
国土交通省が令和6年3月26日に、
令和6年1月1日時点の地価公示を発表しました。
今回のメルマガでは、全国の傾向を解説します。
次号では、名古屋圏・東海三県の状況について解説します。
今年の公示において、国土交通省は
「緩やかな景気回復で上昇基調を強めている。一部の地方圏を除き、
全国的にほぼ新型コロナウイルス禍前に戻った」
と分析しています。
全国では、全用途平均は2.3%上昇(前年比1.6%上昇)
(以下( )は前年を表す)。
住宅地は2.0%上昇(1.4%上昇)。商業地は3.1%上昇(1.8%上昇)。
いずれも3年連続で上昇しました。
三大都市圏・地方圏・地方4市の変動率は次の通りです。
東京圏 :住宅地3.4%上昇(2.1%上昇)、商業地5.6%上昇(3.0%上昇)
大阪圏 :住宅地1.5%上昇(0.7%上昇)、商業地5.1%上昇(2.3%上昇)
名古屋圏:住宅地2.8%上昇(2.3%上昇)、商業地4.3%上昇(3.4%上昇)
地方圏 :住宅地1.2%上昇(1.2%上昇)、商業地1.5%上昇(1.0%上昇)
地方4市:住宅地7.0%上昇(8.6%上昇)、商業地9.2%上昇(8.1%上昇)
(地方4市は、札幌市、仙台市、広島市、福岡市)
東京圏の住宅地
<東京都>
東京23区は5.4%上昇(3.4%上昇)、全23区で上昇幅が拡大し、
3年連続で全23区が上昇しました。
上昇率が高かった上位5区は、豊島区7.8%上昇(4.7%上昇)、
中央区7.5%上昇(4.0%上昇)、文京区7.4%上昇(4.4%上昇)、
目黒区7.3%上昇(3.7%上昇)、港区7.2%上昇(3.6%上昇)と、
都心や都心に隣接する区で高い上昇率となりました。
多摩地区は2.7%上昇(1.6%上昇)で全市町が2年連続で上昇。
上昇率が高かった上位3市は、調布市4.5%上昇(3.6%上昇)、
府中市4.4%上昇(3.3%上昇)、武蔵野市4.3%上昇(3.0%上昇)でした。
<埼玉県>
さいたま市は2.7%上昇(2.8%上昇)、全10区が上昇しました。
JR京浜東北線やJR埼京線沿線の蕨市、戸田市、川口市では、
東京都に隣接していることから住宅地の需要が堅調であり、
周辺地域へも波及して上昇率が拡大しました。
<千葉県>
千葉市は3.7%上昇(1.9%上昇)、全 6 区で上昇率が拡大しました。
東京都に近い浦安市、市川市、船橋市、松戸市、柏市、流山市、
我孫子市で都心へのアクセスが良い鉄道沿線の駅徒歩圏だけでなく、
宅地供給不足から駅徒歩圏の周辺にも上昇が波及しました。
房総地域では、市原市、袖ケ浦市、木更津市、君津市で上昇率が拡大しました。
<神奈川県>
横浜市は2.7%上昇(1.5%上昇)、全18区で上昇率が拡大しました。
川崎市では、3.2%上昇(1.7%上昇)。全7区で上昇率が拡大。
相模原市では、4.0%上昇(1.9%上昇)。全3区で上昇率が拡大。
その他の市町では、茅ヶ崎市5.2%上昇(4.1%上昇)、
鎌倉市3.8%上昇(2.5%上昇)、藤沢市4.2%上昇(2.2%上昇)など
交通利便性に優れた駅徒歩圏や海に近いエリアを中心に上昇率が拡大しました。
東京圏の住宅地で上昇率が高い上位5地点は次の通りです。
1位 千葉県流山市おおたかの森南1丁目9番16 17.2%
2位 千葉県流山市西平井字谷新田476番4 16.3%
3位 千葉県流山市おおたかの森南1丁目187番37 16.3%
4位 千葉県流山市西平井字羽中1152番2外 16.3%
5位 千葉県流山市平和台2丁目5番16 16.2%
子育て支援制度が充実しており、子育て世代の流入が増えている
