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令和6年の基準地価(全国編)

2024年9月17日に、国土交通省が2024年7月1日時点の
令和6年の都道府県地価(基準地価)を発表しました。
基準地価は土地売買の目安として使われます。

今回と次回の記事で、令和6年の基準地価について、
商業地と住宅地の動向を中心に解説します。
今回は「令和6年の基準地価(全国編)」を解説し、
次回は「令和6年の基準地価(東海三県編)」を解説します。

 

●全国的な動向

全国では、景気の緩やかな回復を受けて、
三大都市圏では上昇幅が拡大し、地方圏でも上昇基調が強まりました。
全用途では1.4%上昇(前年は1.0%上昇)。(以下( )は前年のデータを表す)
商業地は2.4%上昇(1.5%上昇)、
住宅地は0.9%上昇(0.7%上昇)と前年より上昇幅が拡大しました。

商業地の傾向
・主要都市では店舗・ホテル・オフィスなどの需要が堅調です。
・都市中心部付近ではマンション需要との競合により
 地価上昇の影響がある地点がみられます。
・再開発事業により地価が上昇した地点もあります。
・観光地では観光客の回復により高い上昇となった地点があります。

住宅地の傾向
・大都市圏の中心部での地価上昇傾向が強まっています。
・新規鉄道路線の開業を受けて上昇幅が拡大した地点もあります。
・人気リゾート地では別荘や移住者用住居などの需要が拡大し、
 上昇幅が拡大した地点があります。

その他の傾向
・大手半導体メーカーの工場が進出する北海道千歳市や
 熊本県菊陽町周辺では、商業地、住宅地、工業地の高い上昇があります。
・大型物流施設用地の需要が高く、高速道路等のアクセスがよい地点で
 高い上昇となった地点があります。
・能登半島地震で大きな被害を受けた地域では地価が大きく下落しました。

全国と各都市圏・地方圏の平均は次の通りです。
全国平均  商業地 2.4%上昇(1.5%上昇)、住宅地 0.9%上昇(0.7%上昇)
三大都市圏 商業地 6.2%上昇(4.0%上昇)、住宅地 3.0%上昇(2.2%上昇)
東京圏   商業地 7.0%上昇(4.3%上昇)、住宅地 3.6%上昇(2.6%上昇)
大阪圏   商業地 6.0%上昇(3.6%上昇)、住宅地 1.7%上昇(1.1%上昇)
名古屋圏  商業地 3.8%上昇(3.4%上昇)、住宅地 2.5%上昇(2.2%上昇)
地方4市  商業地 8.7%上昇(9.0%上昇)、住宅地 5.6%上昇(7.5%上昇)
地方圏   商業地 0.9%上昇(0.5%上昇)、住宅地 0.1%上昇(0.1%上昇)

以下に各都市圏・地方圏について解説します。

 

東京圏

<商業地>

東京圏の商業地は 7.0%上昇(4.3%上昇)と12年連続で上昇しました。

東京都23区全体は9.7%上昇(5.1%上昇)と上昇幅が拡大しました。
上層階のマンション利用が可能な地点や再開発等により
さらなる発展期待のある地点を中心に上昇がみられ、
上昇率上位の区は、
渋谷区13.1%上昇(4.5%上昇)、台東区12.5%上昇(7.0%上昇)、
文京区11.7%上昇(6.8%上昇)でした。

多摩地区は4.5%上昇(3.0%上昇)。
多摩地区の上昇率上位3市は、
立川市7.8%上昇、国分寺市7.3%上昇、府中市7.3%上昇、でした。

埼玉県では、さいたま市は4.5%上昇(3.7%上昇)。
再開発事業等による発展期待のある大宮区などで上昇幅が拡大しました。
東京23区に近接する戸田市、川口市、蕨市などではマンション用地需要との
競合もあり上昇幅が拡大しました。

千葉県では、千葉市は6.7%上昇(4.6%上昇)。
東京都に近接する浦安市、市川市、船橋市、松戸市、柏市などでは、
主要な鉄道駅周辺では店舗・オフィスの需要が堅調で、
マンション用地需要との競合もあり、上昇幅が拡大しました。
房総地域では、市原市、袖ケ浦市、木更津市、君津市で
上昇が継続しました。

神奈川県では、横浜市は7.4%上昇(5.3%上昇)。
みなとみらい地区などの中心部は店舗・オフィス需要が堅調で、
中区9.7%上昇、西区9.5%上昇、神奈川区8.6%上昇となりました。
川崎市は8.4%上昇(5.6%上昇)。
相模原市は5.7%上昇(3.7%上昇)。
県西部の秦野市は上昇に転じ、2市町で下落から横ばいになり、
全市町で上昇または横ばいとなりました。

 

