
西荻窪駅前(東京都杉並区)
2022年9月20日に、国土交通省が2022年7月1日時点の
都道府県地価(基準地価)を発表しました。
これについて、商業地と住宅地の動向を中心に解説します。
今回のメルマガでは、令和4年の基準地価(全国編)を解説し、
次回のメルマガでは、令和4年の基準地価(東海三県編)を解説します。
全国的な動向
全国ではコロナ禍の影響が薄まり、全用途では、
前年は0.4%下落でしたが、今年は0.3%上昇と上昇に転じました。
商業地は0.5%上昇と3年ぶりに上昇。
住宅地は0.1%上昇と1991年以来31年ぶりに上昇しました。
全国と各都市圏・地方圏の平均は次の通りです。( )は前年変動率。
全国平均 商業地 0.5%上昇(0.5%下落)
住宅地 0.1%上昇(0.5%下落)
三大都市圏 商業地 1.9%上昇(0.1%上昇)
住宅地 1.0%上昇(0.0%)
東京圏 商業地 2.0%上昇(0.1%上昇)
住宅地 1.2%上昇(0.1%上昇)
大阪圏 商業地 1.5%上昇(0.6%下落)
住宅地 0.4%上昇(0.3%下落)
名古屋圏 商業地 2.3%上昇(1.0%上昇)
住宅地 1.6%上昇(0.3%上昇)
地方圏 商業地 0.1%下落(0.7%下落)
住宅地 0.2%下落(0.9%下落)
以下に各都市圏・地方圏について解説します。
東京圏
<商業地>
東京圏の商業地は 2.0%上昇(0.1%上昇)。
10年連続で上昇し、上昇幅が拡大しました。
東京都23区全体は2.2%上昇(0.3%下落)。
上昇率が大きい区は、杉並区3.8%上昇(0.6%上昇)、
北区3.7%上昇(0.4%上昇)、中野区3.5%上昇(2.9%上昇)、
荒川区3.5%上昇(0.4%上昇)。
都心より周辺の区の上昇幅が大きいですが、
周辺の区の方がコロナ禍による下落幅が大きかったためです。
多摩地区は1.5%上昇(0.0%)しました。
埼玉県では、さいたま市は2.7%上昇(0.1%下落)。
再開発事業等による発展期待のある大宮区などで上昇。
東京都に近い戸田市、和光市、川口市なども上昇率が拡大しました。
千葉県では、千葉市は3.0%上昇(0.5%上昇)。
東京都に近い市川市、船橋市、松戸市、柏市、流山市では
上昇率が拡大、浦安市では、下落から上昇に転じました。
房総地域では、木更津市、市原市、袖ケ浦市で上昇率が拡大しました。
神奈川県では、横浜市は2.7%上昇(1.8%上昇)。
横浜駅に隣接する神奈川区は4.1%上昇(3.3%上昇)。
みなとみらい地区を含む西区は4.0%上昇(4.3%上昇)。
川崎市は2.8%上昇(1.4%上昇)。相模原市は1.1%上昇(0.2%上昇)。
<住宅地>
東京圏全体の住宅地は 1.2%上昇(前年0.1%上昇)しました。
東京23区全体は2.2%上昇(0.5%上昇)。全区で上昇率が拡大しました。
都心の住宅需要は旺盛で利便性の高い地域が上昇傾向にあります。
上昇率が大きい順に、中央区 4.0%上昇(1.1%上昇)、
新宿区3.7%上昇(1.0%上昇)、中野区 3.3%上昇(0.8%上昇)、
豊島区3.3%上昇(1.2%上昇)。
中野区は中野駅前で再開発が進んでいることが要因です。
東京都多摩地区は1.0%上昇(横ばい)しました。
埼玉県では、さいたま市は2.2%上昇(0.1%下落)。
蕨市、戸田市など 14 市町で上昇が継続し、上昇率が拡大しました。
千葉県では、千葉市は1.5%上昇(0.4%上昇)。
東京都に近い市川市、船橋市、松戸市、柏市、流山市、浦安市は
上昇率が拡大しました。
房総地域では、木更津市、君津市、袖ケ浦市で上昇率が拡大しました。
神奈川県では、横浜市は1.3%上昇(0.6%上昇)。
