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高断熱ガラス

 今年の夏は全国的に猛暑となり、エアコンの稼働率は高くなりました。
 しかし、電気代の値上がりが企業の収益や家計を圧迫しています。

 そこで、冷暖房効率を高める方法に注目が集まっています。
 その1つが、建物の熱の流入出の大部分を占める、
 窓の断熱性能を高めることです。

 窓は、建物に流入出する熱の最大の経路となっています。
 YKK APによると、二階建て戸建住宅の場合、
 夏に住宅に流入する熱の74%が、冬に住宅から流出する熱の54%が、
 窓を経由して流入出しています。
 そのため、建物の冷暖房効率を高めるためには、
 まずは窓の断熱性能を高めることが重要です。

 経済産業省と環境省は、今年3月31日から12月末までを申請期間とした、
 「先端的窓リノベ事業」(省エネ性能の高い窓ガラスや窓枠の
 交換費用のうち上限200万円を補助する)を展開しており、
 これも窓のリフォームの需要を後押ししています。

 今回は、窓の断熱性能を高める「高断熱ガラス」について解説します。

 

高断熱ガラスの種類と構造

 高断熱ガラスには次のような種類があります。

 ・複層ガラス(ペアガラス)

  ガラス板とガラス板の間に空間を設けることで、断熱性を高めます。
  二層ガラスだけでなく三層以上のガラスの場合もあります。
  この空間に封入されるものによっても断熱性が異なります。
  断熱性が高まると、結露も防ぎます。

  ガラスとガラスの間に乾燥空気を封入する場合に比べて、
  アルゴンガスやクリプトンガスなどの不活性ガスを封入した場合は、
  熱を伝えにくくなり、断熱性が1.2倍~1.3倍高くなります。
  さらに、ガラスとガラスの間を真空にしたものは、
  より断熱性が高くなります。

 

 ・Low-Eガラス

  「Low-E」とは、Loe Emissivityのことで、放射熱が低いという意味です。
  「Low-Eガラス」とは、ガラスの表面にLow-E膜と呼ばれる特殊な金属膜
  (酸化錫や銀など)をコーティングしたガラスのことです。

  Low-E膜は主に複層ガラスに用いられ、これは「Low-E複層ガラス」と
  呼ばれます。通常の複層ガラスよりも、Low-E複層ガラスの方が
  断熱効果が高くなります。ただし、一般の複層ガラスよりも高額になります。

 
 ・2種類のLow-Eガラス

  Low-EガラスはLow-E膜の特性と、
  Low-E膜を複層ガラスの室内側と室外側のどちら設置するかによって、
  「断熱タイプ(日射取得型)」と「遮熱断熱タイプ(日射遮蔽型)」の
  2種類があります。

  「断熱タイプ(日射取得型)」は、複層ガラスの室内側のガラスに
  断熱タイプのLow-E膜を設置します。
  室内からの熱の流出を防ぎますが、日光からの輻射熱は採り入れます。
  冬の暖房効率を高めたい場合に向いています。

  「遮熱タイプ(日射遮蔽型)」は、複層ガラスの室外側のガラスに
  遮熱タイプのLow-eガラスを設置します。
  日光からの輻射熱を遮り、室内からの熱の流出も防ぎます。
  日光の輻射熱を遮ることで、冬の暖房効率を悪くしてでも、
  夏の冷房効率を高めたい場合に向いています。

 

エコガラス

 「エコガラス」は、一般社団法人 板硝子協会の会員である
 AGC、日本板硝子、セントラル硝子プロダクツの3社が製造する
 Low-E複層ガラスの共通呼称です。
 また、エコガラスの上位グレードとして「エコガラスS」があります。

 エコガラスの断熱性能は商品によって異なります。
 断熱性能を表す「熱貫流率(U値)」という指標があります。
 これは、内外の温度差を1℃とした場合に1時間当たりに、
 1平方メートルのガラスを通過する熱量のことで、単位W/m2Kで表します。

