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木造ビルの普及でカーボンニュートラルをめざせ

 “脱炭素社会”に向けた建設業界の取り組みの1つが、
 木造ビルの普及です。
 今回は木造ビルについて解説します。

 

脱炭素社会に向けた「カーボンニュートラル」とは?

 建築物の木造化が普及している背景には、
 地球温暖化防止に向けた動きがあります。

 地球温暖化防止に向けて世界規模で取り組むために、
 2015年に「パリ協定」が採択されました。
 これにより世界共通の次の長期目標が取り決められました。

 ・世界の平均気温上昇を産業革命以前に比べて
  2℃より十分低く保ち、1.5℃に抑える努力を追求する

 ・温室効果ガスの人為的な発生源による排出量と
  吸収源による除去量との間の均衡を達成する
  (カーボンニュートラル)

 これらの努力目標を達成するためには、
 「2050年までのカーボンニュートラル」が必要とされています。
 2021年1月時点で、世界124か国と1地域が
 「2050年までのカーボンニュートラル実現」を表明しています。
 日本も2020年10月の臨時国会の所信表明演説で、
 菅義偉元首相が「2050年カーボンニュートラル宣言」を行いました。

 カーボンニュートラルとは、
 温室効果ガスの排出量と吸収量を均衡させることです。

 

カーボンニュートラルに役立つ木材

 木材はカーボンニュートラルに役立ちます。
 木が育つ課程で数十年かけて二酸化炭素を吸収し、
 炭素をため込むことで、“炭素の貯蔵庫”の役割を果たすからです。
 木が伐採されて木材になっても炭素は木材に閉じ込められたままです。

 このような木材を建物の建築材料として用いた場合は、
 二酸化炭素を増やさないため、
 カーボンニュートラルに役立つのです。

 

建設における木材利用の促進に関する法律の改正

 日本政府はカーボンニュートラル宣言に加え、
 木材利用の更なる高まりを目指した法改正も行いました。
 「公共建築物等における木材の利用の促進に関する法律」(旧木促法)
 が2021年10月に改正され、次の法律として施行されました。
 「脱炭素社会の実現に資する等のための建築物等における
  木材の利用の促進に関する法律」(以下「改正木促法」)

 改正木促法は次のことを目指して制定されました。
 ・国産材の適切な供給及び利用の確保
 ・森林の適正な整備及び木材の自給率向上
 ・脱炭素社会の実現

 日本は国土の3分の2以上に森林を有しています。
 改正木促法によって国産材の需要が拡大することで、
 木材の供給量が増加し、森林の循環も活発になると考えられます。

 人工林の森林蓄積(使うべき森林資源)が約30億立方メートルと
 豊富にある日本ですが、その消費量は年間で約2000立方メートルと
 ごくわずかに限られています。

 森林の健康を保つためには、使うべき森林資源を利用して、
 新たな木を植える必要があります。
 ところが、日本では森林の活用が追いつかないため、
 老齢化した木が放置されている状態です。

 旧木促法も国産木材の使用を促すものでしたが、
 木造・木質化の対象が「公共建築物」に限定されていたため、
 木造建築物の普及は公共建築物が中心になっていました。

 改正木促法では、木造建築物の普及拡大を目指し、
 木造化の範囲を民間の建築物まで広げました。
 加えて、国および地方公共団体には、木造建築物に関して、
 次のような必要な措置を講じることを求めています。
  ・設計および施工に関する先進的な技術の普及促進
  ・設計および施工に関する知識や技能を有する人材の育成
  ・安全性に関する情報提供など

 

木造ビルに関する企業の取り組み

 建設会社・住宅メーカーとしても、地球温暖化対策の一貫として、
 すでに多くの企業が木造ビル建築に取り組んでいます。

 大東建託は、CLT(クロス・ラミネーティッド・ティンバー)と
 呼ばれる木材パネルを使用した集合住宅「フォルタープ」を開発。
 木材で軽量ながら、コンクリートと同様の強度があります。
 躯体は耐火被覆材で覆われ、耐火性能も備わっています。

 三井ホームは、木を構造材に使用した
 木造マンションブランド「MOCXION(モクシオン)」を始動。
 木造住宅で培った「ツーバイフォー工法」を中高層木造ビルに取り入れ、
 さらに構造性能や耐火基準などの課題をクリアするために
 「高強度耐力壁」を独自に開発しています。

 三井不動産は、東京・日本橋に高さ約70mの木造高層ビルを建築予定。
 「燃エンウッド」と呼ばれる耐火集成材や、
 耐震技術を取り入れています。
 
 住友林業は、木造と鉄骨造を併用した「木質ハイブリッドビル」
 による中大規模木造建設「MOCCA」に取り組んでいます。
 例えば東京都国分寺市に建設した7階建てのビルでは、
 1~3階は鉄骨造、4~7階は木質ハイブリッド造という構造です。
 建築の構造形式は鉄骨造とすることでコストを抑え、
 鉄骨を完全に木で覆うことで、鉄を熱から守る耐火被覆材とします。
 木の柱・梁の存在感が際立ち、木を大量に使うことができます。

 さらに住友林業は「W350計画」として、
 2041年に高さ350m・地上70階の木造ビル建設を発表しています。

 

まとめ

 温室効果ガスの削減とカーボンニュートラルの達成は
 人類共通の喫緊の課題です。
 建設会社・住宅メーカーの取り組み、そして政府の後押しもあり、
 今後は木材を多く活用したビルやマンションが
 増えていくことでしょう。

 

 【出典】

 ・環境省 「2050年カーボンニュートラルの実現に向けて」
  https://www.env.go.jp/earth/2050carbon_neutral.html
 ・資源エネルギー庁 2021年2月16日
  「カーボンニュートラル」って何ですか?(前編)(後編)
  https://tinyurl.com/4fts4hmm
  https://tinyurl.com/5ayrh9pp
 ・国土交通省 「中大規模木造建築ポータルサイト」
  https://mokuzouportal.jp/index.html
 ・Sustainable Brands 2021.11.09 「中高層ビルにCO2排出少ない
  木質化の計画広がる―木造マンションでも新ブランド」
  https://tinyurl.com/3sxmjs3b
 ・耐震工法 SE工法 大規模木造建築
  大規模木造とSDGs・脱炭素・ESG投資の相性が良い理由
  https://tinyurl.com/2e3jst82
 ・林野庁 「脱炭素社会の実現に資する等のための建築物等における
  木材の利用の促進に関する法律」
  https://www.rinya.maff.go.jp/j/riyou/koukyou/
 ・NICEビジネスレポート「木材利用促進月間特集 改正木材利用促進法
  が施行 脱炭素社会に向けて建築物への木材利用を強力に推進」
  https://www.nice.co.jp/wp/nbr/20211001_03/
 ・前田建設 木で建ててみよう 2021年10月8日
  【木材利用特別企画実施中】木促法とは?その目的と着眼点のご紹介
  https://kidetatetemiyou.com/sodateru/article66.html
 ・住友林業 MOCCA  https://sfc.jp/mocca/
 ・住友林業 W350計画 
  https://sfc.jp/information/news/2018/2018-02-08.html

 

この原稿は名城企画株式会社が発行する「名古屋・東海収益不動産NAVIメールマガジン」の
2022年6月6日発行分の転載です。