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道路陥没事故と社会インフラの老朽化

2025年1月28日午前9時40分頃に
埼玉県八潮市の県道の中央一丁目交差点で陥没事故が起こり、
トラック1台が落下しました。運転手の救出活動が開始されましたが、
穴の周囲でさらに陥没が起こり、穴の直径は40mほどに広がりました。

この事故を受けて、半径200mの約200世帯に避難勧告が出され、
周囲12市町の約120万人に下水道利用の自粛が呼びかけられました。
また、NTTの回線が断線し、光回線がおよそ1,300回線、
固定電話がおよそ400回線ほど利用できなくなりました。
二次災害防止のため、東京ガスは130戸で都市ガスの供給を停止しました。
このように、周辺の市民生活や企業活動に多大な影響がありました。

このような社会インフラを起因とする事故は
周辺の不動産価格にも影響を与えかねません。
そのため、不動産オーナー・不動産投資家は、
このような事故のリスクを認識しておく方がよいでしょう。

八潮市の陥没事故の原因

八潮市の陥没事故の原因は、下水道管が何らかの原因で破損し、
そこに土砂が流れ込んで空洞が発生したためと考えられています。
下水道管破損の原因としては、汚水に含まれるし尿や洗剤などから
硫化水素が発生し、下水道管を腐食させた可能性が指摘されています。

1983年に供用が開始されたこの下水道管は、
内径4.75mの鉄筋コンクリート製、その上に10.6mの土がかぶせられ、
その上を県道が通っていました。

下水道管の法定点検は5年に1回以上とされており、
前回の2021年の定期点検では、
補修が必要な腐食や損傷などは確認されなかったそうです。

八潮市の陥没事故のように社会インフラに起因する事故は、
日本中どの自治体でも起こる可能性があります。
それは、日本全国の社会インフラの老朽化が進んでいるためです。

老朽化が進む社会インフラ

日本全国の道路、橋、上下水道管などの社会インフラは、
高度経済成長期(1955年頃から1973年頃)に急速に整備されました。
それから50年以上が経過したため、今後は一気に老朽化が進みます。

国土交通省によると、建設後50年以上が経過する社会インフラの割合は、
2023年、2030年、2040年にかけて、次のように増えると予想されます。
2023年:道路・橋 約37%、水道管路 約9%、下水道管渠 約8%
2030年:道路・橋 約54%、水道管路 約21%、下水道管渠 約16%
2040年:道路・橋 約75%、水道管路 約41%、下水道管渠 約34%
(老朽化は、建設年度で一律に決まるわけではありませんが、
 便宜上、建設後50年で整理されています)

全国の上下水道事業の現状

全国の家庭の水の需要は1998年頃がピークと想定され、
人口減少とともに水の需要も減少しています。

2021年度の全国の上下水道の全管路延長は約74万kmですが、
法定耐用年数の40年を超えた管路の延長は約16万kmであり、
その割合(管路経年化率)は22.1%で、年々上昇しています。

2021年度の全国の管路の更新実績は4,723㎞ですが、
管路の更新率(管路延長全体に占める、更新された管路延長の割合)は
年々低下しており、2021年の更新率は全体の0.64%です。

下水道管路を原因とする道路陥没件数は、
2022年度は約2,600件で、過去十数年で減少傾向ではあります。
減少の背景には、資材の品質向上や、工事・補修・点検技術の向上
などがあると考えられます。
しかしながら、今後、耐用年数を超えた管の割合が増えると、
陥没件数が増加する可能性があります。

水道事業の収益と人員数の限界

水道事業の収益として、給水原価が供給単価を上回っている
原価割れ状態の自治体が全体の約40%に達しています。
自治体の規模が小さいほど原価割れの割合が高いですが、
大規模自治体であっても原価割れのところもあり、
水道事業で収益をあげることは難しく、財政的に厳しい状況です。

また、全国の水道事業の職員数は1980年の約75,000人がピークであり、
2020年は約47,000人と、ピーク時から37%ほど減少しています。

このように、水道事業は予算も人員も限られるため、
点検や補修を充実させることも難しい状況です。

テクノロジーによる効率化への期待

財政不足や人員不足の中で、テクノロジーを利用することによる
社会インフラの維持管理作業の効率化が期待されています。

水道事業については、全国の複数の自治体が、
人工衛星やAI、IoTを活用して、
漏水調査の効率化や水道管更新の最適化を試みています。

愛知県豊田市は、2022年に人工衛星とAIを用いて、
水道管の効率的な維持管理の検証を行いました。
人工衛星データから水の成分を分析し、優先的に漏水調査エリアを特定。
7か月の実証の結果、調査距離は2,210㎞から257㎞の1/10に削減、
調査期間は60か月から7か月へと53か月短縮しました。
(「Digi田甲子園2023」地方公共団体部門で内閣総理大臣賞を受賞)

福岡市は2023年度から人工衛星画像やAIを活用して
水道管の漏水調査の効率化を図る実証実験に取り組んでおり、
2024年5月からは調査範囲を市内全域に広げています。
2024年10月には漏水場所を絞り込むIoTセンサーの設置を開始。
収集した音圧データを解析し、リスクを3段階に判別します。
また、2023年度からAIによる水道管の劣化予測を本格導入しています。
こうした取り組みにより、福岡市の2023年度の漏水率は
政令指定都市級の大都市のなかでは最も低い2.0%を記録したそうです。

自治体の財政力を確認する

不動産オーナーや不動産投資家としては、
不動産がある地域の社会インフラにも留意したいところですが、
社会インフラの健全性を調べることは困難です。

そこで、代わりに自治体の「財政力」を確認するとよいかもしれません。
財政が豊かな自治体は、社会インフラの点検・修繕が
比較的行き届いている可能性が高いと考えられるためです。

例えば、総務省の「令和5年度地方公共団体の主要財政指標一覧」
において、市町村別の「財政力指数」を確認することができます。
財政力指数が1を超える自治体は、財政が豊かだと言えます。

【参考】

・読売新聞オンライン 2025年1月29日
 https://www.yomiuri.co.jp/national/20250129-OYT1T50061/
・読売新聞オンライン 2025年1月31日
 https://www.yomiuri.co.jp/national/20250130-OYT1T50197/
・朝日新聞デジタル 2025年1月30日
 https://www.asahi.com/articles/AST1Z2HRRT1ZOXIE019M.html
・日経xTHCH 2025年1月30日
 https://xtech.nikkei.com/atcl/nxt/column/18/00142/02150/
・国土交通省 建設後50年以上経過する社会資本の割合
 https://x.gd/fVE66
・国土交通省 令和6年度 全国水道主管課長会議 令和6年4月22日 
 https://www.mlit.go.jp/mizukokudo/watersupply/content/001741376.pdf
・国土交通省 下水道の維持管理 https://x.gd/EmBjh
・水道DX~人工衛星とAIによる水道管の健康診断~
 愛知県豊田市上下水道局 https://x.gd/ssZn8
・福岡市、人工衛星・AIで水道管の漏水発見へ 調査を効率化
 日本経済新聞 2025年1月30日  
 https://www.nikkei.com/article/DGXZQOJC18EL20Y4A211C2000000/
・総務省「令和5年度地方公共団体の主要財政指標一覧」
 https://x.gd/5KmA0