
福岡市天神
国土交通省は9月29日に令和2年の都道府県の基準地価
(令和2年7月1日現在)を発表しました。
これは新型コロナウイルス感染拡大の影響を織り込んだ
初めての大規模地価調査となります。
今回のメルマガでは全国の状況を解説します。
なお、次号のメルマガでは東海三県の状況を解説します。
全国の傾向
近年の国内の地価は、都市部を中心に上昇基調にありましたが、
新型コロナウイルスの感染拡大により、
全国的に訪日観光客の需要が消失し、
また外出自粛の影響によってホテルや飲食店も打撃を受け、
商業地を中心に下落傾向にあります。
住宅地も、商業地の下落の影響を受けて下落しました。
在宅勤務の影響で住みやすい郊外に移住する動きもあるとはいえ、
地価上昇に影響を与えるほどの規模にはなっていないようです。
三大都市圏の商業地は昨年の5.2%上昇から、今年は一転して0.3%の下落。
住宅地は昨年0.1%の下落から今年は0.7%の下落と下落幅を広げました。
全 国 商業地0.3%下落(昨年1.7%上昇)
住宅地0.7%下落(昨年0.1%下落)
三大都市圏 商業地0.3%下落(昨年5.2%上昇)
住宅地0.7%下落(昨年0.1%下落)
東京圏 商業地 1.0%上昇(昨年4.9%上昇)
住宅地 0.2%下落(昨年1.1%上昇)
大阪圏 商業地 1.2%上昇(昨年6.8%上昇)
住宅地 0.4%下落(昨年0.3%上昇)
名古屋圏 商業地 1.1%下落(昨年3.8%上昇)
住宅地 0.7%下落(昨年1.0%上昇)
地方圏 商業地 0.6%下落(昨年0.3%上昇)
住宅地 0.9%下落(昨年0.5%下落)
東京圏
<商業地>
東京圏は0.1%上昇(昨年4.9%上昇)と
8年連続で上昇したものの、上昇幅は減速しました。
東京都では、23区は昨年は全ての区で5%以上上昇しましたが、
今年は全ての区で上昇率が5%未満でした。
多摩地域では武蔵野市、三鷹市、府中市、調布市、
小金井市、稲城市、西東京市で上昇幅が縮小。
他は横ばいまたは下落しました。
埼玉県では、さいたま市は1.7%上昇(昨年4.5%上昇)。
川口市、蕨市、戸田市、蓮田市では上昇が続いたものの、
他の23市町では下落となりました。
千葉県では、千葉市は2.3%上昇(昨年3.6%上昇)。
東京都近隣の市や木更津市、市原市、袖ケ浦市、成田市で
上昇幅が下落。他は横ばいまたは下落となりました。
神奈川県では、横浜市は0.9%上昇(昨年3.8%上昇)。
川崎市では1.1%上昇(昨年4.8%上昇)。
相模原市では0.8%下落(昨年1.4%上昇)。
その他の自治体では下落または横ばいとなりました。
<住宅地>
東京圏は0.2%下落(昨年1.1%上昇)と7年ぶりの
下落となりました。
東京23区は1.4上昇(昨年4.6%上昇)と減速しました。
昨年は23区全てで上昇、13の区で5%以上上昇しましたが、
今年は23区および多摩地域で5%以上上昇した区はありません。
多摩地域では13の市が下落しました。
埼玉県では、さいたま市では0.3%上昇(昨年1.9%上昇)。
東京都に隣接する地域では上昇が続いている市もありますが、
多くの自治体で下落しました。
千葉県では、千葉市では0.2%上昇(昨年0.8%上昇)。
東京都に隣接する市や木更津市、市原市、君津市、袖ケ浦市、
成田市では上昇幅が縮小、他は下落しました。
神奈川県では、横浜市は0.4%下落(昨年1.1%上昇)。
川崎市では0.1%下落(昨年1.7%上昇)。
相模原市では0.1%下落(昨年1.0%上昇)。
その他は横ばいまたは下落となりました。
大阪圏
<商業地>
大阪圏は1.2%上昇(昨年6.8%上昇)で8年連続の上昇ですが、
減速しました。
大阪府では、大阪市は市中心部のオフィス需要が下支えしましたが、
ミナミなど飲食店やホテルが多いエリアは下落。
堺市は1.2%上昇(昨年5.9%上昇)。
東大阪では多くの市で上昇幅が縮小または横ばい、
南大阪では多くが横ばいまたは下落となりました。
京都市は1.4%上昇(昨年11.5%上昇)で昨年から大きく減速。
神戸市は1.3%上昇(昨年5.5%上昇)で昨年から減速しました。
<住宅地>
大阪圏は0.4%下落(昨年0.3%上昇)で7年ぶりに下落に転じました。
大阪府では、大阪市は0.3%上昇(昨年1.0%上昇)。
堺市は0.4%上昇(昨年1.6%上昇)。
東大阪や南大阪で下落した市町村が多いです。
京都市は0.1%上昇(昨年2.0%上昇)。
京都市周辺の多くの都市で上昇から下落に転じました。
神戸市は0.2%上昇(昨年0.7%上昇)。
神戸市周辺の市では上昇幅が縮小、または下落に転じました。
名古屋圏
<商業地>
名古屋圏では8年ぶりに1.1%下落。
名古屋市は1.5%下落し、千種区と東区を除く14区で下落。
名古屋駅周辺、伏見、丸の内、金山などでは
オフィス、店舗、ホテル、マンション需要が堅調ですが、
新型コロナウイルスの影響により投資需要が停滞し、
