
さて、新型コロナウイルスの感染拡大を防ぐための
外出自粛や営業自粛によって、
家賃の支払いが困難になった入居者・テナントが増えているようです。
そこで今回は、入居者・テナント向けの給付金や、
不動産オーナー向けの支援策についてご紹介します。
入居者・テナント向けの給付金
不動産オーナーにとっては、賃料の支払いが困難になった
入居者・テナントに、これらの給付金を紹介することで、
賃料が確保できるようになる可能性があります。
(1)住宅確保給金(実施中)
2015年に開始された生活困窮者に対する支援制度の一つ。
離職・廃業などを理由に生活が困窮し、住居を失う恐れの高い人に
国が一定期間、家賃相当額を支給する制度ですが、
4月20日以降は、就業している人も受給可能になりました。
本制度は入居者個人が申請しますが、
給付金は管理者・オーナーの銀行口座に直接振り込まれます。
・対象者:離職、廃業後2年以内の者
・支給期間(一部抜粋)
原則3ヶ月間(就職活動を誠実に行っている場合は3か月延長可能。
最長9か月まで)
・条件:次の個人
-入居者の責任によらず、2年以内に離職・廃業や収入減少により
経済的に困窮し住居喪失の恐れがある人
-主たる生計維持者
-地域ごとに決められた預貯金額を下回る
(名古屋市在住の場合は1人世帯で504,000円)
-地域ごとに決められた収入額を下回る
(1人世帯の場合は月額121,000円)
-求職活動を行うこと
-国の雇用施策および自治体の類似の給付金を同一世帯者が受けていない
生活保護を受けていない
・支給先:住宅の貸主(オーナー、不動産仲介業者など)
(2)家賃支援給付金(第二次補正予算の成立により決定)
6月中旬までの国会で成立を目指す第二次補正予算案の中に
テナント事業者の賃料負担を軽減するための
「家賃支援給付金」として242億円が盛り込まれています。
中堅・中小企業には、複数店舗を借りている場合、
最大で月100万円の6か月分が給付される可能性があります。
・対象:売上が昨年より1ヵ月で50%以上減少した事業者
または3か月で30%以上減少した事業者
今年1月~3月に創業した事業者も対象になる。
・給付額:中堅・中小企業は月50万円、個人事業主は月25万円を上限に
原則、賃料の3分の2を6か月間給付
複数店舗を借りている事業者には例外措置として
中堅・中小企業は月100万円、個人事業主は月50万円を上限
不動産オーナー向けの支援策
国は新型コロナウイルスの影響で賃料収入を得ることが難しくなった
不動産オーナー向けに、次のような支援策を打ち出しています。
(3)賃料減免の損金換算(実施中)
国土交通省によると、賃料の支払いが困難となった
不動産(店舗・事業所・住居・駐車場など)の借主に対し、
不動産所有者等が賃料を減免した場合、次の条件を満たす場合には、
免除した額は、税務上の損金として計上できることになりました。
・借主が新型コロナウイルス感染症に関連して収入が減少し、
賃料支払いが困難となったこと、または困難となる恐れがあること
・賃料の減額が、借主の復旧支援(営業継続や雇用確保など)を
目的としたものであり、そのことが書面などにより確認できること
・賃料の減額が、借主が通常の営業活動の再開や雇用されるための
復旧過程にある期間内になされたこと
(4)国税・地方税・社会保険料の支払い猶予(関係法令整備中)
新型コロナウイルスの影響で、国税・地方税・社会保険料を
納付することが困難な場合は、申請することで、
1年間の支払い猶予(延滞税は軽減)となります。
新型コロナウイルス感染症により借主の賃料の支払い猶予を認めた
不動産所有者は、支払い猶予が収入の減少として扱われるため、
国税・地方税・社会保険料の支払い猶予を受ける対象となる見込みです。
関係法令が成立後に実施予定です。
また、令和2年2月1日から令和3年1月31日までに納期限が来る
国税・地方税・社会保険料についても、
令和2年2月以降の任意の期間、新型コロナウイルスの影響で
収入が前年同期比20%以上減少して納付が困難になった場合は、
無担保・延滞税なく納付を1年間猶予できるようになる見込みです。
(5)固定資産税・都市計画税の軽減(関係法令整備中)
中小規模・小規模事業者の税負担を軽減するため、
2021年度の固定資産税および都市計画税を
全額または1/2に減免する制度が、将来的に可決する見通しです。
2020年5月現在の暫定的な要件は、以下の通りです。
関係法令が成立後に実施予定です。
・減免対象
-事業用家屋及び設備等の償却資産に対する固定資産税
(通常、取得額または評価額の1.4%)
-事業用家屋に対する都市計画税(通常、評価額の0.3%)
・減免率
-2020年2月~10月の任意の3か月の売上が
50%以上減少した場合は全額減免
30%~50%減少した場合は1/2減免
さて、今回は新型コロナウイルス感染拡大の影響により、
テナント・入居者の賃料支払いが困難になったことに対する、
入居者・テナント向けの給付金や、
不動産オーナー向けの支援策について
実施中または今後実施予定のものをご紹介しました。
なお、ご紹介した制度の詳細については
担当機関の窓口に問い合わせていただければと思います。
【参考】
・愛知県 住宅確保給付金について
https://www.pref.aichi.jp/soshiki/chiikifukushi/0000083363.html
・NHK 2020年5月28日
家賃支援給付金 6月下旬受け付け開始目指す 支給は7月以降か
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20200528/k10012447901000.html
・国土交通省 新型コロナウイルス感染症に係る対応について(補足その2)
令和2年4月17日 https://www.mlit.go.jp/common/001342992.pdf
・国税庁 国税における新型コロナウイルス感染拡大への対応と申告や
納税などの当面の税務上の取り扱いに関するFAQ(令和2年5月29日更新)
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/kansensho/pdf/faq.pdf
・中小企業庁 新型コロナウイルス感染症の影響で事業収入が減少している
中小企業者・小規模事業者に対して固定資産税・都市計画税の
減免を行います
https://www.chusho.meti.go.jp/zaimu/zeisei/2020/200501zeisei.html
この原稿は名城企画株式会社が発行する「名古屋・東海収益不動産NAVIメールマガジン」の
2020年6月8日発行分の転載です。