川崎市は1.3%上昇(0.6%上昇)。相模原市は1.1%上昇(0.3%上昇)。
湘南地域では住宅需要が堅調で、上昇率が拡大しました。
茅ヶ崎市は 2.5%上昇(0.6%上昇)、藤沢市は 2.0%上昇(0.2%上昇)、
逗子市 は1.8%上昇(0.1%上昇)。
大阪圏
<商業地>
大阪圏の商業地は 1.5%上昇(0.6%下落)。
大阪府では、大阪市は1.7%上昇(2.0%下落)。
全24区のうち、19区が上昇しました。
梅田地区、心斎橋・なんば地区はコロナ禍の下落から
回復傾向にあります。
堺市は2.9%上昇(0.9%上昇)。
北大阪地域では、箕面市、池田市、高槻市、茨木市で
上昇率が拡大しました。
南大阪地域では、松原市で上昇が継続しました。
京都府では、京都市は2.5%上昇(0.4%下落)。
全11区で上昇しました。
宿泊施設の需給関係は厳しいものの、マンション需要が好調です。
京阪間のベッドタウンである長岡京市と京田辺市は
上昇率が拡大しました。
兵庫県では、神戸市は1.5%上昇(1.1%下落)。
中心部の三宮周辺ではコロナ禍の下落から回復傾向にあります。
阪神地域では、インバウンド需要の影響が小さかったことから、
尼崎市、西宮市、芦屋市、宝塚市、伊丹市は上昇が継続しました。
奈良県では、奈良市は1.5%上昇(2.0%下落)。
近鉄奈良駅、JR奈良駅周辺では観光客が戻りつつあり
上昇に転じました。生駒市でも上昇率が拡大しました。
<住宅地>
大阪圏の住宅地は0.4%上昇(0.3%下落)
大阪府では、大阪市は1.1%上昇(0.2%上昇)。
全24区で上昇しました。
堺市は1.4%上昇(0.3%上昇)。
北大阪地域は、箕面市、豊中市、茨木市、吹田市で
上昇率が拡大しました。
東大阪及び南大阪地域は、高石市、大阪狭山市で上昇率が拡大しました。
京都府では、京都市は0.6%上昇(0.1%下落)しました。
長岡京市や京田辺市は京阪間のベッドタウンとしての需要が堅調で
上昇率が拡大しました。
兵庫県では、神戸市は1.2%上昇(0.1%上昇)しました。
阪神地域は、大阪・神戸への通勤・通学圏として需要は
比較的安定しており、
尼崎市、西宮市、芦屋市、伊丹市、宝塚市は上昇率が拡大しました。
奈良県では、奈良市は0.5%上昇(0.1%下落)しました。
奈良駅周辺の区画整理事業により利便性が高まりました。
名古屋圏
<商業地>
名古屋圏の商業地は 2.3%上昇(1.0%上昇)。
愛知県では34市町村が上昇。
名古屋市は4.4%上昇(3.2%上昇)。全16区で上昇しました。
<住宅地>
名古屋圏の住宅地 は1.6%上昇(0.3%上昇)。
愛知県では36市町が上昇。
名古屋市は3.1%上昇(1.3%上昇)。全16区で上昇しました。
東海三県の詳細については、次回のメルマガで解説します。
地方圏
地方圏の商業地は 0.1%下落(0.7%下落)、
住宅地は0.2%下落(0.7%下落)しました。
地方の政令指定都市4市については、いずれも大幅に上昇しました。
札幌市 商業地:7.8%上昇(4.2%上昇)
住宅地:11.8%上昇(7.4%上昇)
仙台市 商業地:5.7%上昇(3.7%上昇)
住宅地:5.9%上昇(3.6%上昇)
広島市 商業地:3.2%上昇(1.7%上昇)
住宅地:1.2%上昇(0.7%上昇)
福岡市 商業地:9.6%上昇(7.7%上昇)
住宅地:6.5%上昇(4.4%上昇)
札幌市は、住宅地は市中心部のマンション需要が旺盛です。
商業地は札幌駅周辺で再開発計画が進展しています。
住宅地、商業地とも周辺の江別市、恵庭市、北広島市、石狩市
などにも需要が波及しています。
仙台市の住宅地は、生活利便性の高い地域で需要が旺盛であり、
郊外にも需要が波及しています。