流山市が1位から5位を独占しました。
東京圏の商業地
<東京都>
東京23区は7.0%上昇(3.6%上昇)。全23区で上昇率が拡大しました。
上昇率が大きい順に、台東区9.1%上昇(4.1%上昇)、
荒川区8.3%上昇(5.2%上昇)、中野区8.2%上昇(5.2%上昇)、
杉並区8.0%上昇(4.7%上昇)、豊島区8.0%上昇(4.6%上昇)でした。
多摩地区は3.8%上昇(2.1%上昇)で全市町が2年連続で上昇。
上昇率が高かった上位3市は、狛江市5.9%上昇(3.9%上昇)、
武蔵野市5.8%上昇(3.4%上昇)、国分寺市5.4%上昇(3.2%上昇)でした。
<埼玉県>
さいたま市は4.4%上昇(3.3%上昇)。全10区で上昇しました。
JR京浜東北線及び埼京線沿線で都心に近い
戸田市、蕨市、川口市では旺盛なマンション用地需要との競合もあり、
上昇率が拡大しました。
<千葉県>
千葉市は3.6%上昇し、全6区で上昇率が拡大しました。
市川市、船橋市、松戸市、習志野市、浦安市で上昇率が拡大。
房総地域では木更津市、袖ヶ浦市、君津市は上昇率が拡大しました。
<神奈川県>
横浜市は6.0%上昇(3.4%上昇)。全18区で上昇率が拡大しました。
横浜駅周辺や、みなとみらい地区は、店舗・オフィス需要が堅調です。
川崎市は7.1%上昇(4.3%上昇)。全7区で上昇率が拡大しました。
相模原市は5.7%上昇(3.0%上昇)。全3区で上昇率が拡大しました。
他の市町では、14市町で上昇率が拡大しました。
東京圏の商業地で上昇率の上位5地点は次の通りです。
1位 千葉県千葉市美浜区豊砂1番4 27.1%
2位 神奈川県横浜市西区みなとみらい3丁目1番1外 19.2%
3位 東京都台東区西浅草2丁目66番2 17.8%
4位 千葉県浦安市美浜1丁目6番4 17.8%
5位 千葉県市川市行徳駅前2丁目17番3 17.1%
大阪圏の住宅地
<大阪府>
大阪市は3.7%上昇(1.6%上昇)。全24 区で上昇率が拡大しました。
市の中心部やその隣接区で5%以上上昇しました。
堺市は2.1%上昇(1.8%上昇)。全7 区で上昇が継続。
堺市北区は御堂筋線沿線で高い上昇率となっています。
北大阪地域は、各地下鉄・鉄道沿線の駅徒歩圏で住宅需要が堅調で、
豊中市、吹田市、高槻市、茨木市、箕面市をはじめ、
8市町で上昇率が拡大しました。
東大阪及び南大阪地域では、交通利便性が高く割安感のある地域の
住宅需要が堅調で、守口市、枚方市、寝屋川市、大東市、
門真市、四條畷市及び交野市など14市で上昇率が拡大しました。
一方で大阪府都心部から離れた市町村では下落が継続しています。
<京都府>
京都市は2.5%上昇(1.2%上昇)。全11 区で上昇率が拡大しました。
京都市以外では、宇治市、城陽市、向日市、長岡京市、京田辺市、
大山崎町、久御山町及び亀岡市で上昇が継続しました。
<兵庫県>
神戸市は2.1%上昇(1.2%上昇)。全9 区で上昇しました。
東部の東灘区・灘区・中央区は上昇率が拡大傾向にあります。
阪神地域では、尼崎市、西宮市、芦屋市、伊丹市、宝塚市、川西市で
上昇率が拡大しました。
<奈良県>
奈良市は0.9%上昇(0.8%上昇)しました。
奈良市以外では、大和郡山市、橿原市及び生駒市で
上昇率が拡大しました。
大阪圏の住宅地の上昇率上位点は次の通りです。
1位 奈良県奈良市西大寺国見町1丁目2137番65 9.4%
2位 京都府京都市上京区小川通一条下る小川町206番1 9.1%
3位 大阪府箕面市船場西1丁目20番9 8.7%
