
2020年秋以降、世界中で半導体が不足しており、
住宅やマンションの建設にも影響を与えています。
そこで今回は、半導体不足について解説します。
様々な機器に使われている半導体
半導体とは、「電気的性質を備えた物質」のことです。
物質には電気を通す「導体」と、電気を通さない「絶縁体」があり、
「半導体」はこの「導体」と「絶縁体」の中間の性質を持っています。
材質や温度によって電気の抵抗率を変えられることから、
この性質を活用して、半導体は電気制御に用いられています。
私たちが普段使用している様々な電気製品に半導体が使われています。
例えば、スマートフォン、タブレット、パソコンなどの情報端末、
テレビ、炊飯器、冷蔵庫、洗濯機、エアコンなどの家電製品や照明器具、
自動車、給湯器やエレベータの基盤などです。
なお、「半導体」には、次のような種類があり、機能が異なります。
・ロジック半導体・・・演算・制御
・メモリー半導体・・・記憶、DRAM(短期記憶)とNAND(長期記憶)
に分かれる
・センサー半導体・・・信号などの検出、データ変換
・パワー半導体・・・・電力の制御
以下ではこれらを区別せず、まとめて「半導体」として扱います。
半導体不足の原因
半導体不足には様々な原因がありますが、4つの原因をご紹介します。
1.半導体需要の急増
もともと半導体需要は右肩上がりに増加していました。
特に中国は「世界の工場」として、
半導体を大量に輸入して、大量の電子機器を生産し
世界に輸出しています。
2021年には世界の半導体需要のおよそ34%が中国でした。
さらに近年、様々な技術革新が、半導体需要を押し上げています。
電気自動車はガソリン車の数倍の半導体を必要とします。
ドローンも半導体を使用します。
そして2020年には新型コロナウイルスの感染拡大により、
リモートワークやリモート授業が急速に増え、
パソコンの需要が急速に高まり、半導体需要が急増しました。
2.米中貿易摩擦
2017年頃から続く米中貿易摩擦の中で、
米国は中国への制裁を段階的に強化してきました。
2019年8月には、中国の通信機器大手の華為技術(ファーウェイ)を
はじめとする5社について、米国政府関連機関との取引を禁止しました。
2020年12月には、米国製品を軍事転用する恐れがある
中国とロシアの法人103社を指定し、輸入を原則禁止しました。
この指定に中国国営の半導体製造(チップ製造)大手の
中芯国際集成電路製造有限公司(SMIC)と関係会社等が含まれました。
そのためSMICの半導体輸出が減少しました。
このような動きを受けて、世界中のメーカーから
台湾や韓国の半導体製造企業に注文が殺到するようになりました。
これが半導体不足の大きな原因の1つになりました。
3.新型コロナウイルスや災害による出荷量の低下
2020年からの新型コロナウイルスの感染拡大によって、
各国でロックダウンや行動制限が実施され、
半導体工場の稼働率が低下しました。
2021年2月には米国のテキサス州の大寒波の影響で半導体工場が閉鎖し、
同じ2月には台湾の水不足のため半導体工場の生産に影響が生じました。
日本国内では、2020年10月には宮崎県延岡市で
2021年3月には茨城県ひたちなか市で、
相次いで半導体工場が火災に見舞われました。
このようにして、一時的に半導体の供給量が減少しました。
4.物流の停滞
新型コロナウイルスの感染拡大と感染収束の繰り返しを受けて、
物流の需要が急激に変化しました。
2022年2月のロシアのウクライナ侵攻が、これに追い打ちをかけています。
これにより、海外で港湾の停滞やコンテナ不足が続いています。
航空貨物も各国企業が空き便を奪い合う状況が続いています。
これにより半導体製品の出荷が遅延しました。
このような様々な要因が、現在の半導体不足の原因となっています。
これらの要因の中にはすでに事象が解消したものもありますが、
半導体不足が今後いつまで続くのか、現状では見通せません。
半導体不足による住宅への影響
半導体不足は、様々な住宅設備の供給不足をもたらしています。
住宅建設を手掛ける飯田グループは、2021年9月に
次の製品について供給不足が起きていることを発表しています。
・温水洗浄便座(シャワートイレ、ウォシュレット)
・食洗器
・コンロ
・ガス給湯器
・エコキュート
・LED 照明
特に品不足が深刻な製品の代表が「給湯器」です。
他に給湯器を代替する製品がないことも、ネックとなっています。
また、太陽光発電システムの電力変換装置も
半導体を使用しているため、供給が懸念されます。
また、エレベーターや玄関ドアの制御盤といった
マンションの共有部の設備も品薄になっています。
これらの住宅設備の不足により、
建設工事が延期になるという事態も発生しています。
まとめ
今回は「半導体」不足による住宅業界への影響をご説明しました。
これから新築物件の建築や、リフォームを検討する場合は、
工事を施工する事業者に、各種住宅設備が確保できるかどうかを
確認する必要があるでしょう。
今後も、半導体不足の動向に注意が必要です。
【参考】
・日立ハイテク 半導体の部屋
https://www.hitachi-hightech.com/jp/products/device/semiconductor/
・テレ東BIZ 中国 VS アメリカ!?米中半導体戦争を徹底解説!!
【セカイ経済】 2022年4月19日
https://www.youtube.com/watch?v=b6WrKiwXK3A
・飯田グループ 2021年9月23日
半導体不足とコロナ禍による一部国家のロックダウンによる
住宅設備品の供給不足について https://tinyurl.com/224e9zwa
・日研 Nikken→Tsunagu 2022年5月9日
半導体不足はなぜ起きたのかわかりやすく解説|
解消への動きと「2024年問題」とは
https://www.nikken-totalsourcing.jp/business/tsunagu/column/736/
・EL BORDE(野村證券) 2021年8月26日 ゲーム機や自動車などが品薄に。
深刻な「半導体不足」がなぜ世界中で起きているのか?
https://www.nomura.co.jp/el_borde/article/0003/
この原稿は名城企画株式会社が発行する「名古屋・東海収益不動産NAVIメールマガジン」の
2022年7月4日発行分の転載です。