
2023年の名古屋のオフィス市況はどのように推移するでしょうか。
名古屋のオフィス市況を予測するレポートとして、
次の4つのレポートが見つかりました。
そこで今回のメルマガでは、これらの要旨をご紹介します。
1.三菱UFJ信託銀行 2022年4月11日 不動産FLASH
2.オフィスビル総合研究所 2022年12月1日
「東京都心5区・全国主要都市(2022年第3四半期)」
3.ニッセイ基礎研究所 2022年5月17日
「名古屋オフィス市場の現況と見通し(2022年)」
4.CBRE 2022年12月16日
「不動産マーケットアウトルック2023」
1.三菱UFJ信託銀行のレポート
三菱UFJ信託銀行は2022年4月11日に
「不動産FLASH」を発表しました。
https://tinyurl.com/3fwb2cc5
このレポートは、名古屋のオフィス市況を次のように予想しています。
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・名古屋では、新築ビルの供給が引き続き少ないと見込まれる。
新規需要は2019年から3年連続で減少したが、
2022年は景気の持ち直しを受けて増加に転じると予測する。
・空室率は2021年の終わりから足元にかけて高止まりしているが、
先行き緩やかな低下から横ばいで推移する見通し。
・2021年の空室率上昇を受けて2022年の賃料上昇率は
小幅になるものの、新規賃料の上昇基調は維持される見通し。
・(グラフにて表示)2022年から2025年にかけて、
新規賃料は5%程度上昇傾向、空室率は1%程度下落傾向。
—
このように、三菱UFJ信託銀行のレポートでは
2025年までにオフィス賃料は上昇傾向になると予想しています。
2.オフィスビル総合研究所のレポート
オフィスビル総合研究所は2022年12月1日に
「東京都心5区・全国主要都市(2022年第3四半期)」を発表しました。
https://www.officesoken.jp/report.html
このレポートは、名古屋市のオフィス市況を次のように予測しています。
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・空室率は2023年第3四半期は5.5%、2024年同期が5.5%、
2025年同期は5.2%と予測する。
・空室率は前期比プラス0.1ポイントの5.0%となった。
今後は供給が需要を上回り、空室率は2023年第3四半期に5.5%に
達するが、その後は5%台での小幅な動きが続く。
・募集賃料は今後3年間で6.5%上昇し、14,000円/坪台半ばまで
上昇すると予測する。
今期は前期比プラス1.3%と4期連続の上昇となったことに加え、
今後、需給バランスの大幅な軟化は見込まれないことから、
募集賃料は緩やかな上昇傾向を予想する。
今後3年間でプラス6.5%緩やかな上昇傾向を予想。
—
このように、オフィスビル総合研究所のレポートでは
今後3年間でオフィス賃料は上昇傾向になると予想しています。
3.ニッセイ基礎研究所のレポート
ニッセイ基礎研究所は2022年5月17日に
「名古屋オフィス市場の現況と見通し(2022年)」を発表しました。
https://www.nli-research.co.jp/report/detail/id=71109
このレポートは、名古屋のオフィス市況を次のように予想しています。
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・名古屋市では、人口の流入超過の勢いは鈍化している。
コロナ禍が東海地方の「企業の経営環境」と「雇用環境」に
与えたダメージが残り、本格的な回復に至っていない。
また、「在宅勤務」を取り入れた働き方が定着し、
ワークプレイスの見直しが進んでいる。
リニア中央新幹線の開業時期および開業を見据えた再開発の
進捗にも先行き不透明感が増している。
以上を鑑みると、名古屋のオフィス需要は当面弱含み、
空室率は緩やかに上昇する見込みである
・名古屋のオフィス成約賃料は、空室率の上昇に伴い、
下落基調で推移すると予想する。
2021年の賃料を100とした場合、2022年は「98」、
2026年には「90」へと下落する見通しである。
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このように、ニッセイ基礎研究所のレポートでは
2026年頃までオフィス賃料の下落傾向になると予想しています。
4.CBREのレポート
世界的な不動産サービス会社のCBREは2022年12月16日に
「不動産マーケットアウトルック2023」を発表しました。
https://tinyurl.com/4a9mwfkr
このレポートは、名古屋のオフィス市況を次のように予測しています。
