
国土交通省が令和8年3月に、令和8年1月1日時点の地価公示を発表しました。
その内容を今回と次回の2回に分けて解説します。
今回の「全国編」では、東京圏や大阪圏を中心に全国の動向を解説します。
次回は「東海三県編」として、名古屋圏・東海三県の状況を解説します。
※以下( )は前年変動率を表します。
「%」は通常は上昇を表し、下落の場合のみ「%下落」と表記します。
令和8年の地価公示は、全国平均では、
全用途・商業地・住宅地のいずれも5年連続で上昇し、
全用途2.8%(2.7%)、商業地4.3%(3.9%)、住宅地2.1%(2.1%)、となりました 。
全用途・商業地は上昇幅が拡大しましたが、住宅地は前年と同じ上昇幅となりました。
国土交通省は、全国の地価の傾向について次のようにまとめています。
「全国の地価は、景気が緩やかに回復している中、
地域や用途により差があるものの、三大都市圏では上昇幅が拡大し、
地方圏でも上昇が継続するなど、全体として上昇基調が続いている。」
三大都市圏・地方圏・地方4市の変動率は次の通りです 。
東京圏: 商業地9.3%(8.2%)、住宅地4.5%(4.2%)
大阪圏: 商業地7.3%(6.7%)、住宅地2.5%(2.1%)
名古屋圏: 商業地3.3%(3.8%)、住宅地1.9%(2.3%)
地方圏平均:商業地1.6%(1.6%)、住宅地0.9%(1.0%)
地方4市: 商業地6.4%(7.4%)、住宅地3.5%(4.9%)
(地方4市は、札幌市、仙台市、広島市、福岡市)
東京圏や大阪圏では商業地、住宅地とも上昇幅が拡大していますが、
名古屋圏、地方4市、地方圏はいずれも上昇幅が縮小または横ばいです。
【東京圏】
東京圏の商業地
東京圏の商業地は9.3%(8.2%)と5年連続で上昇し、上昇幅も拡大。
<東京都>
東京23区は13.8%(11.8%)と大幅に上昇幅が拡大しました。
上昇率が高い区は次の通り。
台東区19.1%(14.8%)、文京区17.8%(12.8%)、中野区17.5%(16.3%)、
杉並区17.5%(15.1%)、品川区16.3%(12.2%)。
インバウンド観光客の増加に伴う店舗・ホテル需要が要因です。
渋谷駅周辺の再開発地域では29.0%と大幅に上昇しました。
多摩地区は6.0%(5.3%)。
上昇率が大きい市は立川市9.8%(7.6%)、国立市9.5%(6.9%)、調布市8.8%(8.2%)。
JR中央線と京王電鉄京王線の駅前周辺で上昇幅が拡大しました。
<埼玉県>
さいたま市は5.4%(4.8%)、全10区のうち8区で上昇幅が拡大。
大宮区7.6%(6.8%)、浦和区6.8%(6.1%)は、
再開発等によるさらなる発展への期待感あり上昇幅が拡大しました。
さいたま市以外では、川口市9.1%(6.6%)、蕨市9.0%(6.1%)、
戸田市8.3%(7.5%)、草加市5.0%(4.3%)、八潮市5.0%(5.0%)、
などで大きく上昇しました。
<千葉県>
千葉市は8.6%(8.4%)となり、全6区のうち5区で上昇幅が拡大。
中央区は9.0%(8.7%)、千葉駅周辺の再開発や大型マンション建設により
賑わいが向上しました。
都心に隣接する船橋市9.6%(11.5%)、松戸市9.6%(8.3%)、
市川市6.9%(10.5%)、浦安市6.8%(14.5%)などは
高い上昇水準にあるものの、上昇幅は縮小。
郊外では、つくばエクスプレス沿線の流山市12.8%(11.5%)、
東京湾アクアラインが通る袖ケ浦市9.0%(8.1%)が、上昇幅を拡大しています。
<神奈川県>
横浜市は8.2%(7.2%)となり、全18区のうち16区で上昇幅が拡大。
中区は12.9%(11.0%)と高い伸びを見せており、
関内駅周辺の再開発事業による賑わい向上への期待感が強いです。
川崎市は9.0%(8.5%)で、全7区で上昇幅が拡大。
マンション需要との競合が見られる地域を中心に上昇しています。
相模原市は7.0%(6.6%)となり、全3区で上昇幅が拡大。
鎌倉市は9.5%(8.2%)、逗子市8.9%(7.9%)、藤沢市8.0%(6.8%)
