
今回は「住宅性能表示制度」について解説します。
住宅性能表示制度とは
住宅性能表示制度とは、欠陥住宅が社会問題化したことを受け、
2000年4月1日に施行された
「住宅の品質確保の促進等に関する法律(住宅品確法)」
に基づく制度です。
表面上は把握しにくい住宅性能について、
国に登録した第三者機関
(登録住宅性能評価機関、以下「評価機関」)
が一定の共通基準により評価して等級や数値で表すものです。
住宅性能表示の評価方法は、
設計図書を基に評価する「設計住宅性能評価」と、
施行段階と完成段階の検査を経て評価する「建築住宅性能評価」
の2種類があります。
評価結果をとりまとめた書類を「住宅性能表評価書」といい、
法律に基づくマークが表示されます。
評価項目は10分野・34事項(新築住宅は32事項)です。
これらの評価分野を等級、数値で評価します。
【住宅性能表示制度における評価分野】
1.構造の安定性(7事項)
2.災害時の安全性(7事項)
3.劣化の軽減に関すること(1事項)
4.維持管理や更新への配慮(4事項)
5.温熱環境とエネルギー消費量(2事項)
6.空気環境(3事項)
7.光や視環境(2事項)
8.音環境(4事項)
9.高齢者への配慮(2事項)
10.防犯(1事項)
このうち、1、3、4、5の分野について、
一戸建てでは7事項、共同住宅棟ではの9事項が必須事項です。
それ以外は選択項目となり、任意で評価を受けることができます。
住宅性能表示制度における性能表示事項(必須/選択)
についてはこちらをご参照ください。
https://www.mlit.go.jp/common/001090813.pdf
当初は新築住宅のみを適用対象とする制度でしたが、
法改正にともない既存住宅も評価を受けられるようになりました。
一戸建てと共同住宅等では、評価事項が異なります。
詳しくは「国土交通省住宅局生産課」が監修する
「住宅性能表示制度ガイド」をご覧ください。
参考リンク:住宅性能表示制度ガイド
http://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/torikumi/hinkaku/060401guide20p.pdf
審査の料金は、審査機関や審査範囲・内容・物件規模によって
異なりますが、戸建ての場合は数万円~十数万円程度、
集合住宅はさらに階数・部屋数によっても異なりますが、
おおよそ数十万円程度が見込まれます。
建築住宅性能評価では、3階建て以下の住宅の場合、
評価機関は原則4回現場に立ち入って評価します。
4階建て以上の場合は階数に応じて検査の回数が増加します。
評価機関は検査の時期までに行われた工事の内容を
施工管理を行う責任者が作成する書類で確認するとともに、
目視や実測による実物の検査を行います。
住宅性能表示制度のメリット
住宅購入者にとってのメリットは、大きくわけて5つあります。
1.住宅性能が可視化され、物件の相互比較が容易になる
住宅性能評価書により、検討物件の比較をしやすくなります。
購入する物件を見極める際に各項目の評価結果が参考になります。
2.物件を手放す際、住宅性能評価書の存在が有利に働く
住宅性能評価書を取得することで、
資産価値を維持しやすくなり、
中古売却の際の査定も有利になると考えられます。
3.耐震等級により地震保険が最大50%割引される
住宅性能表示制度における耐震性は、
1から3まである「耐震等級」で評価し、
等級により最大50%の保険料割引が受けられます。
4.住宅ローンなどの金利が優遇される
住宅性能評価書を取得した物件は、
住宅ローンの金利が優遇されたり、
「フラット35」の物件検査の一部が省略されたりします。
5.住宅トラブルの処理を紛争機関に申請できる
住宅性能評価書が交付された住宅に争いが起こった場合、
裁判によらず紛争を円滑・迅速に処理するために、
国土交通大臣が指定する指定住宅紛争処理機関
(各地の弁護士会)に紛争処理を申請することができます。
申請料は1件あたり1万円です。
住宅性能表示の評価結果の受け止め方には注意が必要です。
・住宅性能評価の結果は等級や数値などで表示されます。
等級は、数字が大きいほど性能が高いことを表しますが、
各項目の数値が大きいことが、必ずしも
居住者にとって最適になるとは限りません。
また、複数の評価項目がトレードオフ関係
(一方を高くすると他方が下がる)になる場合もあります。
そのため、住宅の使い方、ライフスタイル、工事費、気候・風土、
デザインや使い勝手などを考慮し、
性能の最適な組み合わせを選択することが求められます。
・住宅性能評価は住宅に不具合が起きないことを
保証するものではありません。
評価結果は一定の条件を前提とした基準に従ったものであり、
居住者の実感や実測結果の程度を保証するものではありません。
また評価結果は評価時点のものであり、
経年変化の影響を考慮していません。
・住宅の性能に関わる要素でも、
評価対象となっていない場合もあります。
例えば施工の水準については評価対象に含まれていません。
住宅性能表示の実績
住宅性能表示を受けるかどうかは任意となっています。
「一般社団法人 住宅性能評価・表示協会」によると、
新築住宅着工数における住宅性能表示の設計住宅性能評価の
交付割合は2018年度で26.1%です。
この割合は2000年の制度開始以降、年々高くなっています。
2000年10月3日から2019年10月末までの交付実績は、
設計住宅性能評価は、一戸建て 1,442,401戸、
共同住宅 2,115,106戸(85,916棟)、合計 3,557,507戸
建設住宅性能評価は、一戸建て 1,125,008戸、
共同住宅 1,604,552戸(57,294棟)、合計 2,729,560戸
さて、不動産オーナーにとってもメリットのある住宅性能表示制度。
もし、所有する不動産がまだ住宅性能評価を受けていない場合は、
評価を受けてみてはいかがでしょうか。
【出典】
・一般社団法人 住宅性能評価・表示協会
住宅性能表示制度は法律に基づく制度です
https://www.hyoukakyoukai.or.jp/seido/shintiku/01.html
・国土交通省 住宅性能表示制度における性能表示事項
https://www.mlit.go.jp/common/001090813.pdf
・東栄住宅 住宅性能評価書を取得するメリット・デメリット
https://tinyurl.com/qn9snxy
・インベストオンライン
住宅性能表示制度とは?4つのメリットと普及割合
https://tinyurl.com/t9equnb
・不動産投資SQUARE
初めての不動産購入でも安心!「住宅性能評価付き」の物件
https://www.clearthlife.com/knowhow/property/3303
・アサカホーム株式会社
設計住宅性能評価、交付割合が26.1%
http://asaka-home.com/blog/?p=547
・弁護士法人みずほ中央法律事務所
https://www.mc-law.jp/fudousan/26355/
この原稿は名城企画株式会社が発行する「名古屋・東海収益不動産NAVIメールマガジン」の
2020年1月14日発行分の転載です。