
日本では地震を避けて通れません。
東海地方でも大規模な地震の発生が懸念されています。
今回のメルマガでは、建物の耐震性についてご紹介します。
旧耐震基準と新耐震基準
住宅など建物を購入するときに確認すべきことの1つが、
「新耐震基準」と「旧耐震基準」の
どちらが適用されているのかということです。
なお、買主が買おうとする建物が旧耐震基準の場合は、
宅地建物取引業者にそのことについて説明義務が課されています。
1978年の宮城県沖地震をきっかけに建築基準法が改正され、
建物の建築確認を都道府県または市に申請した日が
1981年(昭和56年)5月31日以前なら旧耐震基準、
それより後なら新耐震基準になります。
旧耐震基準では、
「中規模の地震動(震度5強)でほとんど損傷しない」
設計が求められます。
新耐震基準では、旧基準を満たした上で、
「大規模の地震動(震度6強~7)で倒壊・崩壊しない」
設計が求められます。
木造住宅については、壁量規定の見直し、
床面積あたりの必要壁長、軸組の種類・倍率が改定されました。
ちなみに1995年に震度7を記録した阪神・淡路大震災の後、
神戸市中央区のある地域の木造住宅の被害を調査した結果、
倒壊・崩壊または大破・中波した住宅の割合は、
旧耐震基準では63.5%に対し、新耐震基準では23.1%でした。
被害が無かった住宅の割合は、
旧耐震基準では6.1%、新耐震基準では46.2%でした。
この結果は、新耐震基準の建物の耐震性の高さを示しています。
なお、1995年の阪神・淡路大震災では木造住宅の被害が
多かったことから、2000年6月にも建築基準法が改正され、
木造住宅の耐震性について、
「基礎形状」「柱頭、柱脚、筋交いの接合方法」
「耐力壁をバランス計算して配置すること」
などの仕様が明記されました。
耐震診断
これから旧耐震基準の物件を購入しようとする場合、
売主またはマンションの管理組合が「耐震診断」を
したかを確認します。
「耐震診断」を行ったかどうかは、売買契約の前に説明される
「重要事項説明書」の記載事項になっているため、
不動産仲介会社に確認することができます。
すでに旧耐震基準の建物を保有していて、耐震診断を
行っていない場合は、「耐震診断」をする必要があります。
耐震診断では、建物の強度、粘り、形状、経年状況を考慮して
耐震指標(Is値)を算出します。
この値が大きいほど耐震性が高いことを表します。
耐震改修促進法等では耐震指標が0.6に満たない建物については
耐震補強の必要性があると判断されます。
耐震診断は経費の一部について国や自治体から
補助金を受けることができます。
例えば、名古屋市では、市内の旧耐震基準の木造住宅については
無料で耐震診断を受けることができます。
木造以外の一戸建てやマンションの場合は、上限89,000円を上限に、
耐震診断費用の3分の2が補助されます。
建物の延べ床面積で計算して補助費用が決まる場合もあります。
名古屋市が指定した耐震診断員が、天井裏や床下、外壁など
建物の内外を2時間ほどかけて調査します。
耐震改修
耐震診断の結果、耐震指標が十分ではなければ、耐震改修が
必要になります。耐震改修は経費の一部について国や自治体から
補助金を受けることができます。
また所得税控除制度や融資制度もあります。
例えば名古屋市では、木造住宅の補助額は、戸建て住宅で
工事費用の2分の1(最大90万円まで)、アパートなどでも
工事費用の2分の1(最大で90万円×戸数)です。
木造でないマンションの場合は、耐震改修の設計費用の3分の2。
耐震改修工事の約15%もしくは50万円×戸数などで計算された
補助金を受けることができます。
工事費用は、建物の状態によって差がありますが、
日本建築防災協会によれば、戸建て木造住宅の場合は、
100万円から150万円未満の工事が最も多いようです。
耐震改修工事の内容としては、
マンションの場合は、壁の補強、柱の補強、ブレースの設置、
外付フレームの設置、制震ダンパーの設置、免震装置の設置、
などがあります。
戸建て住宅の場合は、基礎の補強、外壁・内壁の補強
(合板の設置など)、筋かいの設置、火打ち梁の設置、
接合金物による補強、屋根の軽量化、などがあります。
リフォームと同時に耐震改修を行う場合もあります。
「耐震基準適合証明書」の取得
マンションや戸建て住宅が耐震基準を満たしている場合は、
そのことを証明する「耐震基準適合証明書」を
取得することができます。これは国土交通省が指定した
性能評価機関や、建築士事務所登録を行っている事務所に
所属する建築士などが発行します。
証明書の発行には3万円~5万円程度の費用がかかります。
これを取得するメリットは、
通常は住宅ローン減税の対象外となる築20年以上の建物でも、
耐震基準適合証明書があれば対象になることです。
他にも、登録免許税、不動産取得税の減額、固定資産税の減額や、
地震保険の割引などのメリットがあります。
買い主にとっては「耐震基準適合証明書」付きの物件の方が
購入しやすくなります。
建物の所有者にとっては「耐震基準適合証明書」を
取得することは建物の価値を高めることになります。
さて、大地震はいつやって来るか分かりません。
耐震診断や耐震改修は早めに対策する必要があります。
そのうえで、地震保険への加入、家具の固定、災害用備蓄などの
対策も進めておき、
地震の被害を少しでも抑えることが大事になります。
【出典】
・国土交通省「住宅・建築物の耐震化に関する現状と課題」
http://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/build/taishin/jisinnbousaisuisinkaigi/jisinnsannkousiryou1.pdf
・国土交通省「住宅・建築物の耐震化について」
http://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/jutakukentiku_house_fr_000043.html
・内閣府防災担当「住宅等の耐震化の推進について」
http://www.bousai.go.jp/kohou/oshirase/h15/pdf/sankou1-1.pdf
・名古屋市「建物の耐震対策」
http://www.city.nagoya.jp/kurashi/category/15-14-9-0-0-0-0-0-0-0.html
・財団法人日本建築防災協会「木造住宅の耐震改修の費用」
http://www.kenchiku-bosai.or.jp/files/2014/05/hiyou.pdf
・日本木造住宅耐震補強事業者協同組合「耐震基準適合証明書とは」
http://www.mokutaikyo.com/taishin/certificate.html
この原稿は名城企画株式会社が発行する「名古屋・東海収益不動産NAVIメールマガジン」の
2017年11月6日発行分の転載です。