
辻堂駅(神奈川県藤沢市)
2022年1月28日に総務省が
「住民基本台帳人口移動報告2021年結果」を発表しました。
2021年は、前年に続くコロナ禍でリモートワークが
推奨されたことから、
東京特別区で1996年以来26年ぶりに転出超過となりました(※)。
(※)1996年~2013年の人口移動報告は日本人に限られ、
外国人は含まない。
人口移動は地価に影響を与える要素です。
今回はこの結果についてご紹介します。
都道府県別の転入超過・転出超過
2021年で転入者から転出者を差し引いた
転入超過数が多い都道府県は、次の通りです。
1.神奈川県 31,844人
2.埼玉県 27,807人
3.千葉県 16,615人
4.福岡県 5,792人
5.大阪府 5,622人
6.東京都 5,433人
転出超過数が多い都道府県は次の通りです。
(転出超過のため「-」で表します)
1.広島県 -7,159人
2.福島県 -6,116人
3.長崎県 -5,899人
4.新潟県 -5,774人
5.兵庫県 -5,344人
2020年と2021年を比べた対前年の増加数が多い
上位の都道府県は次の通りです。
(都道府県 2020年 → 2021年 増加)
1.茨城県 -2,744人 → 2,029人 +4,773人
2.愛知県 -7,296人 → -2,742人 +4,549人
3.埼玉県 24,271人 → 27,807人 +3,536人
4.熊本県 -3,393人 → -650人 +2,743人
5.千葉県 14,273人 → 16,615人 +2,342人
2020年と2021年を比べた対前年の減少数が多い
上位の都道府県は次の通りです。
(都道府県 2020年 → 2021年 減少)
1.東京都 31,125人 → 5,433人 -25,692人
2.大阪府 13,356人 → 5,622人 -7,734人
3.沖縄県 1,685人 → -207人 -1,892人
4.広島県 -5,270人 → -7,159人 -1,889人
5.福岡県 6,782人 → 5,792人 -990人
転入超過の都道府県のうち、
2021年に前年より転入増加数が増えたのは
埼玉県、千葉県、神奈川県、滋賀県でした。
転出超過から転入増加に転じたのは茨城県、群馬県、山梨県。
転入超過数が前年より縮小したのは、
東京都、大阪府、福岡県でした。
転出超過の都道府県のうち、
2021年に前年より転出超過数が拡大したのは、
北海道、宮城県、秋田県、新潟県、福井県、鳥取県、
広島県、香川県でした。
転入超過から転出超過に転じたのは沖縄県でした。
それ以外の27県では転出超過数が縮小しました。
東京圏の状況
(ここでは「住民基本台帳人口移動報告2021年結果」に基づき
「東京圏」は東京都、埼玉県、千葉県、神奈川県を指します。)
東京圏は1996年以来、26年連続で転入超過が続いており(※)、
2021年は81,699人の転入超過でした。
前年から17,544人減少し、2年連続の転入超過数の減少となりました。
東京都の転入超過は過去最低だった2020年の31,125人を
更新して5,433人でした。
東京特別区は1996年以来26年ぶりの転出超過となりました(※)。
東京圏の都県・政令指定都市の転入超過数・転出超過数は
次の通りです(「-」は転出超過)。
東京都 5,433人
埼玉県 27,807人
千葉県 16,615人
神奈川県 31,844人
東京都特別区(23区)-14,828人
(東京都多摩地区(23区以外)20,261人)
さいたま市 10,527人
千葉市 5,920人
横浜市 10,123人
川崎市 2,768人
相模原市 3,837人
この結果から、東京特別区(23区)から
主に多摩地区や3県に人口が流出していることが読み取れます。
大阪圏の状況
(ここでは「住民基本台帳人口移動報告2021年結果」に基づき
「大阪圏」は大阪府、京都府、奈良県、兵庫県を指します)
大阪圏は9年連続で転出超過となり、
2021年は-4,912人の転出超過で、
前年の-118人よりも転出超過数が増加しました。
大阪圏の府県・政令指定都市の転入超過数・転出超過数は
次の通りです(「-」は転出超過)。
大阪府 5,622人
京都府 -3,874人
奈良県 -1,316人
兵庫県 -5,344人
大阪市 7,893人
堺市 -932人
京都市 -2,600人
神戸市 74人
東京圏とは状況が異なり、中心の大阪市は転入超過であり、
周辺の県が転出超過となっています。
名古屋圏の状況
(ここでは「住民基本台帳人口移動報告2021年結果」に基づき
「名古屋圏」は愛知県・岐阜県・三重県を指します)
名古屋圏は9年連続で転出超過で、
2021年は-10,914人の転出超過となり、
前年の-17,387人よりも転出超過数が減少しました。
名古屋圏の県・政令指定都市の転入超過数・転出超過数は
次の通りです(「-」は転出超過)。
愛知県 -2,747人
岐阜県 -5,127人
三重県 -3,040人
名古屋市 1,302人
名古屋圏も大阪圏と同様、名古屋市は転入超過であり、
周辺の県が転出超過となっています。
全国の市の状況
全国で転入超過数が多い上位の市は次の通りです。
1.さいたま市 10,527人
2.横浜市 10,123人
3.札幌市 9,711人
4.大阪市 7,893人
5.福岡市 7,158人
6.千葉市 5,920人
7.つくば市 4,643人
8.藤沢市 4,554人
9.流山市 3,889人
10.相模原市 3,837人
札幌市、大阪市、福岡市など地方の大都市と、
東京圏郊外の都市が上位となっています。
全国の政令指定都市で転出超過となった市は次の通りです。
・東京特別区 -4,287人
・新潟市 -523人
・浜松市 -268人
・京都市 -2,600人
・堺市 -932人
・岡山市 -1,294人
・広島市 -2,632人
・北九州市 -1,820人
京都市、堺市は大阪市に人口流入する割合が高く、
北九州市は福岡市に人口流入する割合が高いため、
それぞれ転出超過になっていると考えられます。
その他は、地方の政令指定都市で転出超過が目立ちます。
まとめ
2021年は前年に続くコロナ禍を受けて、
リモートワークが推奨されたことから、
東京特別区で初めて転出超過となり、
その人口は主に東京多摩地区や周辺3県に吸収されているようです。
ただ、今後、コロナ禍が収まったときには、
「都心回帰」が起こる可能性も否定できません。
一方、大阪圏や名古屋圏では、
圏域としては9年連続で転出超過が続いていますが、
都心部の大阪市や名古屋市は引き続き転入超過です。
今回の人口移動報告の結果から、
転入超過が鈍化したとはいえ、人口を集め続けている東京圏と、
大阪市や名古屋市など引き続き転入超過が続く大都市は、
今後の不動産の需要も底堅いと言えます。
【出典】
・住民基本台帳人口移動報告 2021年(令和3年)結果
http://www.stat.go.jp/data/idou/2021np/jissu/youyaku/index.html
この原稿は名城企画株式会社が発行する「名古屋・東海収益不動産NAVIメールマガジン」の
2022年2月21日発行分の転載です。