商業地は、再開発等が行われている仙台駅東口周辺や
東北大学農学部の跡地周辺等ではマンション需要が引き続き旺盛です
広島市の住宅地は、生活利便性が高い地域で需要が堅調です。
商業地は、広島駅周辺の再開発・再整備による発展期待から
広島駅周辺で需要が強まっています。
中心部の店舗需要は回復傾向にあり、オフィス需要も堅調です。
福岡市の住宅地は、再開発等により生活利便性が向上し、
中心部から周辺部へ地価の上昇が波及しています。
商業地は、博多駅、天神地区でのオフィス需要が堅調です。
三大都市圏及び地方四市を除く34の県庁所在地は、
住宅地については、14 市が上昇(13市)、2市が横ばい(0市)、
18市が下落(21市)となりました。
商業地については、19 市が上昇(12市)、1市が横ばい(1市)、
14市が下落(21市)となりました。
全国で上昇率が大きかった地点
全国で上昇率が大きかった上位5地点は次の通りです。
なお、商業地の上位10地点のうち9地点が北海道の地点でした。
住宅地は上位10地点のうちすべてが北海道の地点でした。
<商業地 全国上昇率上位5地点>
1位 北海道北広島市美沢1丁目1番3外 25.0%上昇
2位 北海道北広島市中央6丁目8番10 23.9%上昇
3位 北海道恵庭市漁町159番 22.7%上昇
4位 北海道江別市野幌住吉町18番1外 22.0%上昇
5位 北海道千歳市花園7丁目78番外 22.0%上昇
北海道北広島市は、北広島駅西口再開発事業と
北海道日本ハムファイターズのボールパークが開発中であり、
繁華性向上が期待され、マンション需要も高いため上昇しています。
江別市、恵庭市、千歳市は札幌市中心部の地価上昇や供給不足等による
相対的な割安感から需要が旺盛であり、地価の上昇が継続しています。
なお、6位には千葉県木更津市の地点が入りました。
複合型都市「かずさアクアシティ」が整備中で発展が期待されています。
<住宅地 全国上昇率上位5地点>
1位 北海道北広島市共栄町4丁目8番23 29.2%上昇
2位 北海道北広島市稲穂町東6丁目1番14 29.1%上昇
3位 北海道北広島市若葉町3丁目3番4 29.1%上昇
4位 北海道江別市野幌東町43番16 25.3%上昇
5位 北海道恵庭市島松東町2丁目197番 25.0%上昇
商業地と同様の傾向です。
<工業地 全国上昇率上位5地点>
1位 熊本県菊池郡菊陽町大字原水字南下原1333番1 31.6%上昇
2位 沖縄県豊見城市字豊崎3番62 24.3%上昇
3位 熊本県菊池市旭志川辺字四東沖1126番7 23.7%上昇
4位 熊本県菊池郡大津町大字室字狐平1576番1 19.6%上昇
5位 千葉県船橋市西浦2丁目6番2外 19.4%上昇
熊本県菊池郡菊陽町は半導体大手TSMCの工場設立が決まったことから
工業地だけでなく商業地、住宅地も上昇しています。
その他は大型物流施設用地として需要が上昇した地点が目立ちます。
さて、今回は2022年の基準地価(全国編)を解説しました。
今年はコロナ禍による下落から上昇に転じた地点が多くありました。
次回は2022年の基準地価(東海三県編)を解説します。
【参考】
・日本経済新聞 2022年9月22日
・中日新聞 2022年9月22日
・中部経済新聞 2022年9月22日
・建通新聞中部版 2022年9月22日
・国土交通省 令和4年9月29日 令和4年都道府県地価調査
https://www.mlit.go.jp/totikensangyo/totikensangyo_fr4_000044.html
この原稿は名城企画株式会社が発行する「名古屋・東海収益不動産NAVIメールマガジン」の
2022年10月17日発行分の転載です。