
横浜市 みなとみらい地区
2021年9月21日に、国土交通省が2021年7月1日時点の
都道府県地価(基準地価)を発表しました。
これについて、商業地と住宅地の動向を中心に解説します。
今回のメルマガでは、令和3年の基準地価(全国編)を解説し、
次回のメルマガでは、令和3年の基準地価(東海三県編)を解説します。
全国的な動向
全国では、コロナ禍の影響を受け、
商業地が0.5%下落と昨年から下落率を広げる一方、
住宅地は0.5%下落と昨年から下落率がやや縮小しました。
三大都市圏全体では、商業地の下落率がわずかに拡大し、
住宅地の下落率がわずかに縮小しました。
東京圏は商業地が上昇し、
住宅地が昨年の下落から上昇に転じました。
大阪圏は商業地が下落に転じ、住宅地は下落率が縮小しました。
名古屋圏は商業地・住宅地とも昨年の下落から上昇に転じました。
地方圏は引き続き下落が続いています。
全 国 商業地0.5%下落(昨年0.3%下落)
住宅地0.5%下落(昨年0.7%下落)
三大都市圏 商業地0.1%上昇(昨年0.7%上昇)
住宅地0.0%(昨年0.3%下落)
東京圏 商業地 0.1%上昇(昨年1.0%上昇)
住宅地 0.1%上昇(昨年0.2%下落)
大阪圏 商業地 0.6%下落(昨年1.2%上昇)
住宅地 0.3%下落(昨年0.4%下落)
名古屋圏 商業地 1.0%上昇(昨年1.1%下落)
住宅地 0.3%上昇(昨年0.7%下落)
地方圏 商業地 0.7%下落(昨年0.6%下落)
住宅地 0.7%下落(昨年0.9%下落)
東京圏
<商業地>
東京圏全体は 0.1%上昇(昨年1.0%上昇)。
東京23区は0.3%下落(昨年1.8%上昇)と下落に転じました。
中央区、新宿区、千代田区と都心の区が下落。
杉並区、中野区、墨田区、江東区など
住宅地が多い区では上昇しました。
インバウンドの急減で店舗やホテル需要が低迷したため、
繁華街のある地域で下落率が大きいです。
多摩地区は0.0%(昨年0.3%下落)です。
埼玉県では、さいたま市は0.1%下落(昨年1.7%上昇)。
戸田市、川口市、和光市などは上昇しましたが、
多くの市町は下落しました。
千葉県では、千葉市は0.5%上昇(昨年2.3%上昇)。
東京都に近い、市川市、船橋市、松戸市、習志野市では
上昇が続きました。
浦安市はホテル需要の減退から8年ぶりに下落に転じました。
成田市もホテル・店舗需要の減退により7年ぶりに下落しました。
木更津市、袖ヶ浦市では上昇率が縮小しました。
神奈川県は、横浜市は1.8%上昇(昨年0.9%上昇)。
オフィス需要が堅調で周辺で再開発が進む横浜駅や
みなとみらい地区がある西区で4.3%上昇しました。
川崎市では1.4%上昇(昨年1.1%上昇)と上昇率が高くなり、
相模原市は0.2%上昇(昨年0.8%下落)と上昇に転じました。
<住宅地>
東京圏全体の住宅地は0.1%下落(昨年0.2%下落)。
東京23区は0.5%上昇(昨年1.4%上昇)。
台東区と品川区で上昇率が高くなりましたが、
他の区は1区で上昇率が横ばい、20区で上昇率が縮小しました。
多摩地区は横ばいでした(昨年0.8%下落)。
埼玉県では、さいたま市は0.1%下落(昨年0.3%上昇)。
都心に近い川口市、蕨市、戸田市、和光市は1%以上上昇しました。
千葉県では、千葉市で0.4%上昇(昨年0.2%上昇)。
東京近い市川市、浦安市では1.0%以上上昇。
また住宅需要が堅調な木更津市、袖ヶ浦市も1.0%以上上昇しました。
成田市は7年連続で上昇しました。
神奈川県は0.6%上昇(昨年0.4%下落)。
川崎市は0.6%上昇(昨年0.1%下落)。
相模原市は0.3%上昇しました(昨年0.1%下落)。
大阪圏
<商業地>
大阪圏全体の商業地は0.6%下落(昨年1.2%上昇)。
大阪府では、大阪市は2.0%下落(昨年2.6%上昇)。
梅田地区や心斎橋・なんば地区など繁華街を中心に、
店舗・ホテルの需要低迷によって下落しました。
堺市は0.9%上昇(昨年1.2%上昇)。
大阪市や京都市にアクセスしやすい
箕面市、池田市、高槻市、茨木市、松原市では上昇、
他は横ばいか下落しました。
京都府では、京都市は0.4%下落(昨年1.4%上昇)。
例年は観光需要が見込まれた伏見区や東山区の下落が大きいです。
大阪府に近い長岡京市、京田辺市は2%以上上昇しました。
兵庫県では、神戸市が1.1%下落(昨年1.3%上昇)。
三宮周辺で店舗・ホテル需要の減退の影響を受けています。
阪神地域の芦屋市、宝塚市、伊丹市、西宮市、尼崎市は
上昇が継続しました。
<住宅地>
大阪圏全体の住宅地は0.3%下落(昨年0.4%下落)。
大阪府では、大阪市は0.2%上昇(昨年0.3%上昇)。
堺市は0.3%上昇(昨年0.4%上昇)。
大阪市や京都市にアクセスしやすい
箕面市、豊中市、茨木市、吹田市は上昇が継続。
南大阪は大阪市に隣接する高石市、大阪狭山市で上昇が継続。
