
「不動産テック」とは、不動産とTechnology(技術)を
かけあわせた造語です。
IT技術を不動産分野に応用した新しい技術やサービスの総称です。
テクノロジーの力によって、不動産に関わる業界課題を解決したり、
従来の商習慣を進化させたりすることが期待されています。
昨年のメルマガ第75号(2020年4月13日)でも
「不動産テック」を取り上げ、
東海地域発の不動産テックをご紹介しました。
2020年から2021年にかけて続いたコロナ禍は、
不動産テック市場にどのような影響を与えたでしょうか。
今回は不動産テック市場の動向を見てみます。
不動産テック協会の「不動産テック カオスマップ」
一般社団法人不動産テック協会は、主な不動産テックの
サービスを12分野に分類した
「不動産テック カオスマップ」を公開しています。
このカオスマップは毎年更新されており、
最新版は2021年7月8日版が公開されています。
https://retechjapan.org/img/chaos_map_20210708.pdf
このカオスマップに掲載されているサービスや分類は、
あくまでも不動産テック協会の見解ではありますが、
不動産テック市場を把握するには便利です。
そこで、昨年の2020年6月15日版と
今年の2021年7月8日版のカオスマップを比べることで、
不動産テック市場の動向を読み取ってみます。
掲載サービス数の増加(全体)
掲載サービス数は、
2020年の352から2021年は446と1.26倍に増えました。
2019年(305)から2020年の増加割合は1.15倍だったため、
不動産テックの新サービスが生まれるスピードは
高まっているようです。
掲載サービス数の増加(分野別)
掲載サービスの増加割合が最も高い分野は、
【不動産情報】です。
これには物件情報以外の、不動産に関連するデータを
提供・分析するサービスが分類されます。
掲載サービス数は昨年の10から今年は16と1.6倍に増えました。
この分野の成長については、コロナ禍に直結する要素は
乏しいですが、AIやビッグデータの技術を不動産情報に応用する
動きが活発になったことが要因だと考えられます。
【不動産情報】分野に今年新たに加わったのは
次のようなサービスです。
・不動産調査や不動産ビッグデータを提供する「Trustart」
・地価・土地価格、路線価、固定資産税、固定資産税評価額を
調べたり計算できるサービスの「トチノカチ」
・国土交通省が主導する、日本全国の3D都市モデルの
整備・オープンデータ化プロジェクト「PLATEAU」
ほか
2番目に掲載サービスの増加割合が高い分野は、
【AR・VR】(拡張現実・仮想現実)です。
これにはAR・VR機器を活用したサービスや
AR・VR化するためのデータ加工サービスが分類されます。
掲載サービス数は昨年の20から今年は31と、1.55倍に増えました。
この分野の成長は、コロナ禍のため、オンラインでの非接触接客や、
オンラインでの物件内覧の需要が増えたからだと考えられます。
【AR・VR】分野に今年新たに加わったのは
次のようなサービスです。
・リモート接客の「TimeRep」
・バーチャル内覧作成アプリの「NodalView」
・AIを活用した不動産検索アプリ「いえみーる」
ほか
3番目に掲載サービスの増加割合が高い分野は、
【業務管理支援】です。
不動産管理会社の業務効率化のための支援サービスが
分類されます。
掲載サービス数は昨年の60から今年は85と1.41倍に増えました。
もとより、クラウドやRPAの普及により
業務効率化が進んでいましたが、
コロナ禍により緊急事態宣言が相次いたため、
不動産会社も業務形態の見直しを迫られ、
業務効率化の要請が高まったことも要因になったと考えられます。
【業務管理支援】の分野に今年新たに加わったのは
次のようなサービスです。
・不動産関連業務の自動化システム「RPAくん」
・顧客情報と対応履歴を一元管理して活用する「カイクラ」
・クラウド型賃貸管理システムの「カクシンクラウド」
ほか
上記の3つの分野の他に、
不動産テックカオスマップには次の分野があります。
2020年版から2021年版のサービス掲載数と増加率とを合わせて、
増加率が高い順にご紹介します。
【スペースシェアリング】(昨年26→今年36、1.38倍増加)
短期~中長期で不動産や空きスペースをシェアするサービス、
もしくはそのマッチングをするサービス
【価格可視化・査定】(昨年20→今年26、1.3倍増加)
さまざまなデータ等を用いて、不動産価格、賃料の査定、
その将来見通しなどを分析するサービス、ツール
【ローン・保証】(昨年10→今年13、1.3倍増加)
不動産取得に関するローン、保証サービスを
提供、仲介、比較をしているサービス
【仲介業務支援】(昨年47→今年59、1.25倍増加)
不動産売買・賃貸の仲介業務の支援サービス、ツール
【クラウドファンディング】(昨年19→今年23、1.21倍増加)
個人を中心とした複数投資者から、Webプラットフォームで
資金を集め、不動産へ投融資を行う、もしくは不動産事業を
目的とした資金需要者と提供者をマッチングさせるサービス
【物件情報・メディア】(昨年43→今年52、1.20倍増加)
物件情報を集約して掲載するサービスやプラットフォーム、
もしくは不動産に関連するメディア全般
【マッチング】(昨年39→今年44、1.12倍増加)
物件所有者と利用者、労働力と業務などをマッチングさせる
サービス(シェアリング、リフォームリノベーション関連は除く)
【IoT】(昨年32→今年35、1.09倍増加)
ネットワークに接続される何らかのデバイスで、
不動産に設置、内蔵されるもの。また、その機器から得られた
データ等を分析するサービス
【リフォーム・リノベーション】(昨年24→今年26、1.08倍増加)
リフォーム・リノベーションの企画設計施工、
Webプラットフォーム上でリフォーム業者の
マッチングをするサービス
さて、不動産テック市場の中でも、
2020年から2021年にかけては、コロナ禍の影響により、
オンライン接客・内覧の需要が伸び、AR・VR分野が急成長しました。
また、不動産業界の業務形態の見直しが迫られたことから、
業務効率化の分野も急成長しました。
さらに、コロナ禍に関わらず、AIやビッグデータを応用する
不動産情報の分野が大きく成長しました。
不動産テックは、今後の不動産市場を大きく変える可能性があるため、
今後もその動向から目が離せません。
【参考】
・一般社団法人不動産テック協会 カオスマップ
https://retechjapan.org/retech-map/
この原稿は名城企画株式会社が発行する「名古屋・東海収益不動産NAVIメールマガジン」の
2021年12月6日発行分の転載です。