と湘南地域の市にも大幅な上昇が見られます。
<東京圏の商業地上昇率上位5地点>
1位 東京都渋谷区桜丘町15番6外 29.0%
2位 東京都台東区浅草1丁目16番14外 27.6%
3位 東京都台東区西浅草2丁目66番2 25.2%
4位 東京都台東区浅草2丁目24番6 24.2%
5位 東京都渋谷区道玄坂1丁目202番 24.1%
渋谷区の再開発への期待やインバウンド需要の大きい浅草エリアで大幅に上昇しています。
1位と5位の渋谷区の地点は、渋谷駅周辺に大規模再開発が進行しており、
就業人口や人流の劇的な増加が見込まれています。
2位・3位・4位の台東区の浅草・西浅草エリアは、
外国人観光客の増加に伴い、浅草周辺での店舗やホテルの需要が
強まっています。浅草駅や浅草寺に近い一等地の物件は供給が
限られており、高い投資意欲が集中しています。
東京圏の住宅地
東京圏の住宅地4.5%(4.2%)は5年連続で上昇し、上昇幅も拡大。
<東京都>
東京23区は9.0%(7.9%)と上昇幅が拡大。
上昇率が大きかったのは、港区16.6%(12.7%)、台東区14.2%(10.2%)、
品川区13.9%(11.9%)、中央区13.8%(11.2%)、文京区13.8%(10.8%)
などで、富裕層を中心とした都心マンション需要が旺盛です。
多摩地区は3.8%(3.4%)。
国分寺市7.2%(4.8%)、国立市7.1%(4.7%)、立川市7.0%(5.1%)
など、中央線沿線の利便性の高い地域を中心に上昇幅が拡大しました 。
<埼玉県>
さいたま市は2.7%(2.5%)と上昇幅が拡大。
浦和駅徒歩圏などでマンション用地需要が旺盛です。
戸田市6.1%(6.2%)、川口市4.5%(5.1%)、草加市4.4%(4.3%)など、
都心への接近性に優れた地域で大幅に上昇しています。
<千葉県>
千葉市は5.8%(5.1%)で全6区で上昇幅が拡大しました。
流山市13.3%(13.6%)、松戸市8.7%(7.7%)、習志野市5.2%(5.1%)、
柏市5.2%(5.1%)、成田市5.3%(6.4%)が大幅に上昇しました。
<神奈川県>
横浜市3.3%(3.2%)、全18区のうち9区で上昇幅が拡大。
川崎市4.4%(4.4%)、全7区のうち3区で上昇幅が拡大。
相模原市4.5%(4.3%)、全3区で上昇幅が拡大しました。
湘南地域は、藤沢市5.4%(5.3%)、逗子市5.2%(5.0%)、
鎌倉市5.0%(4.9%)、茅ヶ崎市4.4%(5.0%)と
堅調な住宅需要により地価上昇が続いています 。
大和市5.2%(5.2%)は相鉄・東急直通線の開通により上昇しました。
<東京圏の住宅地上昇率上位5地点>
1位 東京都港区港南3丁目 22.2%
2位 東京都文京区本郷1丁目 20.8%
3位 東京都港区赤坂1丁目 20.5%
4位 東京都港区赤坂6丁目 20.4%
5位 東京都港区芝浦2丁目 20.2%
上位5地点のうち4地点を港区が占めました。
港区では近年のマンション分譲価格の上昇を反映して、全体的に価格が高騰しています。
1位の港区港南3丁目の地点は、高輪ゲートウェイ駅の開業による
周辺地域の発展への期待感が上昇を後押ししています。
2位の文京区は、都心回帰の流れの中で利便性の高い優良な住宅地としての
評価がさらに高まっています 。
【大阪圏】
●大阪圏の商業地
大阪圏の商業地は7.3%(6.7%)と5年連続で上昇。
<大阪府>
大阪市は12.7%(11.6%)と上昇幅が拡大。
中心部はビジネス地区のオフィス賃料の上昇や空室率の改善があります。
梅田地区は「うめきた2期」の開発効果で上昇。
ミナミ地区はインバウンド観光客の回復により店舗・ホテルの需要が旺盛です 。
上昇幅が拡大した主な区は、
浪速区15.5%(14.3%)、中央区15.5%(14.2%)、西区15.3%(13.9%)、
福島区15.0%(12.5%)、北区14.0%(13.4%) です。
堺市は7.3%(5.3%)。