<住宅地>

東京圏全体の住宅地は 3.6%上昇(2.6%上昇)しました。

東京23区全体は6.7%上昇(4.2%上昇)で全区で上昇率が拡大。
都心の住宅需要は旺盛で、利便性や住環境の高い地域が上昇傾向にあります。
上昇率上位の区は、中央区12.4%上昇(4.4%上昇)、
渋谷区10.2%上昇(4.1%上昇)、目黒区9.6%上昇(5.3%上昇)となりました。

東京都多摩地区は3.0%上昇(2.2%上昇)しました。
多摩地区の上昇率上位の3市は、
国立市6.2%上昇、調布市5.6%上昇、府中市5.5%上昇でした。

埼玉県では、さいたま市は2.3%上昇(2.6%上昇)で全10区が上昇。
蕨市、戸田市、川口市は住宅地の需要は堅調です。

千葉県では、千葉市は4.2%上昇(2.6%上昇)、全区で上昇幅が拡大。
浦安市、市川市、船橋市、習志野市、松戸市、柏市、流山市は
堅調な住宅地の需要を受けて、上昇が継続。
房総地域では、市原市、袖ヶ浦市、木更津市、君津市で上昇が継続しました。

神奈川県では、横浜市は2.5%上昇。川崎市は3.2%上昇。
相模原市は2.1%上昇。
湘南地域は、茅ヶ崎市、藤沢市、逗子市、鎌倉市で
住宅需要が堅調なため、上昇幅が拡大しました。
県西部の秦野市、南足柄市などは下落が継続しています。

 

大阪圏

<商業地>

大阪圏の商業地は6.0%上昇(3.6%上昇)。

大阪府では、大阪市は10.6%上昇(5.5%上昇)。
人流・消費の回復により上昇幅が拡大しました。
堺市は3.5%上昇(3.8%上昇)。
北大阪地域では、豊中市、吹田市、高槻市、茨木市、摂津市で
上昇幅が拡大しました。
東大阪地域では、守口市、八尾市、寝屋川市、柏原市、門真市、
東大阪市、四条畷市、交野市で上昇幅が拡大しました。

京都府では、京都市は8.9%上昇(4.9%上昇)。
国内外の観光客の回復により市場性が高まり、
東山区、南区、下京区、上京区で2桁の上昇率となりました。
京都市より南部では、宇治市、城陽市、長岡京市、京田辺市、精華町で
上昇しました。
京都市より北部ではいずれも横ばいまたは下落となりました。

兵庫県では、神戸市は5.4%上昇(4.2%上昇)。
三宮地区では人流の回復が鮮明で、再開発への期待感から
高度商業地を中心に上昇傾向が強まっています。
芦屋市は再開発の期待感などから9.9%上昇(7.3%上昇)、
尼崎市、西宮市、芦屋市、伊丹市、宝塚市も上昇率が拡大しました。

奈良県では、奈良市は4.9%上昇(4.2%上昇)。
近鉄奈良駅、JR奈良駅周辺では国内外の人流が大幅に増加し、
店舗需要、投資需要が高まっています。

 

<住宅地>

大阪圏の住宅地は1.7%上昇(1.1%上昇)。

大阪府では、大阪市は4.5%上昇(2.5%上昇)。
堺市は2.3%上昇(2.8%上昇)。
北摂エリア北部では生活利便性の良好な地域の需要は堅調で、
箕面市、豊中市、吹田市は上昇幅が拡大しました。
東大阪地域は、守口市、門真市、枚方市、四条畷市は
京阪沿線等の利便性が良好なため、上昇幅が拡大しました。

京都府では、京都市は2.6%上昇(1.7%上昇)しました。
京都市より南部では、宇治市、城陽市、向日市、長岡京市、
八幡市、京田辺市、大山崎町、精華町は上昇幅が拡大、
久御山町が横ばいから上昇に転じました。
京都市より北部では、亀岡市の上昇幅が拡大しました。

兵庫県では、神戸市は3.2%上昇(2.4%上昇)しました。
神戸市および大阪市の通勤圏である
尼崎市、西宮市、芦屋市、伊丹市、宝塚市は上昇幅が拡大しました。

奈良県では、奈良市は1.1%上昇(1.1%上昇)でした。

 

名古屋圏

名古屋圏の商業地は3.8%上昇(3.4%上昇)。
名古屋圏の住宅地は2.5%上昇(2.2%上昇)。
東海三県の詳細については、次回の記事で解説します。

 

地方圏

商業地は0.9%上昇(0.5%上昇)と上昇幅が拡大しました。
住宅地は0.1%上昇(0.1%上昇)と上昇が継続しました。

 

