名古屋市・愛知県・岐阜県・三重県の
不動産投資・不動産の収益化に役立つ情報を提供

名古屋・東海収益不動産ガイド

不動産取引のデジタル化

 わが国のデジタル化の遅れはかねてから指摘されてきましたが、
 コロナ禍で、オンライン上の手続きの必要性が改めて認識されました。

 国は2021年5月19日に
 「デジタル社会の形成を図るための関係法律の整備に関する法律」
 (デジタル社会形成基本法)を公布し、
 2021年9月1日にはデジタル庁を設置するなど、
 国を挙げてデジタル化を進めようとしています。

 不動産業界では、2022年5月に施行が予定される
 宅地建物取引業法の改正によって、
 取引のデジタル化が急速に進もうとしています。

 そこで今回は、不動産取引のデジタル化について、
 法律改正の経緯と、大手不動産企業の取り組み状況を解説します。

 

IT重説の導入の経緯

 不動産の売買時や賃貸借契約を結ぶ際に、
 かつては宅地建物取引業法により、
 重要事項説明を宅地建物取引士が対面で行うことが
 義務づけられていました。

 しかし2013年の「世界最先端IT国家創造宣言(閣議決定)」を受けて、
 2015年から国土交通省がIT機器を活用した重要事項説明、
 いわゆる「IT重説」の社会実験を開始しました。
 そして2017年10月から賃貸仲介におけるIT重説の本格運用が開始され、
 2021年4月から不動産売買取引でIT重説の本格運用が開始されました。

 IT重説の導入によって、宅地建物取引士と賃借人との間で、
 対面と同様に説明や質疑応答が行える環境があれば、
 オンラインで重要事項説明を受けることができるようになりました。

 ただ、これまでは紙の契約書面の交付を必要とし、
 宅地建物取引士が重要事項説明書に記名・押印する必要がありました。
 そこで、これらの手続きもデジタル化を可能にするために、
 宅地建物取引業法の改正が2022年5月に施行されようとしています。

 

2022年5月の宅地建物取引業法の改正

 2021年5月にデジタル社会形成基本法が成立しました。
 その中で宅地建物取引業法の改正についても盛り込まれており、
 この改正が2022年5月に施行される予定です。

 この宅地建物取引業法の改正において、次の押印が不要となり、
 電子署名とタイムスタンプに置き換わります。
 ・重要事項説明書への宅地建物取引士の押印
 ・宅地又は建物の売買契約・交換契約・賃貸契約締結後の
  交付書面への宅地建物取引士の押印

 また、次の書面については電磁的方法(デジタルデータ)による
 交付が可能となります。
 ・媒介契約・代理契約締結時の交付書面
 ・レインズ登録時の交付書面
 ・重要事項説明書
 ・売買契約・交換契約・賃貸契約締結時の交付書面(37条書面)

 この改正により、不動産取引のデジタル化が急速に進むことが期待されます。

 

大手不動産企業のデジタル化の取り組み

 大手不動産企業はこのようなデジタル化の動きを見越して
 すでに取り組みを開始しています。

 ・三井不動産レジデンシャルでは、分譲マンションや戸建ての
  購入手続きの書類について、2022年夏から順次電子化に着手します。
  従来は1戸の購入手続きで約1000枚の書類が発生しており、
  年間360万枚の紙を使用していましたが、これらを削減できます。
  売買契約書の収入印紙代は購入者負担分も含めて年間1億円以上の削減、
  書類情報のシステム入力や照合作業の削減により、
  契約事務業務の作業時間の70%、年間約3万時間が削減されます。

 ・野村不動産は、これまで住宅販売で導入していた電子契約を
  仲介にも広げ、2021年11月から一部の不動産仲介店舗で
  売買契約の手続きを電子化しました。
  2022年春までに全国に90以上ある野村不動産ソリューションズの
  全ての仲介店舗で売買契約手続きの電子化の導入を目指します。
  デジタルガレージが開発した不動産契約を一元管理するシステム
  「Musubell(ムスベル) for 仲介」を採用します。
  これは100種類以上の契約書の自動選別や自動作成ができるシステムで、
  野村不動産ソリューションズが開発に協力しました。

 ・三菱地所レジデンスは、2021年11月からマンション・戸建て購入時の
  電子契約のトライアルを開始しており、
  2022年度中には全社で電子契約の導入を予定しています。
  今後は、オンライン入居説明会の開催を含めた
  契約から入居後までの手続きでデジタル化を推進します。

 

まとめ

 2022年5月に施行される宅地建物取引業法改正を受けて、
 これから不動産業界のデジタル化の動きが急速に進むと予想されます。

 今後は、不動産の購入希望者や入居希望者がオンラインでの手続きを
 希望する場合が増えると予想されます。
 不動産オーナーにも、不動産取引のデジタル化への対応が求められます。

 

 【参考】

 ・オーナーズ倶楽部 2021年12月16日
  賃貸借契約の電子契約は今後どうなる?早めに確認しておこう
  https://owners-cb.jp/property_management/management/432
 ・日経電子版 2021年12月24日
  三井不動産など、マンション購入書類電子化 非対面強化
  https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUC1708K0X11C21A0000000/
 ・三井不動産グループ プレスリリース 2021年7月26日
  https://www.mfr.co.jp/content/dam/mfrcojp/company/news/2021/0726_01.pdf
 ・野村不動産ソリューションズ プレスリリース 2021年9月27日
  https://www.nomura-solutions.co.jp/news/pdf/20210927.pdf
 ・日経電子版 2021年9月27日
  野村不動産、仲介に電子契約 全店舗で導入へ
  https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUC2775E0X20C21A9000000/
 ・三菱地所レジデンス プレスリリース 2022年1月24日
  https://www.mec.co.jp/j/groupnews/archives/mecg_220124_denshikeiyaku.pdf

 

この原稿は名城企画株式会社が発行する「名古屋・東海収益不動産NAVIメールマガジン」の
2022年4月4日発行分の転載です。