他の多くの市町村は下落が継続しました。
京都府では、京都市は0.1%下落(昨年0.1%上昇)。
中心部の上京区、中京区、下京区、南区は上昇が続き、
他の区は下落。
他の市町村も横ばいの宇治市以外は下落が継続しました。
兵庫県では、神戸市は0.1%上昇(昨年0.2%上昇)。
阪神地域は比較的需要が安定しており、
芦屋市、伊丹市、宝塚市、西宮市、尼崎市は上昇。
他の市町は下落が継続しました。
名古屋圏
<商業地>
名古屋圏全体の商業地は1.0%上昇(昨年1.1%下落)。
愛知県は1.0%上昇(昨年1.1%下落)と上昇に転じました。
名古屋市は3.2%上昇(昨年1.5%下落)と上昇に転じました。
名古屋市都心ではオフィス需要が底堅く、
栄地区の再開発の進展などにより投資活動が活性化しています。
名古屋市以外では、西三河や知多地域で
下落から上昇に転じた市町が複数あります。
南知多や東三河エリアは下落が続きました。
岐阜県は1.9%下落(昨年2.2%下落)と29年連続の下落。
下落率は前年より縮小しました。
三重県は1.6%下落(昨年1.3%下落)で30年連続の下落。
前年より下落率が広がりました。
<住宅地>
名古屋圏全体の住宅地は0.3%上昇(昨年0.7%下落)。
愛知県は0.2%上昇(昨年0.7%下落)と上昇に転じました。
名古屋市は1.3%上昇(昨年0.8%下落)。
市の中心部ではマンション需要が根強く投資需要も強いです。
名古屋市以外では、西三河や知多地域で
下落から上昇に転じた市町が複数あります。
南知多や東三河エリアは下落が続きました。
岐阜県は1.6%下落(昨年2.0%下落)で29年連続の下落。
下落率は昨年より縮小しました。
三重県は1.6%下落(昨年1.6%下落)で29年連続の下落。
下落率は昨年と変わりません。
東海三県の詳細については、次回のメルマガで解説します。
地方
地方圏全体の商業地は0.7%下落(昨年0.6%下落)、
住宅地は0.7%下落(昨年0.9%下落)と、下落が続いています。
地方の政令指定都市4市については、いずれも上昇しました。
札幌市 商業地 4.2%上昇(昨年6.6%上昇)。
住宅地 7.4%上昇(昨年6.1%上昇)
仙台市 商業地 3.7%上昇(昨年6.9%上昇)
住宅地 3.6%上昇(昨年3.7%上昇)
広島市 商業地 1.7%上昇(昨年2.8%上昇)
住宅地 0.7%上昇(昨年0.8%上昇)
福岡市 商業地 7.7%上昇(昨年7.5%上昇)
住宅地 4.4%上昇(昨年0.8%上昇)
いずれの市も商業地の店舗・ホテル需要は減退しているものの、
中心部の再開発が進み、オフィス需要が堅調なため上昇しています。
4市および近隣自治体の商業地・住宅地の需要も堅調です。
なお、地方の県庁所在地でも、
秋田市、山形市、宇都宮市、新潟市、富山市、佐賀市は、
中心市街地活性化や交通機関の整備の影響を受けて、
商業地・住宅地とも上昇しました。
全国で上昇率が大きかった地点
全国で上昇率が大きかった地点は次の通りです。
<商業地の上昇率上位地点>
1.福岡県福岡市博多区綱場町163番2外 15.8%上昇
2.福岡県福岡市博多区冷泉町206番 15.1%上昇
3.福岡県福岡市中央区高砂2丁目6番21番外 15.0%上昇
4.福岡県福岡市中央区舞鶴1丁目105番1 14.7%上昇
5.北海道北広島市共栄町1丁目13番12 14.7%上昇
福岡市は博多地区・天神地区で再開発が進行しているため
オフィス需要が堅調であり、都心にアクセスしやすい地域では
マンション需要も堅調です。
北海道北広島市は、北海道日本ハムファイターズの
新たな本拠地となる北海道ボールパークFビレッジが
2023年に開業する予定であり、JR北広島駅周辺エリアで
再開発が進められようとしています。
<住宅地の上昇率上位地点>
1.沖縄県宮古島市城辺字保良内507番 22.9%上昇
2.北海道北広島市共栄町4丁目8番23 19.2%上昇
3.北海道北広島市若葉町3丁目3番4 18.8%上昇
4.北海道北広島市稲穂町東6丁目1番14 18.7%上昇
5.北海道虻田郡倶知安町字樺山65番132外 17.4%上昇
沖縄県宮古島や北海道の虻田郡は、コロナ後の
観光需要回復を見据えた投資意欲が高いため上昇しています。
さて、今回は2021年の基準地価(全国編)を解説しました。
商業地でも、コロナ禍の影響で下落した地点もあれば、
再開発の影響でオフィス需要が堅調な地点や、
コロナ後を見据えた投資需要を受けて上昇した地点もあります。
コロナ禍の影響の受け方は地域によって異なることが示されました。
次回は2021年の基準地価(東海三県編)を解説します。
【参考】
・日本経済新聞 2021年9月22日
・中日新聞 2021年9月22日
・中部経済新聞 2021年9月22日
この原稿は名城企画株式会社が発行する「名古屋・東海収益不動産NAVIメールマガジン」の
2021年10月18日発行分の転載です。