
2023年7月に営業を終えて再開発が予定される中野サンプラザ(東京都中野区)
国土交通省が3月22日に、
令和5年1月1日時点の地価公示を発表しました。
今回のメルマガでは、令和5年の地価公示の全国の傾向を解説します。
名古屋圏・東海三県の状況については次号で解説します。
全体的に新型コロナウイルスの影響が緩和され、
緩やかに景気が持ち直す中、都心部を中心に地価の上昇が継続し、
全国全用途平均は2年連続で上昇しました。
全国では、住宅地は1.4%上昇(前年0.5%上昇、以下( )は前年)。
共働き世帯の増加、低金利、在宅勤務の広がりという3要素の
後押しを受けて、都市部や都市近郊の需要は堅調でした。
商業地は1.8%上昇(0.4%上昇)。
都市圏を中心に店舗やオフィスのニーズが旺盛で、
観光地や繁華街も人手が戻りつつあります。
三大都市圏・地方圏・地方4市の変動率は次の通りです。
東京圏:住宅地2.1%上昇(0.6%上昇)、商業地3.0%上昇(0.7%上昇)
大阪圏:住宅地0.7%上昇(0.1%上昇)、商業地2.3%上昇(0.0%)
名古屋圏:住宅地2.3%上昇(1.0%上昇)、商業地3.4%上昇(1.7%上昇)
地方圏:住宅地1.2%上昇(0.5%上昇)、商業地1.0%上昇(0.2%上昇)
地方4市:住宅地8.6%上昇(5.8%上昇)、商業地8.1%上昇(5.7%上昇)
(地方4市は、札幌市、仙台市、広島市、福岡市)
東京圏の住宅地
東京都は、東京23区は3.4%上昇し、全23区で上昇幅が拡大しました。
上昇率が上位の区は、台東区4.8%上昇、豊島区4.7%上昇、
中野区4.6%上昇。
都心の利便性の高い地域でマンション・戸建とも需要が旺盛です。
東京多摩地区は1.6%上昇し、全28市町が上昇。
調布市、府中市、立川市、国分寺市、狛江市は3%以上上昇しました。
埼玉県では、さいたま市は2.8%上昇し、全10区が上昇。
戸田市、蕨市、川口市などで上昇が継続しました。
千葉県では、千葉市は1.9%上昇し、全6区で上昇率が拡大。
市川市、船橋市、松戸市、習志野市、浦安市では上昇率が拡大。
房総地域は、木更津市、袖ヶ浦市で上昇率が拡大しました。
神奈川県では、横浜市は1.5%上昇、全18区中17区が上昇。
川崎市は1.7%上昇、相模原市は1.9%上昇。
湘南エリアは都心部への交通利便性に優れたエリアを中心に
上昇率が拡大し、茅ケ崎市4.1%上昇、鎌倉市2.5%上昇、
藤沢市2.2%上昇となりました。
東京圏の住宅地の上昇率上位点は次の通りです。
1位 千葉県木更津市金田東4-19-5 20.9%
2位 茨城県つくばみらい市紫峰ヶ丘2-14-6 12.0%
3位 千葉県浦安市舞浜3-9-189 11.1%
4位 千葉園浦安市高洲3-28-124 10.9%
5位 千葉県浦安市北栄3-851-2 10.9%
東京圏の商業地
東京都では、23区は3.6%上昇、全23区で上昇。
コロナの影響で前年下落していた都心3区は、オフィス投資需要や
国内観光客の回復により上昇に転じ、千代田区2.1%上昇、
中央区2.1%上昇、港区2.8%上昇となりました。
上昇幅が大きいのは、中野区、北区、荒川区で、いずれも5.2%上昇。
多摩地域は2.1%上昇し、全27市町で上昇しました。
埼玉県では、さいたま市は3.3%上昇し、全10区で上昇。
戸田市、蕨市、川口市など14市で上昇率が拡大しました。
千葉県では、千葉市は3.6%上昇し、全6区で上昇率が拡大。
