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住生活基本計画とは

 令和3年3月19日に住生活基本計画(令和3年度~12年度)が
 閣議決定されました。

 住生活基本計画とは、平成18年に成立した住生活基本法に基づき
 全国の住宅政策の基本方針として10年間を見通して策定される
 計画です。概ね5年ごとに見直されます。
 全国計画に即して、各都道府県でも基本計画が定められます。

 この計画は住宅政策の基本になるため、
 不動産投資・物件管理にも影響を与える可能性があります。

 今回の住生活基本計画について、昨今の環境変化を受けた特徴として、
 次の4点を挙げることができます。

 1.コロナ禍を受けて、二拠点生活やテレワークができるような
   住宅の整備推進が盛り込まれています。

 2.豪雨などの自然災害が頻発・激甚化したことから、
   安全な住宅・住宅地の整備推進が盛り込まれています。

 3.デジタル化の重要性が認識されるなか、住宅の生産・管理や
   契約・取引におけるDXの推進が盛り込まれています。

 4.「住宅循環システムの構築」は従来から掲げられていましたが、
   「脱炭素社会」に向けた取り組みとして改めて掲げられています。

 住生活基本計画では、3つの視点、8つの目標に基づいて、
 住宅政策の方向性を示しています。

 以下に、不動産投資や不動産管理に関連する内容に絞って、
 「基本的な施策」や「成果指標」をご紹介します。

 

1.「社会環境の変化」からの視点

 目標1.「新たな日常」やDXの進展等に対応した新しい住まい方の実現

 (1)国民の新たな生活感をかなえる居住の場の多様化及び生活状況に
    応じて住まいを柔軟に選択できる居住の場の柔軟化の推進

 <主な基本的な施策>(原文ではなく抜粋・編集しています。以下同じ。)
 ・住宅内テレワークスペース、地域内のコワーキングスペース、
  サテライトオフィス確保により職住一体・近接の環境整備を推進
 ・宅配ボックスや自動水栓の設置等による非接触の環境整備を推進
 ・空き家等の活用を重視した地方、郊外、複数地域での居住の推進
 ・性能が確保された物件の明確化、紛争処理体制の整備
 ・計画的な修繕、長期優良住宅や持ち家の賃貸化などを推進

 (2)新技術を活用した住宅の契約・取引プロセスのDX、
    住宅の生産・管理プロセスのDXの推進

 <主な基本的な施策>
 ・住宅の情報収集、物件説明、交渉、契約までのDXの推進
 ・市場の透明性、信頼性の向上に向けた取引価格等の情報提供推進
 ・AI設計支援、劣化診断の自動化、BIM導入などDXによる生産性向上
 ・住宅団地における自動運転、MaaSなど住環境へのDXの推進

 <成果目標>
 ・DX推進計画を策定し、実行した大手住宅事業者
   0%(令和2年)→100%(令和7年)

 目標2.頻発・激甚化する災害新ステージにおける安全な住宅・住宅地の
     形成と被災者の住まいの確保
 (不動産投資・物件管理との関係性が薄いため省略します)

 

2.「居住者・コミュニティ」からの視点

 目標3.子どもを産み育てやすい住まいの実現

 (1)子どもを産み育てやすく良質な住宅の確保

 <主な基本的な施策>
 ・家事負担を軽減するリフォーム促進、住宅内テレワークスペース確保
 ・若年世帯・子育て世帯の都心居住ニーズもかなえる住宅取得促進
 ・子どもの人数、生活状況等に応じた柔軟な住み替えの推進
 ・民間賃貸住宅の計画的な維持修繕や管理業務等を通じて
  良質で長期に使用できる住宅ストックの形成

 (2)子育てしやすい居住環境の実現と街づくり

 <主な基本的な施策>
 ・住宅団地での建替えや再開発等における子育て支援施設の整備
 ・市街地の空き家・空き店舗等を活用した地域の交流施設の整備

 <成果指標>
 ・民間賃貸住宅のうち、一定の断熱性能を有し遮音対策が講じられた
  住宅の割合
   約1割(平成30年)→2割(令和12年)
 ・公的賃貸住宅団地(100戸以上)における地域拠点施設併設率
   29%(令和元年)→おおむね4割(令和12年)

 目標4.多様な世代が支え合い、高齢者等が健康で安心して暮らせる
     コミュニティの形成とまちづくり

 (1)高齢者、障害者等が健康で安心して暮らせる住まいの確保

 <主な基本的な施策>
 ・改修、住み替え、バリアフリー情報の提供
 ・エレベータ設置を含むバリアフリー性能やヒートショック対策等
  良好な温熱環境を備えた住宅の整備、リフォーム促進
 ・高齢者の健康管理や遠隔地からの見守りのためのIoT技術普及

 (2)支え合いで多世代が共生する持続可能で豊かなコミュニティの
    形成とまちづくり
 (不動産投資・物件管理との関係性が薄いため省略します)
 
 <成果指標>
 ・高齢者の居住する住宅のうち、一定のバリアフリー性能及び
  断熱性能を有する住宅の割合
   17%(平成30年)→25%(令和12年)
 ・高齢者人口に対する高齢者向け住宅の割合
   2.5%(平成30年)→4%(令和12年)
 ・公的賃貸住宅団地(100戸以上)における地域拠点施設併設率
   29%(令和元年)→おおむね4割(令12年)

 目標5.住宅確保要配慮者が安心して暮らせるセーフティーネット
     機能の整備
  (不動産投資・物件管理との関係性が薄いため省略します)

 