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・2022年後半はやや大型の引き合いが増加したが、
2022年に入っても、テナントのコスト意識は依然高い状況が続いた。
・市場全体では需給緩和が進んでいる。2022年Q3の
空室率は対前年同期比+2.0ポイントの5.8%となった。
・2023年はオールグレードで過去年間平均より3割多い約2万坪の
供給が予定されており、当面、空室率は上昇基調が続くとみられる。
・足元では、グレードAをはじめとする高額賃料帯のビルで賃料を
引き下げる動きが増えている。
(グレードAは東京・大阪・名古屋の都心における
貸室総面積6,500坪以上、延床面積10,000坪以上のオフィスビル)
グレードAは2023年上期まで供給がないが
2023年Q3と2024年Q1には1棟ずつ、計1.8万坪の新規供給が控える。
グレードAの空室率は再び上昇し、2024年Q4には8.5%を予想する。
・需給緩和により高額帯のビルを中心に賃料調整が進む一方、
グレードBは、2023年から2025年にかけて1.4万坪の新規供給が
控えており、競争力の低いビルでは二次空室の発生も想定される。
(グレードBは東京23区、大阪・名古屋のオフィスエリアに
おける延床面積2,000坪以上でグレードAを除くオフィスビル)
足元でグレードBの需要は底堅く、今後もこの傾向は続くとみられる。
このため、2024年Q4の空室率は6.6%と予想。
2025年下期には新規供給は一服し、
その後はいずれのグレードも空室率は低下する見通し。
・今後も高額賃料帯のビルを中心に
需給の緩和による賃料調整が進むとみられる。
2025年Q4の空室率は
グレードAで対2022年Q3比-2.0ポイントの6.5%、
グレードBで同+0.6ポイントの5.7%を予想。
2025年Q4のグレードAの想定成約賃料は
対2022年Q3比-11.4%の23,750円/坪を予想。
グレードBの想定成約賃料は同-3.8%の13,750円/坪を予想。
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このように、CBREのレポートでは当面は空室率が上昇傾向で、
2025年まで賃料が下落傾向になると予想しています。
以上のように、名古屋の2025年頃までのオフィス賃料については、
上昇傾向と下落傾向の両方の予想がなされています。
三菱UFJ信託銀行とオフィスビル総合研究所は上昇傾向を予想しており、
ニッセイ基礎研究所とCBREは下落傾向を予想しています。
今後の名古屋のオフィス市況の予測を難しくしている要素
オフィス市場には、世界的な景気や、金利動向など
マクロ経済的な要素も影響を与えますが、
さらに名古屋のオフィス市況の予想を難しくしている要素として、
「働き方の変化」と「リニア新幹線開業の遅延」の2つが
あるのではないでしょうか。
・働き方の変化
新型コロナウイルスの感染拡大の影響を受けて、
リモートワークが普及し、オフィス需要が減退しました。
オフィス面積を縮小した企業も少なくありません。
今後、アフターコロナになったときに、
多くの企業でどのような働き方が一般的となり、
オフィス需要がどのように変化するでしょうか。
これには、東京と名古屋、あるいは他の地方との
地域性の違いも生じるかもしれません。
・リニア新幹線開業の遅延
リニア新幹線の開通を見越して、名古屋駅周辺では、
新駅の工事や、周辺の再開発工事が着工しています。
しかし、リニア新幹線は静岡県の反対により
静岡県区間の工事が着工できないため、
当初予定されていた2027年の開業が絶望的になりました。
リニア新幹線開業の遅れは、名古屋のオフィスの空室率や賃料、
さらには今後の不動産投資にも影響を与える可能性があります。
このように、名古屋のオフィス市況には不透明な要素もありますが、
2023年は、企業活動や不動産投資の活性化により、
名古屋のオフィス市場が上向きになることを期待します。
【出典】
・三菱UFJ信託銀行「不動産FLASH」2022年4月11日
https://tinyurl.com/3fwb2cc5
・ニッセイ基礎研究所「名古屋オフィス市場」の現況と見通し(2022年)
2022年5月17日 https://tinyurl.com/2p8xm66e
・オフィスビル総合研究所
「東京都心5区・全国主要都市(2022年第3四半期)」2022年12月1日
https://www.officesoken.jp/report.html
・CBRE「不動産マーケットアウトルック2023」2022年12月16日
https://tinyurl.com/4a9mwfkr
この原稿は名城企画株式会社が発行する「名古屋・東海収益不動産NAVIメールマガジン」の
2023年1月30日発行分の転載です。