
名古屋三越
去る3月19日に国土交通省から2019年1月1日時点の
公示地価が発表されました。
今回はその内容をまとめます。
2019年公示地価のポイント
2019年の公示地価は、
全国では、住宅地は0.6%(前年0.3%)の上昇。
商業地は2.8%(前年1.9%)の上昇、
全用途で1.2%(前年0.7%)の上昇でした。
ポイントを挙げるとすれば、次の点です。
・三大都市圏の商業地で高い伸びを示した
・地方の中核市の商業地でそれを上回る伸びを示した
・三大都市圏を除く地方圏の全用途がプラスに転じた
・上昇は一部の地域に限られ、下落する地域と二極化が進んでいる
三大都市圏の商業地は2008年に次ぐ高い上昇率
三大都市圏の商業地の伸び率は5.1%となり、
リーマンショック前の2008年に次ぐ高い上昇率を示しました。
三大都市圏平均と各都市圏の上昇率は次の通りです
三大都市圏:住宅地0.6%(前年0.3%)、商業地5.1%(前年3.9%)
東京圏:住宅地1.3%(前年1.0%)、商業地4.7%(前年3.7%)
大阪圏:住宅地0.3%(前年0.1%)、商業地6.4%(前年4.7%)
名古屋圏:住宅地1.2%(前年0.8%)、商業地4.7%(前年3.3%)
地方圏全用途平均が上昇に転じるが、二極化が鮮明に
地方の中核都市の商業地は、三大都市圏を上回る上昇率を示しました。
札幌、仙台、広島、福岡の4市平均の上昇率は、
住宅地4.4%(前年3.3%)、商業地9.4%(前年7.9%)でした。
この動きに牽引され、三大都市圏を除く地方圏の全用途平均が
前年の横ばいからプラス0.4%となり、27年ぶりに上昇しました。
地方圏全体の上昇率は、
住宅地0.2%(前年0.1%下落)、商業地は1.0%(前年0.5%)、
全用途0.4%(前年0.0%)でした。
地方圏の全用途がプラスに転じたのは、
地方の主要都市で進む再開発や、
訪日外国人客の増加に伴う不動産投資が活発化したことが
全体を牽引したためです。
全国の商業地の上昇率のトップ10は、
1位(58.8%)はニセコに近い北海道虻田郡倶知安町の地点、
2位(44.4%)は大阪市日本橋の地点、
3位(44.2%)は大阪市梅田駅付近の地点、
4位~10位には、上記の他に、京都府2地点、大阪府2地点、
沖縄県那覇市が2地点がランクインしました。
全国の住宅地の上昇率のトップ10は、
1位(50.0%)、2位(32.4%)、4位(28.6%)に北海道虻田郡倶知安町の地点、
3位(30.0%)と6位(24.5%)に那覇市の地点がランクインしました。
5位(26.1%)、7位(24.3%)から10位(23.0%)に
愛知県名古屋市の中区および東区の5地点がランクインしました。
しかしこのような上昇は、外国人観光客の増加や
再開発が進められている一部の地域にとどまり、
人口減少が進む地域では下落が続き、二極化が鮮明になっています。
地方圏の調査地点のうち48%の地点は下落、19%の地点は横ばいでした。
愛知県の地価
東海地方では、愛知県では上昇率が拡大しましたが、
岐阜県と三重県では下落傾向が続いています。
愛知県は住宅地1.2%(前年0.7%)上昇、
商業地4.6%(前年3.2%)上昇でした。
住宅地・商業地ともに名古屋市や西三河で上昇しました。
名古屋駅周辺や栄周辺の再開発への期待感が高まっています。
名古屋近鉄ビルの上昇率が4.2%と鈍化(1230万円/平米)した一方、
名古屋三越は23.5%と大幅に上昇(1050万円/平米)し、
名駅と栄との差が縮小しています。
長久手市、豊田市、刈谷市、大府市など
自動車産業を背景とした需要があるエリアや、
尾張一宮駅付近など名古屋へのアクセスのよいエリアは上昇しています
住宅地では、栄で再開発が進むことを好材料として、
先述のように名古屋市中区と東区の5地点が23.0%~26.1%と
大幅に上昇し、上昇率で全国の5位~10位に入りました。
一方で、知多や東三河では下落しました。
岐阜県の地価
岐阜県は、住宅地は0.7%下落(前年0.7%下落)、
商業地は0.5%下落(前年0.4%下落)でした。
住宅地で上昇したのは、岐阜、大垣、多治見など名古屋に近い地点や、
中津川市のリニア中央新幹線駅の予定地がある地点にとどまります。
それ以外の地域は下落が進みました。
商業地で最も上昇したのは高山市の古い町並み付近の4.5%で、
訪日観光客の増加により地価が押し上げられています。
2番目はJR多治見駅付近の3.1%でした。
三重県の地価
三重県は住宅地は1.0%下落(前年1.4%下落)、
商業地は0.8%下落(前年1.3%下落)で、
ともに27年連続で下落しました。
商業地で最も上昇したのは近鉄四日市駅前の地点で
2.9%増加と、3年連続で県内トップの上昇率です。
四日市市や桑名市、菰野町で上昇や下げ止まりが見られます。
住宅地は県北部や津市を中心に下げ止まりの傾向があり、
鈴鹿市では自動車産業の好調により横ばいの地点が増えています。
一方、沿岸部は津波被害が懸念されるため、下落幅が大きいです。
今後の不動産需要の見込み
今後の不動産需要を想定すると、
名古屋市のオフィス需要については、
2月のオフィス空室率は、名駅エリアが1.2%、
栄が3.3%、伏見が1.6%といずれも低い水準です。
オフィスビル総合研究所の調査によると、
名古屋市では中型以上のオフィスビルへの需要は
2021年まで供給を上回るとされています。
一方、住宅地については、
地価の上昇と足元の市況は乖離があるようです。
投資用不動産向け融資は、スルガ銀行問題以降、
急激に減速しています。
海外マネーも停滞気味だと言われています。
今後は、立地がよいか、特長がある一部の人気物件と、
それ以外の不人気物件との二極化が進むと見られており、
その見極めが重要になると言えそうです。
【出典】
・中日新聞 2019年3月20日
・日本経済新聞 2019年3月20日
この原稿は名城企画株式会社が発行する「名古屋・東海収益不動産NAVIメールマガジン」の
2019年5月20日発行分の転載です。