
昨今、中古住宅をめぐって「住宅インスペクション」が
話題になっています。
そこで今回と次回の2回のメルマガで、
「住宅インスペクション」について解説します。
住宅インスペクションとは
「住宅インスペクション」とは、
建物に関して十分な知識を持つ人が、第三者的な立場で
建物の劣化状況、欠陥の有無検査・診断することです。
昨年2016年5月27日の第190回国会において
「改正宅地建物取引業法」が成立しました。
「建物状況調査(インスペクション、住宅診断)」に
関する規定は2018年4月1日から施行されることになりました。
なぜ、このような法改正がなされるのでしょうか?
その背景には、日本の特殊な住宅市場があります。
中古住宅の取引が少ない日本の住宅市場
日本の住宅市場は新築の売買が中心で、
中古住宅が取引される割合は海外に比べると
極めて少ないのです。
国土交通省の統計では、
2013年の新築住宅の着工戸数は98万戸、
一方、中古住宅の取引戸数は16万9000戸でしかなく、
<新築住宅+中古住宅>の合計に占める中古住宅の割合は
14.7%に過ぎません。
海外は大きく異なります。
アメリカの中古住宅の流通シェアは83.1%(2014年)、
イギリスは88.0%(2012年)、フランスは68.4%(2013年)で、
いずれの国も新築住宅よりも中古住宅の流通の方が多く、
日本とは大きな差があります。
買い手が中古住宅を購入しやすくするために
中古住宅が取引されないと、空き家の増加にもつながります。
2013年の調査では、総住宅数に占める空き家の数の割合が
13.5%と過去最高になり、社会問題となっています。
しかしながら、買い手にとっては、
中古住宅を購入した場合に、基礎工事の不備、雨漏り、
壁のひび割れ、白アリ被害などの欠陥がないかどうか
不安があるため、中古住宅を敬遠しがちです。
そこで、国は買い手が中古住宅を購入しやすくするために、
住宅の専門知識を持つ人による住宅インスペクションを推進し、
住宅の不具合についてあらかじめ明らかにしたうえで、
買い主が購入できるようにしようとしています。
2013年には「既存住宅インスペクション・ガイドライン」
をまとめ、
2016年に「宅地建物取引業法」の改正を行いました。
なお、アメリカでは、中古住宅の買い主のおよそ8割が
住宅インスペクションを行っているそうです。
日本でも住宅インスペクションの導入をきっかけに、
中古住宅の売買が活性化することが期待されています。
次回のメルマガでは、
住宅インスペクションは具体的に何をするのか、
について解説します。
<参考URL>
・「平成27年度 住宅経済関連データ
既存住宅の流通シェアの推移」国土交通省
http://www.mlit.go.jp/statistics/details/t-jutaku-2_tk_000002.html
・「中古住宅市場活性化・空き家活用促進・住み替え円滑化に
向けた取組について」
国土交通省土地・建設産業局住宅局 平成27年8月3日
http://www.kantei.go.jp/jp/singi/sousei/meeting/ccrc/h27-08-25-kokudo.pdf
・「平成25年住宅・土地統計調査
1 空き家等の住宅に関する主な指標の集計結果について」
総務省 平成27年2月26日
http://www.stat.go.jp/data/jyutaku/topics/topi861.htm
・「『宅地建物取引業法の一部を改正する法律の施行期日を定める政令』
を閣議決定」国土交通省 平成28年12月20日
http://www.mlit.go.jp/report/press/totikensangyo16_hh_000143.html
この原稿は名城企画株式会社が発行する「名古屋・東海収益不動産NAVIメールマガジン」の
2017年8月7日発行分の転載です。