大阪市と堺市以外は、吹田市8.3%(7.8%)、茨木市7.9%(6.1%)、
守口市7.5%(5.7%)、豊中市7.3%(7.1%)、高槻市7.0%(5.4%)など、
主要駅至近の希少性が高い地域で上昇が続いています 。
<京都府>
京都市は10.1%(10.2%)。
京都駅周辺では、大学の移転や外資系ホテルの進出を背景に、
南区が19.6%(19.4%)と大幅に上昇しました。
東山区は14.4%(13.7%)、インバウンドを含む観光客の増加により、
店舗・ホテル需要が強く上昇幅が拡大しました 。
中央区10.3%(11.4%)、下京区10.2%(10.3%)、上京区10.1%(10.3%)
も大幅に上昇しました。
京都市以外は、向日市6.5%(5.9%)、長岡京市6.3%(5.5%)、
城陽市6.2%(5.7%)などで上昇幅が拡大しています 。
<兵庫県>
神戸市は6.1%(5.5%)となり、上昇幅が拡大しました。
特に中央区(三宮地区)では、インバウンドを含む人流の回復に加え、
JR三ノ宮駅南側や市役所跡地などの再開発への期待感から、
希少性の高い高度商業地を中心に地価の上昇傾向が強まっています 。
中央区7.1%(5.9%)、灘区6.8%(7.3%)、兵庫区5.1%(4.6%)
などが上昇しました。
阪神地域はJR芦屋駅南地区の再開発が進む芦屋市8.9%(8.4%)や、
駅周辺の再整備が進む西宮市7.6%(6.8%)、
そのほか、尼崎市5.5%(4.8%)、明石市5.4%(4.5%)、
淡路市4.9%(1.5%)などで上昇幅が拡大しました。
<奈良県>
奈良市は4.8%(4.8%)となり、前年同様の地価上昇が継続。
<大阪圏商業地の上昇率上位5地点>
1位 大阪府大阪市中央区道頓堀1丁目37番外 25.0%
2位 京都府京都市南区東九条上殿田町52番 22.0%
3位 京都府京都市伏見区深草稲荷御前町89番 21.2%
4位 京都府京都市南区東九条北烏丸町36番1外 21.2%
5位 大阪府大阪市中央区心斎橋筋2丁目132番1外 19.5%
1位の地点は道頓堀エリアで、インバウンド需要が回復し、
店舗や飲食業の需要が拡大し、投資需要が集中しています 。
2位の地点は京都駅南側エリアで、オフィスビルやホテルの建設など
大規模な再開発事業が継続して進展しています。
3位の京都市伏見区の地点は京都駅徒歩圏内で、
周辺での宿泊施設や店舗の需要が強いです。
4位の京都市南区の地点は駅周辺の再整備に伴い上昇しており、
マンション用地としての需要も強いです。
5位の大阪市中央区の地点はアメリカ村に近い繁華性の高い地点であり、
インバウンドの回復による店舗需要が旺盛です 。
大阪圏の住宅地
大阪圏の住宅地は2.5%(2.1%)と5年連続で上昇し、上昇幅も拡大。
<大阪府>
大阪市を中心に地価上昇が継続しており、
大阪市全体では6.5%(5.8%)と上昇幅が拡大しています。
大阪市中心部は富裕層向け物件の需要が旺盛で、
浪速区10.9%(9.7%)、西区10.5%(8.4%)、北区9.2%(7.9%)、
福島区8.3%(7.2%)、天王寺区7.6%(6.8%)などで大幅に上昇。
供給不足感から城東区8.9%(8.6%)や鶴見区8.8%(8.2%)
などにも需要が波及しています。
堺市は3.9%(2.5%)。
北大阪地域は鉄道沿線のマンション適地で上昇が見られ、
吹田市4.9%(4.3%)、豊中市4.0%(3.7%)、茨木市3.8%(2.6%)、
高槻市3.7%(2.7%)などで上昇幅が拡大しました 。
東大阪・南大阪地域は、守口市5.4%(5.4%)や門真市2.4%(3.0%)で
一定の需要が見られるほか、高石市3.4%(3.2%)、和泉市1.3%(1.1%)
などでも上昇幅が拡大しています 。
<京都府>
京都市全体は3.6%(3.2%)となり、上昇幅が拡大しました 。
京都市内は、国内外の投資家や富裕層の需要が旺盛な
東山区7.1%(6.6%)で上昇幅が拡大したほか、
南区6.4%(6.1%)、下京区6.2%(6.1%)、中京区4.8%(5.0%)でも需要が堅調です。