 エコガラスの熱貫流率は1.5W/m2K超~4.0W/m2K以下、
 JISの断熱性能区分はT1~T4。
 エコガラスSの熱貫流率は1.5W/m2K以下、JISの断熱性能区分はT5~T6です。

 各社、次のようなエコガラスの商品を販売しています。
 (仕様によりエコガラスの基準を満たさない場合もあります)

 ・日本板硝子
 -ペアマルチシリーズ(エコガラス)
   複層ガラスペアマルチは透過性能が高く、
   断熱性能は一枚板ガラスの約2倍。 冷暖房の負荷を軽減します。
 -トリプルマルチシリーズ(エコガラス)
   3枚のガラスを組み合わせることで、ZEH基準相当の高断熱化を
   実現した三層構造の複層ガラス。
 -スペーシアシリーズ(エコガラス、エコガラスS)
   世界初の真空ガラス。ガラスとガラスの間に真空層をつくることで、
   一枚ガラスの約4倍、 一般的な複層ガラスの約2倍の断熱性能を実現。
   結露対策にも効果を発揮。

 

 ・AGC
 -アトッチシリーズ(エコガラス)
   既存の窓ガラスにLow-Eガラスを貼り付けるだけで、
   Low-E複層ガラスと同等の性能を得ることができる後付け窓ガラス。
 -ペヤプラス(エコガラス)
   既存窓のサッシはそのまま使用し、1枚ガラスをLow-E複層ガラスに
   交換できる商品。1枚ガラス用サッシに複層ガラスを施工できるように
   アタッチメントフレームを装着。
   複層ガラスの中空層にアルゴンガスまたは乾燥空気を密封。
 -サンバランスシリーズ(エコガラス、エコガラスS)
   光を通しながら、遠赤外線を反射するLow-Eガラスを使用した複層ガラス。

 

 ・セントラル硝子プロダクツ
 -ペアレックスシリーズ(エコガラス)
   ペアレックスは、通常2枚の板ガラスをスペーサーにより一定間隔に
   保持し、周囲を封着材で密封して内部空気を常に乾燥状態に保つ
   断熱性の高いガラス。

 

樹脂サッシ

 断熱ガラスを導入する場合は、ガラスだけでなく、
 サッシも断熱性が高い樹脂サッシを用いることが望ましいです。
 アルミサッシの熱貫流率は200w/m2Kであるのに対して、
 樹脂サッシの熱貫流率は0.2w/m2Kと約1000倍の断熱性があります。

 

内窓

 既存の物件の窓ガラス・サッシの交換が難しい場合や、
 費用が高くなる場合、既存の窓はそのままにして、その内側に
 もう1枚窓ガラスを加えることで内窓を設置するという方法もあります。
 内窓は、比較的低コストで窓の断熱性能を高める方法です。

 

 さて、今回は高断熱ガラスについてご紹介しました。
 今後、「建築物省エネ法」の改正をうけて、2025年度以降は、
 全ての新築物件は省エネ基準を満たすことが求められるようになります。
 将来的に、物件の環境性能の基準は、より強化されていくと予想されます。

 そのため、建物から流入出する熱の経路の大部分を占める
 窓の断熱性能の向上は、今後、より重要になっていきます。

 

【参考】

 ・YKK AP かしこいガラス選び https://tinyurl.com/p2teyyj5
 ・一般社団法人板ガラス協会 https://www.ecoglass.jp/
 ・AGC https://www.asahiglassplaza.net/
 ・日本板硝子 https://glass-wonderland.jp/
 ・セントラル硝子プロダクツ http://www.cg-glass.jp/ecoglass/
 ・レスキューラボ 
  「断熱ガラスの交換費用価格相場!効果とメリット・デメリット」
  https://sq.jbr.co.jp/library/281
 ・窓リフォーム研究所
  「Low-Eガラス(エコガラス)とは?機能やメリットについて」
  https://shinku-glass.jp/contents/knowledge/lowe-eco/

 

この原稿は名城企画株式会社が発行する「名古屋・東海収益不動産NAVIメールマガジン」の
2023年9月19日発行分の転載です。