
近年はさまざまな産業で、AIやIoTなどのテクノロジーを
採り入れた新しいサービスやビジネスが生み出されつつあります。
それらはしばしば、「Technology」を短縮した「Tech」と
組み合わせて、分野ごとに「○○ Tech」と呼ばれます。
金融の「Fin Tech」、教育の「ED Tech」、人材の「HR Tech」
などです。
そして不動産業界でも「不動産テック」と呼ばれる
新しいサービスやビジネスが生まれつつあります。
なお、「不動産テック」は日本国内でのみ使われる造語です。
海外では「Real Estate」や「Property」と「Technology」
を組み合わせた「Re Tech」「Prop Tech」などと呼ばれます。
今回は、不動産テックにはどのようなサービス・ビジネスが
あるかということと、東海地方発の不動産テックについて
ご紹介します。
不動産テックにはどのようなサービス・ビジネスがあるか
不動産テックと呼ばれるサービス・ビジネスには、
主に次のような種類があります。
1)AR(拡張現実)・VR(仮想現実)
・物件を直接内覧しなくてもVRで物件内部を仮想体験するサービス。
・モデルルーム内でARを使って
内装や家具の配置をシミュレーションするサービス。
2)IoT・スマートホーム・スマートロック
・物件内の照明やエアコンなどを声やスマートフォンで
操作したり、遠隔操作したりする技術。
・スマートフォンで鍵を開閉したり、顔認識により
鍵を開閉する技術。
一部の民泊用物件ではスマートフォンによる鍵開閉が
活用されている。
3)AIを活用した査定や予測
・AIを活用して、物件の評価額を瞬時に査定するサービス。
・AIを活用して、物件の最適な賃料設定を予測するサービス。
4)物件のマッチング・AIを活用したマッチング
・物件を売りたい・貸したい人と物件を買いたい・借りたい人
をインターネット上で仲介するサービス。
・物件を探す人の希望条件に合う物件をAIが探して提案する
サービス。
・AIとのチャット(会話)形式で、物件を探す人の希望の条件
を聞き出し、最適な物件を案内するサービス。
5)物件のシェアリング
・空いている会議室、住居、駐車場などと、
それらを借りたい人をインターネット上で結び付けて
短期的賃借を実現するサービス。
東海地方発の不動産テック
東海地方からも不動産テックのサービス・ビジネスが生まれて
います。東海地方発の4つの不動産テックをご紹介します。
1)不動産売買・賃貸のマッチングサイト「物件会議」
サイトと同じ会社名の物件会議(名古屋市中区)が運営。
会員が買いたい、借りたい建物や土地のエリアや希望金額を
投稿すると、別の会員から該当する不動産情報を得ることが
できる。
また会員どうしチャット機能でスムーズに交渉ができる。
取引が成功すると買い手・借り手から成功報酬を徴収する。
2)施主と解体工事者のマッチング・AI見積サービス
「くらそうね解体」
クラッソーネ(名古屋市中村区)が運営。
ハウスメーカーや不動産会社を介さず、施主と解体工事業者
がサイト上で直接やり取りして取引を成立させる。
AIにより最大10社の業者による予想見積額を約1分で算出し、
施主の意思決定の時間を短縮する。
施主の利用は無料、解体工事業者は工事金額の10%を支払う。
3)入居者と管理会社・オーナーをつなげるアプリ
「app-me!Cloud」
ゴールドキーカンパニーリミテッド(名古屋市中区)が提供
する入居者と管理会社・オーナーをクラウド上でつなげる
アプリ。
管理会社・オーナーはパソコンの管理画面上で物件データを
把握できる。また、管理者・オーナーから入居者への連絡・
通知をアプリ上で素早く効率的にできる。利用料は300円/戸。
4)無人IoTモデルルーム見学サービス
東新住建(稲沢市)は分譲マンションDUPレジデンスの
2回目以降の見学希望者について、無人見学を実施。
希望者はスマホで予約し、スマートロックでドアを開閉できる。
空調や照明は遠隔操作で対応する。
スタッフは音声通話で質問や相談に応じる。
昨今、国内では人手不足が深刻です。
今回ご紹介したような不動産テックは、人手を介さずに対応したり、
遠隔操作によって離れた現場の対応をしたり、
AIによって効率的に業務を処理できることから、
人手不足を補う解決策としても期待されます。
不動産テックにより、不動産業界がどのように進化していくのか、
この先も注目したいです。
【参考】
・不動産テックとは? カテゴリー別の活用事例を交えて
不動産業界の未来をわかりやすく解説!
https://monstar-lab.com/dp/blog/about-property-tech/
・話題の『不動産テック』とは?押さえておきたいその基礎知識を
解説! https://www.mecyes.co.jp/library/watch/084
・【2019年最新版】業界超初心者向け「不動産テック」徹底解説!
https://www.sumave.com/20190415_10791/
・不動産テック市場に関する調査を実施(2018年)
https://www.yano.co.jp/press-release/show/press_id/1889
・中部経済新聞 2020年2月20日 物件会議
・中部経済新聞 2020年4月3日 クラッソーネ
・中部経済新聞 2020年3月4日 ゴールドキーカンパニーリミテッド
・中部経済新聞 2019年12月13日 東新住建
この原稿は名城企画株式会社が発行する「名古屋・東海収益不動産NAVIメールマガジン」の
2020年4月13日発行分の転載です。