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所有者不明土地の解消に向けた制度

 土地の所有者が分からない、または所有者に連絡がつかなくなった
 土地のことを「所有者不明土地」と言います。

 「所有者不明土地問題研究会最終報告概要」によると、
 全国の所有者不明土地の面積は2016年時点で約410万haと
 推計されています。
 これは国土の約22%にあたり(平成29年度国土交通省調べ)、
 九州(367.5万ha)よりも広い面積です。

 所有者不明土地が生まれる主な原因は、
 土地の相続の際に登記の名義変更が行われない、
 または所有者が転居したときに住所変更の登記が行われない、
 ということです。

 土地の所有者が不明なままだと、次のような問題が発生します。
 ・土地や建物の管理がされず、環境や景観の悪化、治安悪化などを招く
 ・土地の土砂崩れや、建物の火災・建物倒壊などの危険を招く
 ・防災のために必要な工事が着工できない
 ・災害復興や公共事業の際に用地の買い取りができない

 このような問題を解消するために、
 令和3年4月21日に「民法等の一部を改正する法律」および
 「相続等により取得した土地所有権の国庫への帰属に関する法律」
 が成立しました。

 これらの法律は、次の内容を含んでいます。
 ・相続登記等がされるようにするための不動産登記制度の見直し
 ・土地の所有権を国庫に帰属させる制度の創設
 ・所有者不明土地の利用に関する民法のルールの見直し

 これらの制度が、令和5年4月から段階的に施行されます。
 今回のメルマガは、これらの制度うち、
 令和5年4月から適用される見直し・制度について解説します。

 

土地利用に関連する民法のルールの見直し(令和5年4月1日施行)

 ・土地・建物に特化した財産管理制度の創設
   これまでは、所有者不明または管理がされていない土地・建物を
   有効に管理するための財産管理制度がありませんでした。
   そこで、これらの土地・建物の管理に特化した財産管理制度が
   新たに設けられました。

   この制度では、所有者やその所在を知ることができない場合や、
   管理がされないことによって権利・利益が侵害される場合
   または侵害されるおそれがある場合に、
   その土地・建物の利害関係人が地方裁判所に申し立てることで、
   管理人を選任してもらえるようになります。

 ・共有制度の見直し
   共有状態にある不動産について、所在不明の共有者がいる場合は、
   その不動産の利用について共有者間の意思決定ができませんでした。
   そこで、共有物の利用や共有関係の解消をしやすくできるように
   様々な見直しがされました。

   共有物に軽微な変更を加える場合は、全員の同意は不要となり、
   持分の過半数で決定することが可能になります。

   また、所在不明の共有者がいるときは、
   他の共有者は地方裁判所に申し立て、決定を得ることで、
   残りの共有者による管理行為や変更行為が可能になります。

 ・共有関係の解消をしやすくするための仕組み
   所在不明の共有者がいる場合、他の共有者は地方裁判所に
   申し立て、その決定を得て、所在等が不明な共有者の持分を
   取得したり、その持分を含めて不動産全体を第三者に譲渡
   したりすることが可能になります。

 ・遺産分割に関する新たなルールの導入
   相続が発生してから遺産分割されないままで長期間放置されると、
   その状態で相続が繰り返され、更に多くの相続人が
   土地を共有することになり、遺産の管理・処分が
   難しくなっていきます。

   また、遺産分割がされずに長期間経過した場合、
   具体的相続分に関する証拠がなくなってしまい、
   遺産分割が更に難しくなるといった問題がありました。

   そこで、被相続人の死亡から10年を経過した後の遺産分割は、
   原則として具体的相続分を考慮せず、
   法定相続分(または遺言による指定相続分)によって
   画一的に行うことになります。

 ・相隣関係の見直し
   隣地の所有者やその所在が分からない場合は、
   隣地の所有者から隣地の利用や伸びてきた枝の切取りや、
   電気・ガス・水道を引き込むなどに同意を得ることができず、
   土地を円滑に利活用することができません。
  
   そこで、隣地を円滑・適正に使用できるように
   相隣関係に関するルールの様々な見直しがされました。

 

相続土地国庫帰属制度(令和5年4月27日施行)

 土地を相続した方が、不要な土地を手放して、
 国に引き取ってもらえる制度が創設されました。

 ・申請者
   基本的には、相続や遺贈によって土地の所有権を取得した
   相続人であれば、誰でも申請できます。
   共有地の場合は、共有者全員で申請する必要があります。
   なお、売買等によって土地を取得した方や法人は対象外です。

 ・土地を引き取ってもらう方法
   相続した土地を国に引き取ってもらうためには、
   法務大臣(窓口は法務局)の承認を得る必要があります。
   申請時に審査手数料を納付するほか、
   要件を満たし国に土地の引き取りが認められた場合は、
   10年分の土地管理費相当額を納付する必要があります。

 ・引き取ってもらえない土地
   次のような土地は引き取りの対象外となります。
    -建物、工作物、車両等がある土地
    -土壌汚染や埋設物がある土地
    -危険な崖がある土地
    -境界が明らかでない土地
    -担保権などの権利が設定されている土地
    -通路など他人による使用が予定される土地

 
 この他にも、段階的に新たな制度が施行されます。

 令和6年4月1日から施行される制度
  ・相続登記の申請の義務化
  ・相続人申告制度
  ・DV被害者等の保護のための登記事項証明書の記載事項の特例

 令和8年4月までに施行される制度
  ・所有不動産記録証明制度
  ・住所等の変更登記の申請の義務化
  ・他の公的機関との情報連携・職権による住所等の変更登記

 さて、所有者不明土地が国土の22%にあたるというのは、
 とてももったいない状況です。
 今回ご紹介したような、段階的に施行される新たな制度によって、
 所有者不明土地が減少し、不動産市場が活性化することが
 期待されます。

 

 【参考】

 ・政府広報オンライン なくそう、所有者不明土地!
  所有者不明土地の解消に向けて、
  不動産に関するルールが大きく変わります!
  https://www.gov-online.go.jp/useful/article/202203/2.html
 ・週刊住宅 2022年11月14日
 ・所有者不明土地問題研究会 最終報告概要
  https://www.cas.go.jp/jp/seisaku/shoyushafumei/dai1/siryou1-2.pdf

 

この原稿は名城企画株式会社が発行する「名古屋・東海収益不動産NAVIメールマガジン」の
2023年2月20日発行分の転載です。