中区1.4%下落(昨年17.4%上昇)、中村区2.3%下落(昨年13.7%上昇)、
熱田区2.1%下落(昨年12.4%上昇)と、上昇から下落に転じました。
四日市市は0.2%上昇(昨年1.0%上昇)。
桑名市は0.1%上昇(昨年0.5%上昇)と上昇幅が縮小しています。
<住宅地>
名古屋圏は0.7%下落(昨年1.0%上昇)、
名古屋市は0.8%下落(昨年2.1%上昇)しました。
名古屋市中心部ではマンション用地需要が停滞し、
中区で0.0%(昨年25.4%上昇)、東区で0.9%上昇(昨年3.0%上昇)。
西三河および尾張東部では上昇から下落に転じた市町が見られます。
刈谷市では上昇が続いていますが、上昇幅が縮小。
知多および尾張西部では湾岸エリアを中心に下落が続いています。
地方圏
地方圏は下落した地点が昨年より1000以上増加しました。
地方の政令指定都市では、昨年に続いて、
次の4都市が上昇を保ちました。
札幌市 商業地6.6%上昇(昨年11.0%上昇)
住宅地6.1%上昇(昨年6.1%上昇)
仙台市 商業地6.9%上昇(昨年10.5%上昇)
住宅地3.7%上昇(昨年6.0%上昇)
広島市 商業地2.8%上昇(昨年5.7%上昇)
住宅地0.8%上昇(昨年2.2%上昇)
福岡市 商業地7.5%上昇(昨年12.8%上昇)
住宅地3.5%上昇(昨年5.3%上昇)
札幌市の商業地は札幌駅周辺のオフィス街の需要が旺盛で、
北海道新幹線の札幌駅乗り入れに向けた再開発への期待があります。
住宅街は鉄道駅徒歩圏の利便性が高い地域の需要が堅調です。
仙台市の商業地は店舗、オフィス、マンション用地の需要が堅調です。
仙台駅周辺は助成制度や容積率緩和により再開発が盛んです。
住宅地も鉄道駅徒歩圏を中心に需要が堅調です。
広島市の商業地は容積率緩和および都市再生緊急整備地域指定により
再開発期待が高く、オフィス・店舗需要が堅調です。
住宅地は住環境が良好な平たん地や利便性の高い地域で需要が堅調です。
福岡市の商業地は天神・博多地区の規制緩和による
ビル建て替えを誘導した「天神ビッグバン」や、地下鉄七隈線延伸、
博多駅の活性化を図る「博多コネクティッド」により
オフィス・店舗の需要が高まっています。
住宅地は人口増加を背景に、都心部へのアクセスがよい地域の
需要が高まっています。
全国で上昇幅が大きかった地点
全国の商業地と住宅地で上昇幅が大きかったのは次の地点です。
<商業地の上昇率上位地点>
1位 沖縄県宮古島市平良字西里根間246番・・・38.9%
2位 沖縄県那覇市前島2丁目11番15・・・34.8%
3位 北海道蛭田郡倶知安町北1条西2丁目18番・・・32.0%
4位 長野県北安曇郡白馬村大字北城字新田3020番837外1筆
・・・30.3%
5位 沖縄県宮古島市平良字西里出口556番・・・30.2%
<住宅地の上昇率上位地点>
1位 沖縄県宮古島市城辺字保良村内507番・・・37.3%
2位 沖縄県糸満市西崎町3丁目279番・・・37.3%
3位 北海道蛭田郡倶知安町字樺山65番132外・・・29.2%
4位 沖縄県宮古島平良字西里アラバ1537番3・・・19.8%
5位 沖縄県豊見城市宜保2丁目2番16号外・・・17.2%
上昇率が高い地点はいずれもリゾート地です。
沖縄県宮古島市は観光客の増加によるホテル等観光関連施設や、
自衛隊基地をはじめとする公共施設の整備などにより
ホテル従業員や建設作業員等が増加しており、
それらに向け店舗やビジネスホテル、住宅の需要が増加しています。
北海道蛭田郡倶知安町はこれまでに続き外資による
投資需要が底堅く、
新型コロナウイルスの影響で上げ幅は縮小しているものの、
北海道新幹線の札幌までの延伸への期待もあり、
上昇しているようです。
長野県北安曇郡白馬村も外資による不動産需要が堅調で
地価が上昇しているようです。
沖縄県豊見城市は国道の拡幅により那覇市街・那覇空港への
アクセス向上が期待され、物流施設需要が旺盛です。
さて、新型コロナウイルスの影響により、
全国的に地価が下落傾向にあります。
その中でも、再開発需要が旺盛な地方の政令市や、
リゾート地をはじめとして、地価上昇が続いている地域もあります。
新型コロナウイルスの影響がいつまで続くのか見通せませんが、
不動産投資においては、需要が底堅い地域を見極めることが
ますます重要になったと言えます。
次回は東海地方の基準地価の状況を解説します。
【出典】
・土地・建設産業:令和2年都道府県地価調査 – 国土交通省
https://www.mlit.go.jp/totikensangyo/totikensangyo_fr4_000431.html
・中日新聞 2020年9月30日
・日本経済新聞 2020年9月30日
この原稿は名城企画株式会社が発行する「名古屋・東海収益不動産NAVIメールマガジン」の
2020年11月9日発行分の転載です。