
日本は世界で最も高齢化率が進んでいると言われています。
高齢化率とは総人口に占める65歳以上人口の割合ですが、
2016年の高齢化率は27.3%。
国の推計では2065年に高齢化率は38.4%に達する見込みで、
約2.6人に1人が65歳以上ということになります。
一方15~64歳人口の割合は1992年の69.8%をピークに
減少傾向にあり、2016年は60.3%。
今後も、この世代の人口は減少が予想されています。
それに伴い、空き家、空き部屋が増えていくことは確実です。
このような現状を見据えれば、過剰になる一般向け住宅を
改修して高齢者向け住宅にすることは有効だと言えます。
それでは、高齢者が住みやすい住宅にするには、
どのような改修をすればよいでしょうか。
高齢者にやさしい住宅設備
高齢者が住みやすい住宅にするために必要な
改修や設備についてご紹介します。
(参考:UR都市機構の高齢者向け住宅「健康寿命サポート住宅」)
1.手すり
高齢者向けの住宅として最優先すべきポイントは
手すりの設置です。手すりは簡単に設置できますし、
ある程度活動できる高齢者なら、手すりさえあれば、
つかまって安全に移動することが可能です。
通路だけでなく、特に立ったり座ったりする必要がある
玄関、トイレ、浴室を中心に手すりを設置します。
2.扉や戸
扉や戸のドアノブは手のひらで掴んで回すタイプではなく、
握力がなくても開け閉めできるようにレバーハンドルを
採用します。扉や戸はゆっくり閉まるタイプだと、
高齢者でも出入りしやすいです。
戸はできるだけ引き戸にすることが勧められます。
引き戸は開き戸に比べて体を動かす範囲が小さく、
足腰が不自由な高齢者にも車いすでも使いやすくなります。
3.床・壁
室内の段差はできるだけ少なくします。
これは車いすの人だけでなく、歩く人にとっても有効です。
高齢者はわずかな段差でも躓きやすくなるからです。
どうしても段差が解消できない場合は、
なるべくスロープや段差を埋めるカバーを付けて
車いすや人がスムーズに通れるようにします。
壁のスイッチは通常は床から120センチの高さに付けられますが、
高齢者にも使いやすい高さは、90~100センチぐらいが理想です。
コンセントの位置も一般的には床から20~25センチぐらいですが、
高齢者には少し高めの40~45センチが負担にならない高さです。
また、スイッチは大きめのタイプが使いやすいです。
4.浴室内のヒーター
脱衣所と浴室の温度差を解消し、ヒートショックを防ぐため、
最近は浴室内のヒーターを導入するケースが増えています。
ヒートショックとは、冬場、暖房が効いた部屋と冷えた浴室、
また暖かいお湯との温度差を原因とする血圧の変化により
失神や不整脈を起こし、死亡にもつながるものです。
東京都健康長寿医療センター研究所が行った調査では、
2011年の1年間でヒートショックに関連した「入浴中急死」
の高齢者は1万4000人に上りました。
これを防ぐうえでヒーターの設置は有効です。
高齢者向けの住宅改修に補助金
高齢者向けの住宅改修を行うオーナー様には、
自治体から補助金が出る場合があります。
例えば、名古屋市では整備費の3分の2以内の補助が可能です。
今後ますます拡大する高齢者の住宅需要に対応するため、
こうした自治体の補助金も活用しながら、
高齢者向けの住宅整備が求められています。
【出典】
・平成29年版 高齢社会白書
http://www8.cao.go.jp/kourei/whitepaper/w-2017/gaiyou/pdf/1s1s.pdf
・人口推計 平成28年10月1日現在 結果の概要 総務省統計局
http://www.stat.go.jp/data/jinsui/2016np/pdf/gaiyou2.pdf
・日本経済新聞「シニアが暮らしやすい街づくりを」2012年8月27日付
http://www.nikkei.com/article/DGXDZO45422320X20C12A8PE8000/
・UR都市機構の高齢者向け住宅「健康寿命サポート住宅」
http://www.ur-net.go.jp/welfare/torikumi/kenkou.html
・東京都健康長寿医療センター研究所
「入浴時の温度管理に注意してヒートショックを防止しましょう」
http://www.tmghig.jp/J_TMIG/images/publication/pdf/heatshock.pdf
・LIFULL HOME’S PRESS【全公開、一戸建てができるまで⑥】
高齢者が住みやすい工夫あれこれ
http://www.homes.co.jp/cont/press/buy/buy_00229/
・名古屋市住宅供給公社 建設費・家賃の補助
https://www.jkk-nagoya.or.jp/toti/hozyo.html
この原稿は名城企画株式会社が発行する「名古屋・東海収益不動産NAVIメールマガジン」の
2017年12月18日発行分の転載です。