3.「住宅ストック・産業」からの視点

 目標6.脱炭素社会に向けた住宅循環システムの構築と良質な
     住宅ストックの形成

 (1)ライフスタイルに合わせた柔軟な住替えを可能とする 
    既存住宅流通の活性化

 <主な基本的な施策>
 ・安心R住宅、長期優良住宅など既存住宅の性能情報提示の仕組み改善
 ・性能が確保された住宅を重視して既存住宅取得を推進
 ・既存住宅の瑕疵担保の充実や紛争処理体制委の拡充
 ・健全なリースバックの普及、リバースモーゲージや残価設定ローン等
  多様な金融手法を活用し住宅の資産価値の合理化・明確化を推進

 (2)長寿命化に向けた適切な維持管理・修繕、老築化マンションの
    再生(建替え、マンション敷地売却)の円滑化

 <主な基本的な施策>
 ・住宅の計画的な点検・修繕及び履歴情報の保存を推進
 ・耐震性、省エネ性能、バリアフリー性能等を向上させるリフォームや
  建替えによる安全・安心で良好な温熱環境を備えた住宅への更新
 ・地方公共団体による管理計画認定制度を定着させ
  マンション管理の適正化や長寿命化、再生の円滑化を推進
 ・長期優良住宅のマンションの管理の適正化、手続きの合理化

 (3)世代をこえて既存住宅として取引されうるストックの形成

 <基本的な施策例>
 ・2050年カーボンニュートラル実現に向けた
  CO2排出量が少ない長期優良住宅や、LCCM 住宅
  (ライフサイクルカーボンマイナス住宅)の評価と普及推進、
  ZEH(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)の拡充
 ・住宅の省エネ基準の義務付けや省エネ性能表示の規制の強化
 ・住宅・自動車のエネルギー共有・融通を図るシステムの普及
 ・木造住宅の普及、中高層住宅の木造化
 ・住宅事業者の省エネの取り組み情報を公表する仕組みの構築、
  省エネ性能やCO2排出量、長期優良性により住宅取得を推進

 <成果指標>
 ・既存住宅流通及びリフォームの市場規模
   12兆円(平成30年)→14兆円(令和12年)→20兆円(長期的目標)
 ・住宅性能に関する情報が明示された住宅の既存住宅流通に占める割合
   15%(令和元年)→50%(令和12年)
 ・25年以上の長期修繕計画に基づく修繕積立金額を設定している
  分譲マンション管理組合の割合
   54%(平成30年)→75%(令和12年)
 ・住宅ストックのエネルギー消費量の削減率(平成25年度比)
   3%(平成30年)→18%(令和12年)
 ・認定長期優良住宅のストック数
   113万戸(令和元年)→約250万戸(令和12年)
 

 目標7.空き家の状況に応じた適切な管理・除却・利活用の一体的推進

 (1)空き家の適切な管理の促進とともに、周辺の居住環境に悪影響を
    及ぼす空き家の除却

 <主な基本的な施策>
 ・空き家関係の法制度の運用・手続きの明確化、
  市町村の空き家の実態把握推進、管理不全空き家の除却などの強化
 ・空き家所有者のための相談体制の強化、空き家発生抑制、荒廃化防止
 ・市町村による空き家の略式代執行の法務手続き支援

 (2)立地・管理状況の良好な空き家の多様な利活用の推進

 <主な基本的な施策>
 ・空き家、空き家バンクの活用、多様な二地域居住・他地域居住の推進
 ・空き家の除却と合わせた敷地整序、ランドバンクを通じた
  空き家・空き地の一体的な活用・売却など総合的な整備を推進
 ・空き家対策に関する民間団体等を支援、新たなビジネス創出の促進

 <成果指標>
 ・市町村の取り組みにより除却等がなされた管理不全空き家数
   9万物件(平成27年5月~令和2年3月)
   →20万物件(令和3年~12年)
 ・居住目的のない空き家数
   349万戸(平成30年)→400万戸程度におさえる(令和12年)

 目標8.居住者の利便性や豊かさを向上させる住生活産業の発展
 
 (1)地域経済を支える裾野の広い住生活産業の担い手の確保・育成

 <主な基本的な施策>
 ・省力化施工、DXを通じた生産性向上の推進
 ・新たな部材を活用した広報当や中高層住宅棟の木造技術の普及
 ・適切なマンション管理、インスペクションなどの人材の育成・活用

 (2)新技術の開発や新分野への進出等による生産性向上や海外展開の 
    環境整備を通じた住生活産業の更なる成長

 <主な基本的な施策>
 ・AIによる設計支援、ロボットを活用した施工の省力化などの促進
 ・住宅温維持管理において、センサーやドローン等の活用検証
 ・住宅生産におけるCO2削減
 ・IoTを活用した遠隔地からの住宅管理や高齢者の健康管理
 ・住生活産業が海外展開しやすい環境の整備

 <成果指標>
 ・既存住宅流通及びリフォームの市場規模(再掲)
  12兆円(平成30年)→14兆円(令和12年)→20兆円(長期的目標)

 さて、今回は住生活基本計画についてご紹介しました。
 これから、この方向性に沿った制度や施策が具体化することでしょう。

 そのため、今後の物件購入や物件管理の取り組みについては、
 住生活基本計画の方向性を意識して判断することが有効だと思われます。

 

【出典】

 ・国土交通省 住生活基本政策 https://tinyurl.com/3x8f4afd

 

この原稿は名城企画株式会社が発行する「名古屋・東海収益不動産NAVIメールマガジン」の
2021年7月26日発行分の転載です。