4位 大阪府箕面市今宮4丁目1番12 8.6%
5位 奈良県橿原市内膳町5丁目77番2 8.5%
大阪圏の商業地
<大阪府>
大阪市は9.4%上昇(3.3%上昇)。全24 区で上昇率が拡大しました。
梅田地区は「うめきた2 期」再開発の期待から上昇率が拡大しました。
インバウンド需要の影響が大きかった心斎橋・なんば地区では、
観光客の大幅な回復を受けて店舗需要が回復し、大きく上昇しました。
福島区、北区、中央区、西区、浪速区は、商業地のマンション需要から
高い上昇率となっています。
堺市は4.4%上昇(3.7%上昇)。全7 区で上昇が継続しています。
北大阪地域では、北大阪急行延伸部沿線の箕面市をはじめ、
全ての市町で上昇率が拡大しました。
東大阪及び南大阪地域では、ほとんどの市町で上昇が継続しました。
<京都府>
京都市は6.6%上昇(3.3%上昇)。全11 区で上昇率が拡大しました。
市内中心部では、人流の回復から店舗、オフィス、ホテル、マンションの
需要がいずれも堅調で、地価上昇が継続しています。
京都市以外では、宇治市、城陽市、向日市、長岡京市、八幡市、
京田辺市、木津川市で上昇が継続しています。
<兵庫県>
神戸市は、4.1%上昇(2.0%上昇)。全9 区で上昇率が拡大しました。
三宮周辺では、人流が回復傾向となったことから店舗需要が回復し、
上昇率が拡大しました。
阪神地域の尼崎市、西宮市、芦屋市、伊丹市、宝塚市、川西市、
三田市及び猪名川町は、全市町で上昇率が拡大しました。
<奈良県>
奈良市は3.8%上昇(2.8%上昇)。近鉄奈良駅及びJR 奈良駅周辺は、
観光客による人流と消費の回復から店舗需要が拡大しており、
上昇率が拡大しました。
奈良市以外では、大和高田市、大和郡山市、橿原市、生駒市、
香芝市、王寺町で上昇が継続しています。
大阪圏の商業地の上昇率上位点は次の通りです。
1位 大阪府大阪市中央区道頓堀1丁目37番外 25.3%
2位 大阪府大阪市中央区難波1丁目14番22外 22.1%
3位 大阪府大阪市西区西本町2丁目111番外 20.1%
4位 大阪府大阪市西区南堀江2丁目52番1外 19.4%
5位 大阪府大阪市西区江戸堀1丁目79番1 19.4%
地方4市(札幌市、仙台市、広島市、福岡市)
<札幌市>
住宅地は8.4%上昇(15.0%上昇)。
地価や建築費の上昇により、住宅需要は落ち着きを見せ、
全区で昨年より上昇率が縮小しました。
中央区やその周辺の利便性が良いエリアで需要が堅調です。
商業地は10.3%上昇(9.7%上昇)。
札幌駅南口ではオフィス需要が堅調です。
札幌駅北口や札幌駅の東側では再開発進展の期待感があります。
すすきの地区では、店舗需要が回復し、地価は大幅に上昇しました。
札幌市周辺市の住宅地は、住宅需要は落ち着きました。
商業地は、堅調な店舗需要に加え、戸建住宅需要との競合もあり、
上昇が継続しています。
(主な周辺市の状況)
・江別市 (住宅地 11.7% 商業地 10.6%)
・恵庭市 (住宅地 14.0% 商業地 14.3%)
・北広島市(住宅地 11.4% 商業地 21.2%)
・石狩市 (住宅地 11.0% 商業地 12.1%)
<仙台市>
住宅地は7.0%上昇(5.9%上昇)。
中心部や郊外の住環境が良好な地域で住宅需要が堅調です。
商業地は7.8%上昇(6.1%上昇)。
オフィス需要が堅調に推移しています。
仙台市周辺市町の住宅地では、人口増加を背景に需要が高まり、
住宅地、商業地ともに上昇が継続しています。
(主な周辺市町の状況)
・名取市(住宅地 6.1% 商業地 8.2%)
