
仙台駅西口
令和3年7月1日に国税庁が令和3年1月1日時点の
路線価を発表しました。
今回発表の路線価が、新型コロナウイルスの影響が反映された
初めてのデータとなります。
今回はこの路線価について紹介します。
路線価とは
路線価は主要道路に面した土地の1平米あたりの標準価格のことです。
毎年、国税庁が1月1日の価格を7月1日に発表します。
路線価は相続税や贈与税、銀行の担保評価に使われます。
令和3年の調査地点は約320,000ヶ所で、
国土交通省が公表する公示地価の約26,000ヶ所より詳細です。
路線価は公示地価のおよそ8割程度の価格が目安とされています。
路線価の評価においては、地域ごとに設定した主要な街路に接する
宅地のうち形状、間口、奥行等の状況が標準的なものを
1地点ずつ選定します。これを「標準宅地」と言います。
標準宅地の価格をもとに、それぞれの路線価が算出されます。
全国の動向
標準宅地の対前年変動率の平均値によって1年前と比較すると、
全国平均は0.5%の下落となり、6年ぶりに下落しました。
都道府県全体では、東京都、大阪府、愛知県を含む39都府県で下落。
一方、北海道、宮城県、千葉県、福岡県、佐賀県、熊本県、沖縄県の
7道県は上昇し、山形県は横ばいでした。
コロナ禍の影響は観光地や繁華街の路線価に影響を与えました。
東京都市圏や大阪都市圏をはじめとする観光地や繁華街で、
路線価が下落した地点が目立ちます。
その一方で、再開発などにより路線価が上昇している地点もあります。
全国の路線価の最高地点は36年連続で
東京都中央区銀座5丁目(鳩居堂前)の銀座中央通り。
1平米あたり4272万円、前年比7%下落となりました。
各都道府県庁所在地の状況
各都道府県庁所在地の最高路線価について。
今回発表の令和3年1月1日と前年とで比較すると、
上昇率トップ5と下落率トップ5は次の地点です。
<各都道府県庁所在地の最高路線価の前年比上昇地点トップ5>
1.仙台市 青葉区中央1丁目青葉通り 3.8%上昇
2.千葉市 中央区富士見2丁目千葉駅前大通り 3.5%上昇
3.宇都宮市 宮みらい宇都宮駅東口駅前ロータリー 3.4%上昇
4.横浜市 西区南幸1丁目横浜駅西口バスターミナル前通り 3.1%上昇
5.福井市 中央1丁目福井駅西口広場通り 3.1%上昇
上昇したのはいずれも再開発の期待が大きいオフィス街や駅前の地点。
仙台駅周辺は住宅需要が底堅いです。
宇都宮市では2023年に次世代型路面電車LRTの開業を控えるなど、
再開発が見込まれています。
千葉市をはじめとする千葉県北西部は都心へのアクセスがよく、
住宅や商業施設が充実していることから、住宅の需要が旺盛です。
横浜駅は近隣で複合ビルなどの大きな再開発が控えています。
福井駅は北陸新幹線延伸とそれによる再開発の期待感があります。
<各都道府県庁所在地の最高路線価の前年比下落地点トップ5>
1.奈良市 東向中町大宮通り 12.5%下落
2.神戸市 中央区三宮町1丁目三宮センター街 9.7%下落
3.大阪市 北区角田町御堂筋 8.5%下落
4.盛岡市 大通り2丁目大通り 8.0%下落
5.東京都 中央区銀座5丁目銀座中央通り 7.0%下落
盛岡市以外はコロナ禍による国内外の観光客の減少のあおりを受けており、
またいずれの地点も飲食業・娯楽業・小売業の需要減少の影響が大きいです。
東海三県の状況
東海三県では11年ぶりに上昇した地点がありませんでした。
半分以上の地点が前年より下落し、残りの地点は横ばいでした。
税務署別最高路線価の下落幅が大きい地点は次の通りです。
<東海三県の税務署別最高路線価 下落地点トップ3>
1.岐阜県高山市上三之町 12.7%下落
2.愛知県名古屋市中区栄3丁目 6.8%下落
3.愛知県名古屋市熱田区金山町1丁目 6.4%下落
高山市はコロナ禍による国内外の観光客の減少の影響が大きく、
大阪市のミナミ(大阪市中央区心斎橋筋2丁目、26.4%下落)に次ぐ
全国2番目の下落幅となりました。
名古屋市中区栄3丁目(大津通)や
名古屋市熱田区金山町1丁目(金山駅前)は
百貨店、飲食店や娯楽施設が多い繁華街で、
コロナ禍による需要減退の影響を受けています。
<愛知県・岐阜県・三重県の最高路線価>
東海三県および愛知県で路線価が最高の地点は、
17年連続で名古屋市中村区名駅1丁目です。
1平米あたり1232万円で前年比1.3%下落。
11年ぶりの下落となりましたが、底堅いオフィス需要があり、
下げ幅は小幅にとどまりました。
愛知県の名古屋市以外で路線価が最高の地点は、
豊橋市広小路1丁目の駅前通りで、1平米あたり42万円。
岐阜県で路線価が最高の地点は、
JR岐阜駅北側の岐阜市吉野町5丁目(岐阜停車場線通り)。
前年と同じ1平米あたり47万円。
三重県で路線価が最高の地点は、11年連続で
四日市市安島1丁目(ふれあいモール通り)の1平米当たり32万円。
なお、人気の観光地である三重県伊勢市宇治今在家町は横ばい。
訪日客はもともと多くなく、国内の観光需要が底堅いためです。
さて、今回は路線価について紹介しました。
コロナ禍により路線価が大幅に下落した地点もありましたが、
今後、世界がコロナ禍を乗り越えて、
飲食・娯楽・観光の需要が回復したなら、
下落した地点の路線価が上昇することも期待されます。
【出典】
・2021年7月2日 日本経済新聞(各地方版を含む)
この原稿は名城企画株式会社が発行する「名古屋・東海収益不動産NAVIメールマガジン」の
2021年8月23日発行分の転載です。