上京区5.4%(5.4%)では京都御所周辺の住宅需要が継続しています 。
京都市以外は、宇治市3.1%(3.2%)、長岡京市2.8%(2.6%)、
城陽市2.7%(2.7%)などで地価上昇が継続しています 。
<兵庫県>
神戸市全体は2.9%(2.7%)と上昇幅が拡大。
神戸市内は住環境や利便性に特に優れる東部三区の
東灘区4.6%(3.9%)、灘区4.4%(4.4%)、中央区4.5%(4.3%) が
上昇を牽引しています。
阪神地域は、芦屋市4.0%(3.6%)、西宮市3.8%(3.3%)、
伊丹市3.7%(2.8%)、尼崎市2.7%(2.3%)、宝塚市2.6%(2.0%)、
川西市2.4%(1.6%)で上昇幅が拡大しました。
<奈良県>
奈良市全体は1.3%(1.1%)となり、上昇幅が拡大しました。
<大阪圏の住宅地上昇率上位5地点>
1位 京都府京都市東山区高台寺南門通下河原東入桝屋町353番5 13.7%
2位 京都府京都市東山区粟田口三条坊町2番5外 11.5%
3位 大阪府大阪市北区紅梅町125番 10.9%
4位 大阪府大阪市浪速区桜川1丁目4番7 10.9%
5位 京都府京都市南区久世上久世町360番 10.8%
1位と2位の京都市東山区の地点は、観光拠点である清水寺や高台寺に
近接する希少性の高いエリアであり、富裕層向けのセカンドハウス需要や
宿泊施設や店舗への転用を期待した需要が極めて強いです。
3位の大阪市北区の地点は大阪メトロ南森町駅やJR大阪天満宮駅に近く、
都心回帰の流れの中、利便性の高い優良な住宅地として上昇幅が拡大。
4位の大阪市浪速区の地点はなんばエリアに徒歩圏内で、
周辺の再開発が進み、職住近接向けのマンション開発が活発です。
5位の京都市南区の地点はJR桂川駅周辺の区画整理や大型商業施設により、
生活利便性が飛躍的に向上して需要が高まっています。
【地方4市(札幌・仙台・広島・福岡)】
地方4市はいずれの都市も上昇は継続していますが、
地価・建築費上昇による投資・購入控えもあり、上昇幅は縮小傾向です 。
・札幌市:住宅地1.1%(2.9%)、商業地4.6%(6.0%)
・仙台市:住宅地4.3%(6.3%)、商業地7.8%(8.3%)
・広島市:住宅地2.7%(2.4%)、商業地5.2%(4.6%)
・福岡市:住宅地7.0%(9.0%)、商業地9.0%(11.3%)
【全国の上昇率上位地点】
<全国の商業地上昇率上位5地点>
1位 北海道千歳市千代田町5丁目1番8 44.1%
2位 北海道千歳市錦町2丁目10番3 38.5%
3位 長野県北安曇郡白馬村大字北城字山越4093番2 35.2%
4位 北海道千歳市幸町3丁目19番2 34.4%
5位 東京都渋谷区桜丘町15番6外 29.0%
1位、2位、4位の北海道千歳市の地点は
半導体メーカー「ラピダス」の進出効果による上昇。
3位の長野県白馬村の地点はリゾート需要による上昇。
5位の地点は渋谷サクラステージの開業など再開発による上昇です。
<全国の住宅地上昇率上位5地点>
1位 長野県北安曇郡白馬村大字北城字堰別レ827番36 33.0%
2位 北海道富良野市北の峰町4777番33 30.0%
3位 長野県下高井郡野沢温泉村大字豊郷字蟹沢7886番10 22.3%
4位 東京都港区港南3丁目6番7 22.2%
5位 長野県下高井郡野沢温泉村大字豊郷字八幡下6513番外 21.1%
1位、2位、3位、5位の地点はいずれもスキーリゾート需要による上昇、
4位の地点は高輪ゲートウェイの開業による発展の期待感を受けた上昇です。
さて、今回は令和8年の地価公示の全国の傾向を解説しました。
圏域で比べると、東京圏と大阪圏は上昇幅が拡大しているものの、
名古屋圏や地方4市・地方圏は上昇幅が縮小しています。
その要因の1つには、地価の急激な上昇や建築コスト高騰による、
不動産の投資や購入を控える動きがあります。
次回のメルマガでは、名古屋圏・東海三県の状況を解説します。
<出典>
・令和8年地価公示(国土交通省)
・各都府県の令和8年の地価公示