市川市、船橋市、松戸市、習志野市、浦安市で上昇率が拡大しました。
房総地域では木更津市、袖ヶ浦市、君津市は上昇率が拡大しました。
神奈川県では、横浜市は3.4%上昇し、全18区で上昇率が拡大。
みなとみらい地区を含む西区は5.2%上昇、
横浜駅を含む神奈川区は5.0%上昇。
「新横浜線」新駅が開業した港北区は2.8%上昇。
川崎市は4.3%上昇、相模原市は3.0%上昇、
いずれも全区で上昇率が拡大しました。
東京圏の商業地の上昇率上位点は次の通りです。
1位 神奈川県横浜市西区みなとみらい3-1-1外 13.5%
2位 神奈川県横浜市神奈川区鶴屋2-24-1 11.5%
3位 神奈川県川崎市川崎区宮本町5-7 10.5%
4位 神奈川県相模原市緑区橋本2-344-1外 10.3%
5位 千葉県船橋市宮本5-466-3外 10.2%
大阪圏の住宅地
大阪府では、大阪市は1.6%上昇し、全24区で上昇。
堺市は1.8%上昇し、全7区で上昇。
北大阪地域では、北大阪急行が延伸した箕面市など全市で上昇しました。
東大阪・南大阪地域では、枚方市、高石市、大阪狭山市で上昇率が拡大。
泉大津市、守口市、八尾市、泉佐野市、寝屋川市、大東市、
和泉市、門真市、藤井寺市、四条畷市、交野市で上昇しました。
京都府では、京都市は1.2%上昇し、全11区で上昇。
ほかに宇治市、向日市、長岡京市、亀岡市、京田辺市でも上昇しました。
兵庫県では、神戸市は1.2%上昇。長田区を除く8区で上昇。
神戸・阪神地域では、三田市を除く全市で上昇しました。
大阪圏の住宅地の上昇率上位点は次の通りです。
1位 奈良県奈良市西大寺国見町1-2137-65 10.3%
2位 奈良県橿原市内膳町5-77-2 8.2%
3位 大阪府箕面市今宮4-1-12 8.2%
4位 京都市上京区小川通一条下る小川町206番1 7.5%
5位 大阪府大阪市福島区福島3-13-2 7.4%
大阪圏の商業地
大阪府では、大阪市は3.3%上昇し、全24区が上昇。
梅田地区はオフィス需要が堅調。
インバウンド需要減少の影響が大きかった心斎橋・なんば地区は
国内観光客の回復やインバウンドの回復期待もあり、店舗需要は堅調です。
堺市は3.7%上昇し、全7区で上昇。
北大阪地域は、箕面市など全市町で上昇率が拡大。
東大阪・南大阪地域は、守口市、枚方市、八尾市、泉佐野市、寝屋川市、
和泉市、門真市、交野市などほとんどの市が上昇しました。
京都府では、京都市は3.3%上昇し、全11区が上昇。
国内観光客の回復やインバウンドの期待もあり、店舗需要は回復傾向。
京都市以外は、向日市、長岡京市、八幡市、京田辺市、木津川市など
ほとんどの市が上昇しました。
兵庫県では、神戸市は2.0%上昇し、全9区で上昇。
神戸・阪神地域では全市で上昇率が拡大しました。
大阪圏の商業地の上昇率上位点は次の通りです。
1位 大阪府堺市美原区平尾290-3 13.6%
2位 京都市下京区七条通間之町東入材木町481 13.6%
3位 京都市下京区堀川綾小路下る綾堀川310-1 13.2%
4位 京都市下京区大宮通四条下る四条大宮町19番外 12.3%
5位 京都市下京区寺町通松原下る植松町709-3外 11.1%
地方4市(札幌市、仙台市、広島市、福岡市)
札幌市は、住宅地15.0%上昇(9.3%上昇)、商業地9.7%上昇(5.8%上昇)。
住宅地は市の外縁部まで需要が広がっています。
商業地は、札幌駅東側などは再開発計画の進展のため上昇が継続。
