住宅の賃貸借契約はどうなる?
  https://www.homes.co.jp/cont/press/rent/rent_00456/
 ・民法改正で「敷金」の扱いはどう変わる?
  https://owners-cb.jp/tech/detail/id=336
 ・「敷金礼金なし」は本当にお得?デメリットや注意点
  https://o-uccino.com/front/articles/49366

 

この原稿は名城企画株式会社が発行する「名古屋・東海収益不動産NAVIメールマガジン」の
2020年3月9日発行分の転載です。