地方4市

地方の政令指定都市4市(札幌市、仙台市、広島市、福岡市)のうち、
札幌市、仙台市、広島市は地価や建築費の高騰により需要の落ち着きが見られ、
広島市の住宅地を除いて、前年より上昇幅が縮小しました。
福岡市は引き続き上昇幅が拡大しています。

札幌市 商業地: 7.6%上昇(11.9%上昇)、住宅地:3.6%上昇(12.5%上昇)
仙台市 商業地: 7.9%上昇(7.8%上昇)、 住宅地:6.3%上昇(7.1%上昇)
広島市 商業地: 3.8%上昇(4.0%上昇)、 住宅地:1.7%上昇(1.4%上昇)
福岡市 商業地:13.2%上昇(11.2%上昇)、住宅地:9.5%上昇(8.2%上昇)。

福岡市の商業地は、再開発プロジェクトの進展等から
オフィスやマンションの需要は堅調で、開発用地の取引も活発です。
福岡市の住宅地は、中心部や利便性のよい郊外を中心に上昇しています。
福岡市周辺でも下記のように住宅地、商業地ともに大幅に上昇しています。

 筑紫野市 商業地14.4%上昇、住宅地8.0%上昇
 大野城市 商業地14.3%上昇、住宅地8.4%上昇
 古賀市  商業地17.1%上昇、住宅地11.7%上昇
 粕屋町  商業地13.8%上昇、住宅地8.9%上昇

 

全国の上昇率上位の地点

全国の上昇率上位の5地点は次の通りです。

<商業地の上昇率上位5地点>
1位 熊本県菊池郡大津町大字室字門出176番4        33.3%上昇
2位 熊本県菊池郡大津町大字大津字拾六番町屋敷1096番2外 33.3%上昇
3位 熊本県菊池郡菊陽町大字津久礼字石坂2343番2     32.5%上昇
4位 長野県北安曇郡白馬村大字北城字新田3020番837外    30.2%上昇
5位 熊本県菊池郡大津町大字引水字三吉原750番2外     28.0%上昇

熊本県菊池郡は、菊陽町内の半導体大手TSMCの進出に伴う
半導体関連企業の相次ぐ進出を受けて、
前年に続き、商業地、住宅地、工業地が大幅に上昇しました。
長野県北安曇郡白馬村は、外国人を含めた観光客の回復により、
ホテルやコンドミニアム用地の需要が旺盛です。

<住宅地の上昇率上位5地点>
1位 北海道千歳市栄町5丁目3番外内          30.7%上昇
2位 北海道千歳市東雲町5丁目52番         30.5%上昇
3位 北海道千歳市みどり台北4丁目5番7       29.0%上昇
4位 北海道恵庭市柏木町3丁目549番147       29.0%上昇
5位 沖縄県国頭郡恩納村字真栄田真栄田原36番外  28.9%上昇

北海道千歳市は、半導体企業ラピダスや、関連企業の進出を受けて、
共同住宅、ホテル、事務所用地、工場用地の需要が旺盛です。
北海道恵庭市は、札幌市の割安感がある郊外として上昇しました。
沖縄県国頭郡恩納村は、ダイビング等のスポットがあり、
移住や別荘需要が堅調で、住宅地が上昇しました。

<工業地>
1位 熊本県菊池郡大津町大字室字狐平1576番1 33.3%上昇
2位 熊本県菊池市旭志川辺字四東沖1126番7   32.3%上昇
3位 熊本県合志市幾久富字山下1600番3     29.5%上昇
4位 千葉県船橋市西浦2丁目6番2外       28.6%上昇
5位 千葉県市川市高谷新町9番5外        28.5%上昇

熊本県菊池市・菊池郡・合志市はTSMC関連の上昇。
千葉県船橋市・市川市は、東京への交通利便性が良好で、
都区部との相対的な割安感から需要が旺盛であり、
供給が限定的であることから、上昇が継続しています。

 

自然災害で大幅に下落した地点

全国の商業地、住宅地の下落率が大きかった上位5地点は、
いずれも能登半島地震で大きな被害を受けた地域でした。
住宅地、商業地で最も下落したのは次の地点です。
 住宅地 石川県輪島市河井町壱五部90番56外 14.8%下落
 商業地 石川県輪島市新橋通八字2番18  17.1%下落

他にも自然災害で、福島県いわき市や、福岡県久留米市などで、
台風や豪雨の被害により下落した地点がありました。

さて、今回は「令和6年の基準地価(全国編)」を解説しました。
次回は「令和6年の基準地価(東海三県編)」を解説します。

 

【参考】

・国土交通省 令和6年都道府県地価調査 https://tinyurl.com/487t2hte
・日本経済新聞 2024年9月18日

 

※本記事の内容は配信日までに確認できた情報を基にしており、
 今後、変更になる可能性があります。