・岩沼市(住宅地 6.2% 商業地 8.2%)
・富谷市(住宅地 9.4% 商業地 5.2%)
・大和町(住宅地 8.3% 商業地 5.0%)
<広島市>
住宅地は2.0%上昇(1.7%上昇)。
都心部へのアクセスがよい平坦地や利便性が高い地域で需要が堅調です。
商業地は4.2%上昇(3.7%上昇)。
広島駅周辺では再開発への期待感から需要が拡大しています。
再開発が予定される八丁堀・紙屋町周辺のオフィス需要も堅調です。
広島市周辺の市町では、生活利便性が良好な住宅地は需要が堅調で、
大型商業施設周辺や郊外型店舗の立地が進む幹線道路沿いの地域は、
店舗需要が増えています。
(主な周辺市町の状況)
・東広島市(住宅地 0.9%、商業地 1.3%)
・廿日市市(住宅地 1.6%、商業地 2.6%)
・府中町 (住宅地 3.4%、商業地 4.3%)
・海田町 (住宅地 2.0%、商業地 2.4%)
<福岡市>
住宅地は9.6%上昇(8.0%上昇)。
市内はマンション用地の供給が少ないことから、
需要の競合が続いており、地価の高い上昇が継続しています。
商業地は12.6%上昇(10.6%上昇)。
天神地区や博多駅周辺では、オフィス、ホテル、店舗、マンションの
需要が旺盛で、高い上昇が継続しています。
福岡市周辺市町の住宅地は、福岡市の住宅需要の波及により、
利便性が良好な地域を中心に需要は堅調です。
福岡市周辺市町の商業地は、店舗や事業所等の需要が堅調で、
駅周辺ではマンション用地需要も旺盛です。
(主な周辺市町の状況)
・筑紫野市(住宅地 8.6%、商業地 10.0%)
・大野城市(住宅地 8.7%、商業地 8.6%)
・古賀市 (住宅地 14.2%、商業地 9.7%)
・宇美町 (住宅地 9.3%、商業地 7.4%)
・粕屋町 (住宅地 7.3%、商業地 10.4%)
地方圏の上昇率上位地点
地方圏の住宅地の上昇率上位点は次の通りです。
1位 北海道富良野市北の峰町4777番33 27.9%
2位 北海道千歳市栄町2丁目25番20 23.4%
3位 沖縄県宮古島市上野字野原東方原1104番 21.2%
4位 北海道千歳市柏陽2丁目3番11 20.6%
5位 北海道帯広市大空町1丁目6番13 20.4%
富良野市、宮古島市はインバウンド投資も含むリゾート需要によるもの。
千歳市は半導体メーカーのラピダスの進出によるものです。
帯広市は安定した農業基盤のもと、子育て世帯の住宅需要に対して
土地の供給が少ないため、大幅に上昇しています。
地方圏の商業地の上昇率上位点は次の通りです。
1位 熊本県菊池郡大津町大字大津字拾六番町屋敷1096番2外 33.2%
2位 熊本県菊池郡菊陽町大字津久礼字石坂2343番2 30.8%
3位 北海道千歳市幸町3丁目19番2 30.3%
4位 長野県北安曇郡白馬村大字北城字山越4093番2 30.2%
5位 北海道千歳市千代田町5丁目1番8 29.3%
熊本県菊池郡は台湾の半導体メーカーTSMCの進出によるもの。
千歳市は半導体メーカーのラピダスの進出によるもの。
長野県北安曇郡白馬村はインバウンド投資も含めたリゾート需要
によるものです。
さて、今回は令和6年の地価公示の全国の傾向を解説しました。
次回のメルマガでは、名古屋圏・東海三県の状況を解説します。
<出典>
・令和6年地価公示 https://tinyurl.com/mr2tuyz9
・北海道新聞 2024年3月27日
この原稿は名城企画株式会社が発行する「名古屋・東海収益不動産NAVIメールマガジン」の
2024年4月15日発行分の転載です。