
2020年頃から、新型コロナウイルスの感染拡大に端を発する
世界的な木材不足が顕著になり、「ウッドショック」と
言われるようになりました。
さらに2022年2月にロシアがウクライナを侵攻したことが、
木材不足に拍車をかけています。
今回は木材高騰(ウッドショック)について解説します。
昨今の木材不足の原因
木材輸入量が多い国の上位は、2021年では、
1位は中国、輸入額は672億1400万USドル。
2位はアメリカ、339億4300万USドル。
3位はドイツ、180億400万USドル。
4位は日本、120億9800万USドルです。
木材不足の背景となる大きな要因の1つに、
中国の急速な経済成長があります。
2010年から2019年の約10年で製材消費量は2.5倍に増加。
産業用丸太の輸入量は1.7倍に増加していました。
2020年からの新型コロナウイルスの感染拡大の影響により、
世界各国でロックダウンが行われ、林業従事者、製材工場のスタッフ、
物通事業者も稼働できなくなり、木材の生産量は大幅に低下しました。
また、コロナ禍により物流需要が急激に変化しました。
海外では港湾が停滞し、コンテナ不足となりました。
さらに、アメリカはコロナ禍で落ち込んだ経済を支えるために、
2020年から2021年まで低金利政策がとられ、
2020年以降、新築住宅の建設が急激に増えました。
2017年から2019年までは年率120万件~140万件で推移していましたが、
2021年以降は年率160万件前後で推移しています。
これらの影響を受けて、世界的に木材の供給不足に陥り、
「ウッドショック」と呼ばれるようになりました。
日本国内でも輸入材の価格が高騰しました。
日本銀行の企業物価指数(輸入物価指数)によると、
木材・木製品・林産物の輸入価格は、2021年12月には、
前年同月と比べて73%上昇しています。
代替品として国産材の需要も高まり、価格も高騰しています。
ロシアのウクライナ侵攻
木材不足にさらに拍車をかけたのが、
2022年2月からのロシアによるウクライナ侵攻です。
旧西側諸国はロシアに経済制裁を行いましたが、
これに対して、ロシアは日本を含む旧西側諸国を「非友好国」に
指定し、合板原料の単板や木材チップの輸出を禁止しました。
日本はロシア産製材の輸入量に占めるシェアは2021年で18%でした。
特に合板メーカーは原料の8割をロシア産の木材に頼っていました。
国産合板価格は、ウクライナ侵攻後は過去最高値を更新しています。
合板は木材住宅の壁や床に使用されるため、
住宅業界にとって大きな痛手となります。
住宅の柱や梁などに使う建築用木材も価格が高騰。
木材の入手が困難となり住宅の着工が遅れたり、
納期を延期せざるを得ない状況も発生しています。
今後は円安の影響もあり、輸入材価格はさらに高騰する
可能性があります。
木材価格の高騰は住宅の建設工事価格にも影響を与えます。
国土交通省の「建設工事費デフレーター」によると、
2010年から2019年にかけては年平均1.4%の値上がりを続けていました。
しかしウッドショック後の2022年は急激に上昇し、
前年比7.2%の値上がりとなりました。
木材価格の高騰はいつまで続くか
木材価格の高騰はいつまで続くのでしょうか。
アメリカは2022年に入り、インフレを抑制するため、
急速に金利を上昇させています。
この影響で、今後、アメリカの住宅着工件数が低下すると、
木材不足が若干改善する可能性もあります。
しかしながら、ロシアから日本への単材や合板の輸出が
再開する見通しは立っていません。
また、円安もこの先しばらくは続くと予想されます。
そのため、当面は木材価格が高どまりする状況が続くのでは
ないでしょうか。
【参考】
・中国における木材貿易の動向 令和3年2月
林野庁 木材貿易対策室 https://tinyurl.com/2yn3f3tz
・国土交通省 建設工事デフレーター https://tinyurl.com/yc4ncwzv
・経済産業省 どうなったウッドショック;
価格の高止まりが需要を抑制? https://tinyurl.com/y3y9vemn
・けんせつPlaza 2021年12月13日「ウッドショック」の背景と流通状況
http://www.kensetsu-plaza.com/kiji/post/37777
・MONEYIZM (VISCUS)「ウッドショック」は長期化か?
新型コロナにウクライナ情勢が追い討ち
https://www.all-senmonka.jp/moneyizm/76189/
・日本経済新聞 2022年5月21日
ロシア産禁輸、木材価格が高騰 住宅会社値上げ検討も
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUC208YO0Q2A420C2000000/
・日本経済新聞 2022年3月18日 終わらないウッドショック
今度は合板高騰のカラクリ 建設資材高騰のカラクリ(1)
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUC1442X0U2A310C2000000/
この原稿は名城企画株式会社が発行する「名古屋・東海収益不動産NAVIメールマガジン」の
2022年8月22日発行分の転載です。