
猛暑の夏でも涼しく、底冷えするような冬も暖かく。
そんな理想の住宅を実現できる方法の一つが断熱リフォームです。
断熱リフォームは大きく分けて2つ方法があります。
1)熱の出入りの半分以上を占める窓に断熱効果の高いものを使う
2)壁・天井・屋根・床に断熱材を使ってリフォームする
今回は、この2つの断熱リフォームについてお伝えします。
「遮熱」と「断熱」の違い
「断熱」は、壁の内部を伝わる熱の量を小さくすることです。
冬に熱が逃げるのを防ぎ、夏に熱の侵入を防ぐことが目的です。
「遮熱」は、日射を吸収しないように反射することです。
こちらは、夏に熱の侵入を防ぐことが目的です。
例えば、窓の外側によしずをかける、
ゴーヤなどの“緑のカーテン”を作ることなども「遮熱」です。
日本は“断熱後進国”
夏になると、東海地方でも気温が40度近くに達します。
エアコンの温度を高めに設定したり、
よしずで省エネで涼しくする方法は思いつきますが、
意外と知られていないのが「断熱」です。
実は、日本は“断熱後進国”で、あまり知られていないのです。
断熱性能について、住宅の熱の出入りの半分以上を占める
窓を例に考えてみます。
窓の断熱性能は、「熱貫流率」という指標で表されます。
(U値ともいい、単位はW/平方メートル・Kです。)
1平方メートルあたり、1時間当たりに通す熱量を表していて、
数字が小さいほど断熱性に優れていることを意味します。
各国では、窓の熱貫流率の基準が定められています。
ところが、日本には熱貫流率の最低基準はありません。
2011年に経済産業省は窓の断熱性能の表示に関する制度を定め、
熱貫流率が2.33W/平方メートル・K(以下同じ)以下のものを、
最も高品質の4等級としています。
(2.33超~3.49以下が3等級、3.49超~4.65以下が2等級、
4.65超が1等級。)
韓国の窓の断熱性能の基準では、ソウルで2.1以下、
プサンで2.4以下が義務付けられています。
つまり、日本で高品質とされる基準の4等級2.33以下は、
韓国で求められる最低限の水準とほぼ同等です。
ちなみにヨーロッパ諸国では1.0~2.1程度の
より厳しい窓の熱貫流率の基準が定められています。
(フィンランド1.0、ドイツ1.3、フランス2.1、イギリス1.8)
このように、日本は海外と比べると断熱対策が遅れています。
断熱性の高い窓とは
断熱対策の一つが、断熱性の高い窓ガラスを使うことです。
どのようなガラスが断熱性が高いのでしょうか。
複層ガラスは、2枚のガラスで空気を挟み、断熱性を高めたもの
です。一般に使われている一枚板のガラスの2倍以上の断熱性が
あります。3枚ガラスや5枚ガラスの窓ガラスもあり、
一般的には枚数が多いほど断熱性が高まりますが、
重くなるというデメリットもあります。
Low-Eガラスは複層ガラスの間に特殊な金属膜をコーティング
したもので、優れた断熱性能と遮熱性能を持っています。
窓枠は、日本ではアルミ製のものがよく使われていますが、
樹脂製・木製の方が熱が伝わりにくく断熱性が高まります。
2016年に発売されたリクシルの「レガリス」は5枚ガラスを使い、
熱貫流率が0.55 W/㎡・Kを実現しました。
しかも、一般的な3枚ガラスの窓と同様の重さにまで軽量化した
そうです。
断熱材を使ったリフォーム
続いて、壁や天井などに断熱材を入れるリフォームについて
紹介します。大きく2つの工法があります。
「充填断熱工法」は、内部の壁をはがして断熱材を詰めるか、
断熱材を壁の上から貼る工法です。
家の中の工事になるため、家具を移動させる必要があり、
コンセントの位置を変える工事を伴うことが多いです。
断熱材を壁の上から貼ると、部屋が少し狭くなります。
「外張り断熱工法」は住宅の外側に断熱材を施工する方法で、
断熱材で住宅をすっぽりと包み込むイメージです。
充填断熱工法に比べて、費用が高くなりますが、すき間なく
断熱材を張るため、結露しにくいメリットがあります。
建築で使われている主な断熱材は「繊維系」「天然素材系」
「発泡プラスチック系」の3つに分かれます。
「繊維系」はガラスを溶かして繊維状に加工したグラスウール
が、価格が安いため広く使われています。
「天然素材系」は、羊毛や炭化コルクなどが使われていて、
環境や人体への負荷が少ないですが、価格が高くなります。
「発泡プラスチック系」のフェノールフォームは最も高品質と
されています。断熱性が高く、素材の安定性も高いため、
長期間にわたって優れた断熱性能を発揮しますが、価格が高く
なります。
断熱リフォームをすると、過ごしやすくするだけでなく、
冷暖房を弱められることで電気・ガスの節約にもつながります。
リフォームを検討する際には、この節約効果も見据えて
検討されてはいかがでしょうか。
【出典】
・日経アーキテクチュア「意外に知らない「遮熱」と「断熱」の違い
冬に備える家づくり(2)」2014/10/22付
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO78201530Z01C14A0000000/
・ケンプラッツ「低い断熱性なぜ放置、世界に遅れる「窓」後進国
ニッポン 松尾和也 松尾設計室代表」2014/11/7付
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO78836460U4A021C1000000/
・経済産業省「窓の断熱性能表示制度について」
https://tinyurl.com/ydfjdtak
・「34. 開口部材の日射侵入率等熱特性に関する調査」p23、
諸外国の窓の熱性能基準
http://www.mlit.go.jp/common/000208396.pdf
・環境省 温室効果ガス排出抑制等指針 断熱ガラス
https://tinyurl.com/y7ctscal
・リクシル プレスリリース
http://newsrelease.lixil.co.jp/news/2016/010_door_0120_01.html
・オオサワ創研 「断熱材の種類とそれらの比較。
そして断熱住宅の未来について」
https://www.sooken.com/blog/insulation-materials/
・旭化成建材 「断熱材選びのポイント」
https://www.asahikasei-kenzai.com/akk/insulation/neo/point/5-2.html
この原稿は名城企画株式会社が発行する「名古屋・東海収益不動産NAVIメールマガジン」の
2018年4月16日発行分の転載です。