すすきの地区は人流が戻り、上昇に転じました。
札幌市の需要の高まりは周辺の市にも波及しています。
北広島市は北海道ボールパークFビレッジ事業や
駅前再開発により住宅地、商業地とも大きく上昇しています。
主な周辺市の変動率は次の通りです。
北海道江別市:住宅地27.5%上昇、商業地20.8%上昇
北海道恵庭市:住宅地26.4%上昇、商業地21.3%上昇
北海道北広島市:住宅地26.2%上昇、商業地26.7%上昇
北海道石狩市:住宅地20.9%上昇、商業地20.9%上昇
仙台市は、住宅地5.9%上昇(4.4%上昇)、商業地6.1%上昇(4.2%上昇)。
商業地は、仙台駅周辺や東北大学農学部跡地の周辺で上昇が
継続しています。仙台市周辺にも住宅需要が波及しています。
主な周辺市の変動率は次の通りです。
宮城県富谷市:住宅地9.1%上昇、商業地4.4%上昇
宮城県名取市:住宅地6.2%上昇、商業地8.4%上昇
広島市は、住宅地1.7%上昇(1.4%上昇)、商業地3.7%上昇(2.6%上昇)。
商業地は広島駅周辺や八丁堀・紙屋町周辺は再開発が期待されています。
広島市のベッドタウンである東広島市、廿日市市、府中町、池田町
などにも地価の上昇が波及しています。
福岡市は住宅地8.0%上昇(6.1%上昇)、商業地10.6%上昇(9.4%上昇)。
商業地は中心部の天神地区や博多駅周辺をはじめ、周辺部まで
オフィス需要、マンション需要が堅調です。
周辺の市町にも需要が波及しています。
主な周辺市の変動率は次の通りです。
福岡県古賀市:住宅地9.2%上昇、商業地6.3%上昇
福岡県大野城市:住宅地8.6%上昇、商業地8.1%上昇
福岡県筑紫野市:住宅地8.1%上昇、商業地10.0%上昇
地方圏の注目地点
熊本県菊陽町には世界最大手の半導体メーカーTSMCの進出に伴い、
周辺市町も含めて需要が急激に高まっています。
主な周辺市町の状況は次の通りです。
熊本県菊陽町 住宅地9.7%上昇、商業地21.7%上昇
熊本県合志市 住宅地7.1%上昇、商業地9.8%上昇
熊本県大津町 住宅地5.6%上昇、商業地16.8%上昇
地方圏の上昇率上位地点
全国の住宅地、商業地の上昇率上位地点はいずれも北海道の地点でした。
全国の住宅地の上昇率上位点は次の通りです。
1位 北海道北広島市共栄町1-10-3 30.0%
2位 北海道北広島市美沢3-4-8 29.4%
3位 北海道北広島市東共栄町2-20-5 29.2%
4位 北海道北広島市北進町3-3-4 29.2%
5位 北海道江別市朝日町13-14 29.1%
全国の商業地の上昇率上位点は次の通りです。
1位 北海道北広島市栄町1-1-3 28.4%
2位 北海道北広島市中央2-1-2 25.0%
3位 北海道恵庭市緑町2-77 24.6%
4位 北海道江別市元江別873-19外 24.2%
5位 北海道江別市上江別西町42-6外 24.0%
さて、今回は令和5年の地価公示の全国の傾向を解説しました。
次回のメルマガでは、名古屋圏・東海三県の状況を解説します。
<出典>
・令和5年地価公示 ttps://tinyurl.com/6mvkkkcd
・日本経済新聞 2023年3月23日
・中日新聞 2023年3月23日
・中部経済新聞 2023年3月23日
この原稿は名城企画株式会社が発行する「名古屋・東海収益不動産NAVIメールマガジン」の
2023年4月17日発行分の転載です。